「スハ大事な話があるから今夜家に来て」
◇◇◇
大事な話って何だろう?いつもより緊張しながら訪れた浮奇の家。
「スハいらっしゃい!待ってたよ」
「お邪魔しま〜す」
「早くこっちきて」
浮奇に手を引かれ部屋の中へと連れて行かれる。
ここは何度も二人で愛し合った場所。
でも今日はいつもと違った。
通された寝室にはもう一人男がいた。
「ふぅふぅちゃんお待たせ。スハ連れてきたよ〜」
いつも浮奇と愛を紡いだヘッドの上。
浮奇一人で使うには大きすぎるベッドの上で長い脚を伸ばし本を読んでいる男。
ファルガー・オーヴィド、私の恋敵がいた。
「なんで、ファルガーがいるの?」
彼を見るだけで表情が険しくなる。”当たり前”の態度でそこにいるその姿に苛立ちを隠せずにいた。
「おい浮奇、スハに説明してないのか?」
「驚かしたかったから内緒にしてたんだ」
『へへへ』と笑う浮奇はイタズラが成功した子供のように笑ってい、ファルガーの隣に座る。
もしかして大事な話って別れ話って事?
ファルガーと寄り添い合う姿を僕に見せつけて私を諦めさせたかったの?
ひどいよ浮奇。
「浮奇?話って何?まさかファルガーの事…?」
「フフフ、そうだよ。俺の大切なふぅふぅちゃんをスハにも紹介したかったんだ」
そんなの、もう知ってるよ。知ってても知らないふりをしているのに、二人の事は聞きたくなくても耳に入る。それでも浮奇が私といる時は私の事を一番に好きでいてくれる、だから信じていたのに。
「でね、スハ………」
あぁこの先の言葉は聞きたくない。別れの言葉なんて受け入れられない。
「ふぅふぅちゃんとsexしてくれない?」
「……は?私とファルガーで、sex…?何言ってるの?言ってる意味が分からない」
「俺の事が好きなスハなら、俺の大切なふぅふぅちゃんの事も含めて好きになって欲しいんし、ふぅふぅちゃんがいての俺だから、スハには……スハになら、ふぅふぅちゃん抱かせてあげたいなって」
「私は………浮奇の事は好きだけどフォルガーの事は………好きじゃ…ない…からsexはしたくない。それにファルガー、君はいいの?好きでもない男とsexできるの?」
フォルガーを真っ直ぐ見つめ問いただすと、彼は隣にいる浮奇を後ろから抱きしめ、私を冷たく一睨みしすぐに視線を外した。
「俺は浮奇が望むのならそれに従うまでだ」
何それ、浮奇が望むなら何でもするっ事?
「おかしい…おかしいよ…」
私は浮奇の事だけを愛したい。私と浮奇の間に誰かを入れるなんて考えたくない。頭の中ぐちゃぐちゃで、胸が苦しい。
「ごめん…おかしいよね…ごめんね。でもふぅふぅちゃんは俺の一部だから、ふぅふぅちゃん無しで生きられない。スハなら分かってくれると思ってたんだけど…」
滅茶苦茶な事を言われて混乱しているのはこっちなのに、何で浮奇がそんな辛そうな顔するんだよ。
「浮奇、スハも浮奇の事が好きだから俺の事を認められないんだ、分かってやれ」
「うん…」
浮奇がこちらに近づいてきて私の顔に手を添えてくる。
「スハがふぅふぅちゃんの事抱けないなら、もうこれ以上スハと一緒にはいれない…」
決定的な言葉を突き付けられ、足の爪先から感覚が無くなっていく。
もうこれ以上、浮奇と会う事も、喋る事も、触れる事も出来ないの?
「スハ泣かないで。…俺もスハと別れるのは辛いけど、無理強いさせたくない」
いつの間にか流れていた涙を拭う浮奇の手は優しく温かく、もうこの温もりに触れて貰えないのかと思うと涙が次から次へと流れてきた。
「いやだ…ぅっ…浮奇と別れたくない…」
「でもスハはふぅふぅちゃんのこと…」
頭をブンブンと振り、縋るように浮奇に抱きつく。
「浮奇が好き。だから…好きだから……する。」
「いいの?」
今まで悲しそうにしていた浮奇の口元が一瞬だけ笑ったように見えた。
「……………うん」
「スハありがとう。大好き」
浮奇から絡められた腕は優しいのに息苦しい。
この先に私の幸せはあるの……?