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    はじめ

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    はじめ

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    面あた
    鈍感な若と器用かつ察しの良いあたるくん。
    面あたってなんで一緒にいるんだろう。なんだかんだとメリットがあるから一緒にいるのかなあ。二人のこともっと知りたい。

    #面あた
    face

    埋まらない距離 放課後の教室に男が二人。
     机に突っ伏しているところに面堂がやってきて、近くにあった椅子をガタガタと引き寄せて座る。
    「――ところで諸星。お前は、金さえもらえればお前は男とでもするのか」
     至極真面目な顔で突拍子もないことを聞きやがる。
     まともに答えてやる義理はないので、瞼を閉じたまま「いくらくれんの」と尋ねた。
    「…ということは、するんだな」 
     予想不能な思考回路は、予想だにしない回答を導いたらしい。邪魔したな。やけに神妙な顔で去ろうとする面堂の腕を思わず掴んだ。
    「おい待て面堂。俺は、する、とは言っとらん。いくらくれるんだ、と聞いとるんだ」
    「それは、する、という意味ではないのか?」
    「ええい、違う。だから、つまり、お前はいくらくれるんだ、と聞いとる」
     あたるが失言に気付いたのと、面堂が返事をしたのは、ほとんど同時だった。凛々しい眉と目が視界に入り、無意識に眉を顰めた。この利発さと精悍さは、いつだってあたるの心をかき乱していく。
    「………僕?」
     呆気に取られた顔と目が合い、居た堪れない。誤魔化すように、お前じゃないのか、と聞けば、僕の話だったのか、と呆れた返事が返ってきた。
    「………じゃあ、なんで、んなこと聞いたんだよ」
    「………変な噂を聞いたもので」
     これは失敬、といつになく仰々しい態度で面堂が咳払いをするものだから、ちょっと萎えた。あ~あ、あほらし。この話は永遠に終わりにしよう。
    「…つまらんこと聞いた罰として俺に牛丼を奢れ」
     枕代わりにしていた潰れた鞄を持って立ち上がる。教室を出る頃には、空に真っ赤な夕焼けが浮かんでいた。
    「なんで僕が」
    「自分の胸に聞いてみろ」
     焦る面堂を置いて廊下を大股で駆ける。廊下に伸びる自分の影をちらほらと眺めながら、ラーメンでも良いな、と適当なことを思った。
    「ほら行くぞ。はよせんとラムに勘付かれる」
     振り返ると予想していたよりも近くに面堂がいて焦った。
    「…ラムさんがいたらだめなのか?」
     子どもが置いてけぼりをくらったかのような顔と声で聞かれた。咄嗟のことに返事に詰まる。
    「…だめじゃないのか?」
     返事が欲しいわけではないので、独り言に留めた。
     だめだと思っているのは、俺かお前か。
     さあ、どっちだろう。
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    はじめ

    DOODLE面あた
    名前を呼べばすっ飛んで来る関係。

    あたるくんの「面堂のばっきゃろーっ」を受けて0.1秒ですっ飛んでくる面堂くんも、呼べばすぐに来るって分かってる確信犯なあたるくんも大好きです。
    恋より淡い 校庭の木々の葉はすっかり落ちて、いかにも「冬が来ました」という様相をしていた。重く沈んだ厚ぼったい雲は今にも雪が降り出しそうで、頬を撫でる空気はひどく冷たい。
     期末テストを終えたあとの終業式までを待つ期間というのは、すぐそこまでやってきている冬休みに気を取られ、心がそわそわして落ち着かなかった。
    「――なに見てるんだ?」
     教室の窓から校庭を見下ろしていると、後ろから声を掛けられた。振り向かなくても声で誰か分かった。べつに、と一言短く言ってあしらうも、あたるにのしかかるコースケは意に介さない。
    「…あ、面堂のやつじゃねえか」
     校庭の中央には見える面堂の姿を目敏く捉え、やたらと姿勢の良いぴんと伸びた清潔な背中を顎でしゃくる。誰と話してるんだ、などと独り言を呟きつつ、あたるの肩にのしかかるようにして窓の桟に手を掛けている。そのまま窓の外の方へと身を乗り出すので危なっかしいたらありゃしなかったが、落ちたら落ちたときだ。
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