かっこいい受けを目指してみた※例によって描写がめんどくさかったので諸々省略(ごめん)
※玖朗さんは膝立ちで手首や身体が縄でぐるんぐるんに拘束されて敵に囲まれてる状態
「まッ、お……!」
からからに乾いていた喉を押し開いてもう二度と呼ぶことができないと思っていた彼の人の名を呼ぶと、今し方まで風のように舞って敵を切り裂いていた影が振り向いて、ニヤッと笑った。
「よう。昔の俺みたいなことするなぁ? 玖朗」
灰の髪、輝く緑の瞳。流石というべきか、周囲にいた人間は皆倒れ伏している。口を開いて自然と口にしようとしていた言葉を飲み込んで、玖朗は違う言葉を声に出した。
「……ここがどこだか分かってるよね」
安堵と喜びに解けそうになる心を押し留めて続ける。
「奴らがどういう組織で、こんなことしたらどうなるかちゃんと分かってる? きっともう普通に中華街で生きていくことはできない。だから俺は……なのに、なんで……なにしに来たの」
音もなくナイフを収めた風猫は、何も言わず未だ拘束され動けない玖朗の前に立った。笑っている。彼を前にして固かったはずの決意が揺らいでいることを感じながら、玖朗はさらに言った。
「今ならまだ間に合うから。……今日、猫はここに来なかった。それだけでほら、猫はあの街で今のまま生きていける。早く行きなよ」
「いやだね」
「猫ッ」
荒げた声がだだっ広い空間でこだまする。それでも風猫は何事もなかったかのように玖朗の肩の上で気まぐれに指先を滑らせて、やんわりと微笑んで首を傾げた。その小さな動きにも目が吸い寄せられて喉が鳴る。そう、こんな時分こんな場面、風猫のためを思えばこそ彼を突き放さなければならない、こんな時でも。長年住み慣れた中華街を自分の意志で後にして、後ろ髪を引かれるなんて陳腐な言葉じゃ言い表せない思いで何も告げずに置いてきて——それでもなお玖朗にとって、彼は焦がれてやまない想い人なのだ。
早く行ってよ。
俺のことは、もう。
言おうとして、もうそれを口にできなくなっていることに気づいた。違うのだ、本当は。けれど本心を口にしたら。
「ははっ」
唇を噛み締めて黙り込んだ玖朗を見て、風猫は声を上げて笑った。そして次の瞬間、耳元に唇を寄せて囁いた。
「……何しにきた、ねェ?」
それは一瞬だった。ついと寄せられた唇が重なって、目の前には長い睫毛と白い肌。閉じていた瞳が僅かに開いて、俯いた瞼の隙間から僅かに宝石のような翠緑が覗いて。
「……キスをしに?」
「……っ」
これ以上ないくらいの至近距離でくすくす笑ってからさっと離れた風猫は、瞬く間に玖朗の拘束をナイフで断ち切って自由の身にする。よろよろと立ち上がりながら玖朗は呟いた。
「ハァ……ちょっと……カッコよく育てすぎたかもね……」
「それはどうも」
背後で愉しげに笑った風猫は再び玖朗の前に回り込んで、身体を傾け顔を覗き込んできた。
「アンタは俺の"なん"だっけ?」
「恋人です……」
「宜しい。さっさと片付けて帰るぞ」
「……ハイ」
5年くらい経ったらこんなまおまおになる……かもしれない
ならない…かもしれない