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    ぎぃ。

    @gigigigiiiii
    ぎぃ。だよ!!!
    ポケモン絵と創作絵と過去絵とかもなんかアップ出来たら見やすいんじゃないでしょうか?

    二次創作SSもおいてるよ。ラッシャイ!!

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    ぎぃ。

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    白蛇の下半身を持つ怪異ウサミと、それに懐かれ同棲している門倉さんの話。
    うさかど。

    しずく、しずか、しずむ【一】「人間の文化に興味があります」

    と宣言するくらいに、ウサミは日々なにかを取り込んでいる。
    俺が会社に行ってる間、こいつが何をしているかというと、日がな一日インターネットとサブスクを楽しんでいるようだ。
    あの瞬きほぼゼロで目が乾かないのだから、怪異という存在はそういう面でも人間の輪から外れている。

    ただ、「人間の文化に興味がある」というのは、「人間を正しく理解したい」とイコールではない。

    休みの日、俺はごろごろして、ウサミは映画を見ていた。
    俺の方は流し見のつもりだったが、初見にもかかわらずぐっとくるものがあり、最後には目が潤んだ。
    しかしウサミは、画面をじっと見つめているだけだった。
    泣きも、笑いも、なにもない。
    その横顔があまりに無表情で、俺は不意に恐ろしくなった。

    凪いだ海だって、見る者に何か感情を喚起するものだ。
    けれど、あまりにも"無"で、何も映さない鏡のようだった。

    ウサミの感想はどこかずれていて、俺はこの怪異が映画のどこを、何を見ていたのか分からなくなった。
    それからは、軽く「今日の映画、どうだった?」とすら気軽に聞けなくなった。

    だから、「興味がある」というのは、あくまでその表面を、存在としての構造を知りたいだけなのだと理解するのに、そう時間はかからなかった。
    意味や感情の揺れ動きとは、別の次元にある興味。それがウサミだ。

    服装についてだが、家ではまあ、全裸だ。
    人間の上半身に白蛇の下半身。
    蛇の部分には当然毛はなく、美しくしなやかな尾は、狭い日本の室内ではもてあまし気味だ。
    とはいえ、家具の隙間を縫うように音もなく移動する姿には、むしろ優雅さすらある。
    後ろに立たれても気配がまったくないため、日常的に肝を冷やされている。

    蛇は全身筋肉であるという。
    軽く絡みつかれるだけでも解ける気がしない。
    けれど今のところ、俺の骨は折れていないので、ウサミなりに加減してくれているのだろう。

    蛇の腰あたりまで白く滑らかな鱗で覆われており、股間もつるりとしている。
    ただ、実はそこには……いや、その話は脇に置いておく。

    上半身が裸の男ではあるが、特徴的なのは、乳首がないことだ。
    蛇だからなのか、臍もない。
    つまり、上半身もつるりと滑らかな造りをしている。
    そのくせまつげだけは妙に長く、不気味さや異質さを越えて、造形としての美しさと妖艶さを備えている。
    動いたときのしなりや、視線の流し方ひとつ取っても、つい目を奪われてしまうことがある。

    口の方は実にやかましい。
    一言どころか三言くらい多い。
    口調こそ丁寧だが、内容が丁寧かといえばまた別の話だ。

    そんなウサミも、「人間の文化に興味がある」ので、一応服装にも関心はあるらしい。
    だが人間の目から見たときの「自然さ」や「整合性」には無頓着で、選んだ服装が時折ちぐはぐな印象を与える。
    ボタンという概念も、こいつにはどうにも難しいようだ。
    手先は決して不器用ではないが、よく掛け違えては、「できました」と見せてくる。
    そういうときは、ちょっとだけかわいいなと思う。

    だから俺は、できるだけ刺激しないように「うまくできたな」と褒めてから、「少し直してもいいか」と聞くようにしている。

    つまりこの怪異・ウサミは、会話こそ成り立つが、人間の文化への理解はまだ浅い。
    そしてそれを取り入れたところで、人間そのものには決して近づかない存在だと、俺は思っている。

    その知識の取り入れさえも、実は「なぞっている」だけなのかもしれない。
    人間に近づきたいというより、擬態したいだけなのかもしれない。

    俺には分からない。
    おそらく理解の輪の外にいる。

    ウサミという存在に慣れたと思っても、また新たなずれを見つけては、
    「嗚呼、やっぱりこいつは人間ではないのだ」と思い知らされる。

    ウサミがこちら側に来るのが早いか、俺があちら側に行くのが早いか。

    それはどれほど、ずれているものなのだろう。

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