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    ぎぃ。

    @gigigigiiiii
    ぎぃ。だよ!!!
    ポケモン絵と創作絵と過去絵とかもなんかアップ出来たら見やすいんじゃないでしょうか?

    二次創作SSもおいてるよ。ラッシャイ!!

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    ぎぃ。

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    しずく、しずか、しずむ【八】木造平屋建ての一軒家。
    築20年以上経ち、資産価値はほぼゼロだと言われた。

    円満離婚ではあったが、財産の分与がどうのって話になって、この家だけが残った。
    その後も通勤やら何やらを理由に、ずるずると──気づけば、ここに住み続けていた。

    見知った場所に、見知ったもの。
    別に、俺の日常や暮らしを一新する必要もないかと、自分に言い訳しながら。

    そんなある日、ウサミがやってきた。
    いろいろ……本当に色々あって、今はこうして一緒に住んでいる。

    同棲? 取り憑き?
    よくわからないが一応、同棲ってことにしておく。

    部屋は余っていた。
    “男一人分”としては、尾が長すぎたが……まあ一人増えても問題はないだろう、と。
    長らく使われていなかった空き部屋へ案内して、「好きに使っていい」と伝えた。

    ウサミは部屋の中をぐるりと見て回り、俺の元へ戻ってきて、まっすぐに言った。

    「僕、この部屋、いやです」

    ……怪異に、部屋がいやだと言われるとは思っていなかった。

    なんで? どうして? どの立場で?

    「あー……そぉ?」

    曖昧な返事しか出てこなかった。
    まさか断られるとは思ってなかったからだ。
    元は子供部屋、今は物置。片付いてる方だと思ったんだけど、蛇の下半身には狭かったか?

    そう思っている間に、ウサミは俺の脇をすり抜けて、部屋を出ていく。

    「あっ、おい!」

    怪異ってみんなこんなにマイペースなのか?
    俺が知ってる霊とかは、もっとこう……いや、いいや、それは。

    それよりも。

    「ここがいいです」

    ウサミが指さした先は、俺の寝室だった。

    「え、そこ……俺の部屋……」

    寝るだけの部屋。
    酒飲んでソファで寝落ちもするし、一日で一番使ってない場所だ。

    「……じゃあ、交換する?」

    新婚時代、互いの理想と寝相を相談して選んだデカいベッド。
    そこに寝るのは今は俺しかいない。奮発したし、壊れてないし……の惰性で買い換えもせずそのまま使っていた。
    もしかしたらこいつは広いベッドで眠りたいのかもしれないな。
    客用布団しかなかったし、広さも足りなかったか。

    「ちがいます」

    きっぱり否定された。

    「?」
    「ここがいいんです。あなたと寝ます」
    「えっ!? いや、それは……──なあ、俺は人間で、おまえはそうじゃないだろ? それに体、男……同士、だよな?」
    「そうですね」
    「えっと……」

    ウサミは真っ直ぐにこちらを見ている。譲る気はまったくなさそうだ。

    「一応、聞くけど。なんでこの部屋がいいんだ?」
    「門倉さんのにおいがするからです」

    当然のことのように、平然と。

    「とってもいい匂いですね!」
    「……」

    今から同棲解消とか……無理だよな。

    “とんでもないものを招き入れてしまった”という実感は、その後も何度も、上書きされていくことになる。

    たまに思い出すんだよな。
    この時に戻れたら、って。
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