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    ぎぃ。

    @gigigigiiiii
    ぎぃ。だよ!!!
    ポケモン絵と創作絵と過去絵とかもなんかアップ出来たら見やすいんじゃないでしょうか?

    二次創作SSもおいてるよ。ラッシャイ!!

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    ぎぃ。

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    🐍怪異宇佐美は門倉さんにお願いする

    しずく、しずか、しずむ【一五】「人間の文化に興味があります」
    「そのくだり好きだねぇ……」

    どうせまた、ろくでもないことだろう。
    ちら、とウサミの方を見やると、何か手に持っている。針──に見える。

    「ここに、穴を開けたいんです」
    「ピアス?」

    自分の耳たぶを指先でつまむように、ウサミがそこをなぞる。

    「人間って、ここに穴を開けて飾るんでしょう?僕もしてみたいんです」
    「はあ、まあ……いいんじゃない?」

    アルバイトしたい、とか言い出すよりはマシか。
    そう思った次の瞬間──

    「本当ですか? じゃあ、お願いします」
    「えっ!?」

    ぽんっと手渡されたのは、太い針だった。

    「俺が開けるの?!」
    「そうです。他に誰がいるんです?この辺りに、ひとつお願いします」
    「無理無理!」

    縫い針よりもはるかに太い。
    先端恐怖症ってわけじゃないが、見てるだけで尻の奥がぞわぞわしてくる。

    「いや、自分で開ければいいだろっ」
    「僕、開けたことないです」
    「俺もだよ」
    「じゃあ、門倉さんのはじめて、ですね!」
    「そんな“はじめて”は要らない! それに──」

    針と、ウサミの耳を交互に見た。
    穴を開けるということは、この怪異の体に傷をつける、ということだ。
    それは……なんというか──

    「門倉さん、ここに書いてありますから」

    なんと言い訳して断ろうかと考えるより先に、ウサミがスマホの画面を差し出してくる。
    表示された手順は、開けたい場所にしるしをつけて、消毒、軟膏、そして──

    開いた目がこちらを見ている。期待に満ちた、逃げ場のない目だ。
    ……断れなさそうだな、これ。

    そっと耳たぶに触れる。
    やわらかい。体温以外は、人間のそれと何ひとつ変わらない。
    開けやすい角度とか、力加減とか、そんなのは何もわからない。
    ニードルの先端を、印の上にそっとあてがう。反対側には消しゴムを押し当てて──

    ぷつ、と。

    自分以外の皮膚に針が入り、
    その針が、奥へ、向こう側へと突き抜ける。
    やわらかく、けれど弾力のある耳たぶを貫いた感触が、指先から手のひらへ、確かに伝わってくる。

    貫通したニードルをそのまま押し込み、そこにピアスを差し込む。
    針を引き抜くと、傷口に残る異物が、小さくきらりと光った。

    流れとしては単純だ。
    けれど、手に残った感触が消えない。
    怪異の身体に穴を開けた。本人の希望とはいえ、どこか冒涜的で、いけないことをしてしまったような背徳感が、じわりと残る。

    当の本人は、というと──
    満足気な顔で、まだ触るなって言ってるのに、そわそわした様子で耳たぶのふちを撫でている。

    「門倉さん、ありがとうございます!」
    「……おう。まあ、満足したなら、よかったよ」
    「じゃあ、今度はこっちをお願いします」
    「えっ?」
    「片方だけじゃあわないでしょう?あと、ここと、ここと、ここにも開けたいんです」
    「や、やだぁ……」

    ──本当にいやだ。

    “いやだ ”
    “お願いします”

    そんな攻防の末、俺はピアスを開けるのがスムーズにできるようになってしまった。

    ただ、あの貫通する瞬間の感触だけは──
    いつまでたっても、慣れることはなかった。
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