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    あまや

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    あまや

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    SSS/凪砂と茨
    勝利の味
    イベントお疲れ様でした!
    ⚠︎過去捏造/年齢操作/飲酒

    ##凪茨

    Cidre Doux「茨は」
    隣に座った閣下がおもむろに俺のもつグラスを指差した。殿下御用達のホテルのラウンジでのことだ。打ち上げ帰りに「まだ帰りたくない」なんてどこぞの漫画かドラマのようなことを言うものだから、明日のスケジュールを確認し、一時間だけだと釘を刺して連れてきた。
    「いつもそれを頼むけれど、好き、なの?」
    ゆるりと首を傾げる顔はグラスを重ねているはずなのに赤くも青くもなく、いつも通り平然としている。閣下が酔い潰れたところを俺は見たことがなかった。普段から掴みどころのないふわふわとしたお方ではあるが、多少酒が入っても言動に変化がない点はプロデューサーとして安心できた。成人して酒の席も増えてきたが、今のところどれも粗相なくやり過ごしている。
    「ああ、いえ、そういうわけではないのですが」
    「そうだよね、度数も高くないし、茨の好みとは違うような気がして」
    いつも辛口のものを飲んでいるものね、と目を細める閣下に俺は目を見開いた。自分としては周りが出来上がった頃こっそり頼んでいるつもりだっただけに、なんだか面映い気持ちになる。
    「……よく、気がつかれましたね」
    「ふふ、私、目がいいから」
    瞼を伏せて得意げに閣下が笑う。事実だけに、俺も苦笑する他なかった。知られてしまったからには説明しなければ彼は満足しないだろう。そういう人だ。とはいえ、どう説明したものか。手持ち無沙汰にグラスを揺らす。昔から変わらない、甘酸っぱい爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。
    「……お恥ずかしい話ではあるのですが、これは自分にとって勝利の美酒なのです」
    幼かった頃、白星を上げた日は施設やキャンプで宴会が行われた。宴会といってもしっかり準備した宴席のようなものではなくただ全員が勝利を分かち合うために集まって食事をするだけの簡素なものだ。食べ物だってレーションか冷えた不味い飯のどちらかで、けれど、誰かがどこぞから仕入れてきて酒だけはたんまりとあった。大人たちはそれを浴びるように飲んで、それはそれは心地良さそうに腹を出して眠っていたことを覚えている。
    「けれど、そんなところに子どもが飲むような甘ったるいジュースなんてものはありませんでしたから、代わりに自分達に渡されたのがこちらでして」
    「……未成年飲酒」
    「治外法権であります」
    閣下がくすりと笑った。わかっているよと言いたげな視線に、俺だって何も本当に違法を咎められているとは思っていないと目で訴える。
    「……まあ、そういうわけで戦に勝つ度にこれを飲んでいたものですから、この香りがすると達成感が湧いてくるといいますか、これを飲まないとなんとなくすっきりしないといいますか……はは、刷り込みって怖いですね」
    「……いいと思う」
    慈しむように微笑んだ閣下がマスターに声をかけて俺と同じものを注文する。
    「茨の努力が結実した証。君の、ううん、私たちの楽園にふさわしいと思うよ」
    乾杯。
    閣下の掲げたグラスから、さわやかな林檎の香りがした。

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    あまや

    TRAINING習作/凪茨(主人公ジュン、下二人メイン)
    ⚠︎パラレル。アイドルしてません
    三人称の練習兼、夏っぽいネタ(ホラー)(詐欺)

    登場人物
    ジュン…幽霊が見える。怖がり
    茨…ジュンの友達。見えない。人外に好かれやすい
    おひいさん…ジュンの知り合い。祓う力がある(※今回は出てきません)
    閣下…茨の保護者
    三連休明けの学校ほど億劫なものはない。期末テストも終わりあとは終業式を残すのみではあるのだが、その数日さえ惜しいほど休暇を待ち遠しく思うのは高校生なら皆そうだろう。ジュンはそんなことを思いながら今日もじりじりと肌を焼く太陽の下、自転車で通学路を進んでいた。休みになれば早起きも、この茹だるような暑さからも解放される。これほど喜ばしいことはない。
    「はよざいまーす」
    所定の駐輪場に止め校舎へ向かっていると、目の前によく知った背中が現れた。ぽん、と肩を叩き彼の顔を覗き込むとそれは三連休の前に見た七種茨の顔とはすっかり変わっていた。
    「ひええ!?」
    「ひとの顔を見てそうそう失礼な人ですね」
    不機嫌そうな声と共にジュンを振り返ったのはおそらく七種茨であろう人物だった。特徴的な髪色と同じくらいの背丈からまず間違いなくそうだろうと思い声をかけたのだから、振り返った顔はジュンのよく知るメガネをかけた、男にしては少し可愛げのある顔のはずだった。が、見えなかったのだ。間違った文字をボールペンでぐるぐると消すように、茨の顔は黒い線でぐるぐる塗りつぶされていた。
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