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    あまや

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    あまや

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    SSS/凪茨
    君によく似た景色について

    初出 22.12.11

    ##凪茨

    ふと思い立って、カメラを片手にチベットを訪ねた。飛行機で成田から西寧へ、そこから今度は寝台列車に乗り換えて首府・ラサまで。寝台列車にはほぼ一日中乗車していなければならなかったが、雄大な自然や車内で出会した巡礼者とのやりとりはとても興味深く、退屈することはなかった。

    日本から丸二日かけて降り立ったラサの地で初めて見上げた空は、濃い青がこれまで経験した中で最も鮮やかに広がっていた。それは標高が高まるにつれ大気中の水滴や塵が少なくなることによって引き起こされる現象であると理論を理解していても、この圧倒的な深く美しい青色の前には本から得た知識など全くの無意味であると突きつけられたような気分になった。理屈を越えて真に迫る美しさがあり、私はしばらくの間ただこの青色を目に焼き付けるためだけに立ち尽くしていた。
    きっとここに絵筆を持ってきても、この美しさをキャンバスに再現することはできなかっただろう。同じく、いくら言葉を尽くしてもきっとこの感動を他人に正確に伝えることはできないだろう。カメラを持ってきて正解だった。人も、空も、大地も、この地のあらゆる美しいものを可能な限り損なうことなく切り取ることができるのだから。

    帰国後、一週間も勝手に出かけたことを茨は怒っていたけれど、現像した写真の出来栄えを見て現金なことにくるりと手のひらを返した。「その辺の写真家など目じゃありませんな!」なんて高笑いしながらどこかに展示できないか、あるいはブックレットのようなものを作製できないか、早速各所に電話をかけ始めた。さすが、転んでもただでは起きない逞しさだ。
    私はあまり興味がなかったのでその辺のことは茨に任せることにしたけれど、ひとつだけ必ず発表するように頼んだ写真がある。チベットの山頂から撮った、きっとこの世で一番美しい青色の空。まだ誰にも話してないし、きっと君は怒るだろうけれど、どこまでも高く澄んでいるその鮮やかな青一色の写真には君の名前をつけようと思っている。ファインダー越しに、遥かなる高みを目指す、その美しい青い瞳がオーバーラップしたから。

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    あまや

    TRAINING習作/凪茨(主人公ジュン、下二人メイン)
    ⚠︎パラレル。アイドルしてません
    三人称の練習兼、夏っぽいネタ(ホラー)(詐欺)

    登場人物
    ジュン…幽霊が見える。怖がり
    茨…ジュンの友達。見えない。人外に好かれやすい
    おひいさん…ジュンの知り合い。祓う力がある(※今回は出てきません)
    閣下…茨の保護者
    三連休明けの学校ほど億劫なものはない。期末テストも終わりあとは終業式を残すのみではあるのだが、その数日さえ惜しいほど休暇を待ち遠しく思うのは高校生なら皆そうだろう。ジュンはそんなことを思いながら今日もじりじりと肌を焼く太陽の下、自転車で通学路を進んでいた。休みになれば早起きも、この茹だるような暑さからも解放される。これほど喜ばしいことはない。
    「はよざいまーす」
    所定の駐輪場に止め校舎へ向かっていると、目の前によく知った背中が現れた。ぽん、と肩を叩き彼の顔を覗き込むとそれは三連休の前に見た七種茨の顔とはすっかり変わっていた。
    「ひええ!?」
    「ひとの顔を見てそうそう失礼な人ですね」
    不機嫌そうな声と共にジュンを振り返ったのはおそらく七種茨であろう人物だった。特徴的な髪色と同じくらいの背丈からまず間違いなくそうだろうと思い声をかけたのだから、振り返った顔はジュンのよく知るメガネをかけた、男にしては少し可愛げのある顔のはずだった。が、見えなかったのだ。間違った文字をボールペンでぐるぐると消すように、茨の顔は黒い線でぐるぐる塗りつぶされていた。
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