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    にぃには致命傷。
    とりあえず熱落ち着いた感じある

    ごつサブ幼児化 サブスタンスによってウエストのルーキー二人が幼児化した!
     という一報の後、ウエストでは泣き声が響いている。
    「にぃに~! どこぉ! レオのことおいていかないでぇ!」
     大声で泣いて兄を読んでいるのはレオナルド・ライト・ジュニア。見た目からして四歳程度と推測される。その子の前で大丈夫だよと頑張って慰めているのは小学校低学年程度のフェイス・ビームス。
    「レオくん、お兄ちゃんもうすぐ来るから大丈夫だよ。おれがそれまで守ってあげるから!」
     どうしてこんなにも泣き声が響いているのかというと、八割はキースのせいであった。
     サブスタンスによって幼児化したのを認識した瞬間にだぼついた服ごと抱え、不安そうにしている幼児たちの言葉に適当に返事をした。
    「お兄さん誰?」
    「お前らの兄ちゃんの知り合い」
    「にぃにいる?」
    「いるいる」
    「お兄ちゃんどこ?」
    「あっちだよ」
     ディノの足の速さを信じて、先にブラッドだけでも捕まえてこいと言って走らせた。リトル・フェイスを預かったときの教訓だ。こいつはアニキを与えておけば大丈夫だ、と。
     問題はもっと小さなジュニアだ。ジュニアの兄はエリオス関係者ではない。呼べてこいつの父親のみ。ただ、何だか色々とわだかまりがあるというのは分かっている。それがいつからなのかはあまり分かっていないが。
     こんなことを考えながら適当に相槌を打って、適当に答えていた。この状況は非常に困るのだ。特に、リトル・フェイスを見てこいつがフェイスにそっくりだと誰かが叫んでしまうことが。結婚式場に通っているだけで阿鼻叫喚を巻き起こした男そっくりのチビを見て、今度は婚外子騒動にでもなってみろ。母親候補が百人くらい生まれるに決まってる。フェイスも誰を抱いてたかなんて一切覚えてないだろうから。
     そして、タワーに着いて。どこにもいない兄を求めてジュニアが大泣きして今に至る。
     本当は自分も泣きたいだろうに、自分より小さな子が大泣きしているがためにフェイスは我慢している。目に大粒の涙を溜めながらも必死に慰めて、敵であるキースを威嚇している。
     二人を助けたというのに、今の二人にとってキースは謎の研究所に連れてきた敵だ。研究所にいるノヴァ博士とヴィクターもマッドサイエンティストに見えているのだろう。
     ノヴァ博士はマリオンを育てた経験からか、ジャックとジャクリーンを呼び寄せて、しゃがみ込んで話そうとしている。けれど、一度刷り込まれてしまった思い込みはそう簡単には覆りそうにない。
     ディノに任せたブラッド探しさえ何とかなれば、フェイスは懐柔できるはずだ。ちょっと年上の自分を守ってくれたお兄ちゃんが大丈夫と言えばこのちっこいジュニアも泣き止んでくれるはず。そんな願いを込めて。
     そこに響いた着信音。発信先はディノだ。嫌な予感を無視して出る。
    「キース、どうしよう……今ブラッド、会議で郊外にいて……早くても夜まで帰って来れないって」
     万事休す。もう策は尽きた。
    「こうなればザ・ライトニングを呼ぶのが適切では?」
     いくら今は嫌っているとしてもこの子の父親で、外見はあまり変わっていませんからとヴィクターが提案する。うーんと唸った後に、ノヴァ博士がジュニアに話しかける。
    「ジュニアくん、」
    「や! レオはレオだもん!」
    「そっかあ。じゃあレオくん、今お兄ちゃん、学校に行っているんだ。お父さんならお迎えに来てくれるんだけどそれでもいい?」
    「やぁだぁ! にぃにがいい! にぃにじゃなきゃやだ!」
     余計に泣き出してしまった。
     諦めが優って、子どもの相手が得意そうなウィルとグレイ、ジェイを呼び寄せる。泣き過ぎて引き攣った声を出すジュニアがあまりにも哀れに見えた。フェイスの方も頑張ってはいたが、いつまでも来ないお兄ちゃんのせいでもう決壊寸前だ。ノヴァ博士お手製のクッキーを渡してもダメ。今にも泣き出しそうに顔を歪めている。
    「ジェイから聞いてきたが……レオナルド」
     聞き覚えのあるだろう声にちっこいジュニアが顔を上げる。
    「……にぃにじゃない……」
     いやだと口を尖らせて、それでも涙は止まりかけている。ひしと父親の足にくっつく姿は可愛らしい。その姿を見て、緊張が解けたのかフェイスがぽろぽろと涙を零し始める。慌てはしたが、ザ・ライトニングの後ろにいたウィルとグレイのおかげ、というか特にグレイのゲームのおかげで何とか持ち直す。
     ノヴァ博士のクッキーも食べて、まだ食べたいと駄々をこね始めたフェイスのためにご飯を作って、ホットミルクを作ってといい歳の大人たちが動き回る。
     ジュニアは父親に抱かれてすやすやと眠ってしまっていた。
    「こいつには嫌われていたが……確かに小さい頃はこうだったな」
     甘えん坊なんだ、レオナルドは。そうやって笑う顔はしっかりとした父親の顔だった。
     夜も更け始めて、ジュニアはベッドに寝かしつけられる。フェイスも寝ろと言っているのだが、お兄ちゃんを待つと言って聞かない。うつらうつらとしながらも必死に起きていようとするので無理矢理にでも寝かしつけるか迷っているとようやくお兄ちゃんのお出ましだ。
    「フェイス!」
    「お兄ちゃん!」
     おれね、レオくんのこと守ったんだよ。レオくんのお兄ちゃんなの。頑張ったんだ! 褒めてと抱きつく。ディノがラブアンドピースと言いながら撮影を始めたので、後で悪意のない揶揄いにフェイスは襲われるのだろう。
    「偉かったな、フェイス」
    「うん、おれがんばったよ……おにい、ちゃ……」
     すうすうと寝息を立て始める。
     ノヴァ博士の見立てでは明日の朝には元に戻るだろうということだった。
    「愛されてんな、お兄ちゃん?」
    「うるさいぞ、キース」
     眠っている弟の髪を撫でる姿を、今の弟に見せてやりたいもんだ。未だに嫌われてると勘違いし続けてるんだもんな、あいつ。
     翌朝、可哀想に全ての記憶があるらしい二人が真っ赤になったり真っ青になったりしながら検査を受けている。
     ディノがたぁくさん写真撮ってるから楽しみにしてろよ? と言ってやれば二人の叫びが聞こえる。
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