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    みらとりさんぴー。
    ディノが寝てるときに話しかけられないし、呼吸してる確認もできないキースが好きですって言って新幹線で書いた

    暗い話 ふと、夜中に目が覚める。重い腰をさすりながらキッチンへ向かい、水を一杯飲む。下着しか身につけない状態でぼんやりと窓の外を見る。夜も眠らない街の、あまり治安もよろしくない所にある部屋だ。窓の外もネオンが輝いていて、今のオレにはどうにも明る過ぎた。そっとカーテンを閉めて、もう一杯水を飲む。
     汗や、涎に精液で汚れていた身体は綺麗に清められていた。オレが意識を失った後、どうせブラッドとはまだ遊んでいたのだろう。オレが起き出すのに、ブラッドは気がつきもしなかった。二人きりで遊んでいたとき、あいつはオレの身動き一つでいつも目を覚ましていた。起きないほどに疲れているのか、オレのために起きなくてもいいと、オレがもう間違いを犯さないと分かったのか。ブラッドに直接問うたことはないけれど、きっと後者だ。あいつはどうしようもなく優しい男だから。オレが心を、身体を、殺さないようにずっとそばにいてくれた。ありがとうなんて言えるような関係ではないけれど。
     二人きりの夜の記憶が鮮明に蘇る。アレは傷の舐め合いで、命綱で、愛だった。ディノの身代わり、ではなかったはずだ。オレはブラッドを求めていたし、ブラッドだってオレを求めてくれていた、と思う。ディノが帰ってきて、自然と二人きりで遊ぶことが減って、そういえばオレもこいつも、ディノが好きでセックスをしていたんだなと思い出した。
    「二人は何を俺に隠してるの?」
     ディノがオレたち二人の目を見て、真剣な顔で問う。ヒーローとか、エリオスとか、そういうのと関係ないだろなんて全てお見通しだった。だから、二人してお前が好きだなんてバカみたいな告白をして、どちらかが選ばれたら苦しいんだろうなと思いながらディノの判断を待っていた。
    「……どうしよう、俺、どっちかなんて選べない」
     さっきまでの真剣さはどうしたんだというような声で、子犬のような顔をする。ブラッドと顔を見合わせて、じゃあ俺たち二人を愛せばいいだろうなんて、あり得ない提案をブラッドがする。どうせオレとブラッドは既にディノを思ってセックスをしていて、オレはディノだけじゃなくてずっとブラッドのことだって愛していたみたいで、ブラッドにとってはオレは邪魔かもしれないけれど、セックスをできる程度には情があって。つまり、長々と言ってしまったが、三人で愛し合うことに、何ら問題はなかったのだ。
     セックスは三人で。オレは受け身しかしたことがないと言えば、三人でするためにブラッドに俺が入れて、ブラッドがキースに入れればいい? なんてアホみたいなことを言い出して、結局それが一番幸せだなんて。
     三人とも決して暇なわけではないけれど、オレとディノは同室で、一緒にいる時間も長いし、ブラッドが部屋に来ることさえできれば、場所には困らなかった。メンター三人で酒盛りだと言えばお子ちゃまたちには何も言われなかった。ブラッドへの感情拗らせているフェイスには少し悪い気がしたが、どうせいつか殴られるのだ。先延ばしにすればするほど、反発することも分かっていて、まだ何も言っていない。
     今日は三人のオフが重なるとても稀な日で、どうしても何の邪魔も入らない条件が欲しくて、オレの部屋に三人で集まった。オレが飯を作って、ディノが勝手にデリバリーしたピザも食べて、ほんの少し酒を飲んで、セックスをする。明日の朝のために、ミソスープ用の出汁まで取っておいた。めんどくせえなんて口では言いながら、楽しみだったから。
     幸せで、嬉しくて、愛おしくて、気持ちよくて、目が覚めた瞬間に全てが夢幻に感じた。だって、オレはこんな幸せになっていいような生き方をしていない。生きるために何だってした。こんなオレが、愛する二人に愛されて、大切にされるわけないじゃないか。
     気持ちを落ち着かせようと水を飲みにきたのに、こんな時間になっても眠らない街と、そんな所に住む自分があまりにもお似合いで、二人には似合わなくて、気持ちが悪くなる。何で、こんな所に呼んじまったんだ? 二人にはもっと、明るくて、優しくて、美しい世界が似合うのに。こんな、こんな所じゃない。
     大丈夫だよ、とディノに笑ってほしくて、寝室に戻る。起こさないようにそっとドアを開けて、目を瞑るディノを見つめる。
     ……ディノが、いる。でも、ちゃんと生きているのだろうか?
     ディノは死んだ、と固い声が脳裏に蘇る。ディノは、死んだ? そんなの嘘だ。ここに、ディノはいるじゃないか。あれ? でも、何でオレは酒に溺れたんだっけ。何で、ブラッドとセックスしたんだっけ? 何で、何で?
    「でぃ、の……?」
     ひゅ、と呼吸が早くなる。生きてるんだよな? オレは今、夢を見ているわけじゃないよな? この幸せは大丈夫だって、嘘じゃないって、なあ、ディノ?
     起きろ、という言葉は口からついぞ出ることがなかった。ヒュ、ハ、と異質な音を立てる。違う、違う、違う、本当に?
     ドアの前で立っていることさえできなくなって、うずくまる。手が震えていて、冷や汗か、涙か分からない液体が溢れている。
    「……キース? おい、どうした、キース!」
     そんなオレに気がついたのは、やっぱりブラッドだった。自分の身体もしんどいだろうに、わざわざベッドから降りてオレを抱き締める。大丈夫だと背中をさする。俺がいる、一人にしないなんてその言葉は、まるでディノがいないときのようで。
     二人で、子供のように縮こまる。ディノがいないと笑えない。幸せになれない。怖い。背中をさするブラッドの手も、少しだけ震えている。ああ、きっと、あの頃のブラッドも泣いていたのだと気がついて、それでほんの少しだけ正気に戻る。
     二人で騒いでいるのに、ディノが寝こけているわけがない。
    「二人とも、ベッドにおいで」
     大丈夫と笑って、確かに熱のある手でオレたちの手を握る。
    「もう大丈夫。俺はちゃんと生きてるだろ? ほら、俺の首と胸、どっちがいい?」
     とく、とくと心臓が動いていて、ディノの青い瞳はオレたちを映している。
    「これは夢か?」
    「キースの夢でも、ブラッドの夢でもない。俺たちの現実だよ。二人は俺に愛されてて、俺は二人を愛してる。……俺を連れ戻してくれてありがとう、キース、ブラッド」
     キース、足が冷たくなっちゃってるなと笑っている。ブラッド、俺より先に気づいてくれてありがとうと撫でている。それだけでまた涙が溢れて、ブラッドの顔も同じように濡れていて。
    「ほら、そんなに泣いたら目が腫れちゃうぞ」
    「ディノのせいだから、ディノが何とかしろよ」
    「ディノは誠心誠意俺たちに尽くして、何とかしてくれ」
     冗談のようにブラッドが笑ってディノにキスをする。そのまま、オレにも。ついで、というわけではないみたいだ。
     それを見て、ディノもオレとブラッドにそっとキスをして、涙を舐めとる。
    「汚いだろ」
    「んー、二人とも目が溶けちゃいそうだから甘いかなって思ったんだけどな」
     ほら、次は? とディノが笑う。オレか、とディノとブラッドにキスをする。
    「明日もいっぱい遊ぼうな」
     ディノは真ん中で、オレとブラッドの手を取って、それで眠る。明日も、おはようと言える朝が来たらいい。それが来ないなら、このまま起きなくてもいいのに。
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