甘い約束の始まりに俺、Fulgur Ovidは図書委員だった。
それも2年に進級した今では、すっかり委員長最有力候補となっている。
仕事は好きで真面目にやるし、本は元々大好きだ。
それ故委員からの信頼も厚い。
だが俺が図書委員になった本当の理由は、そのどこにもなかった。
「こんにちは」
目を伏せて事務作業を淡々とこなしていた俺の頭上少し右側から、鈴のように愛らしい音色のあたたかい声が聴こえた。
心が跳ね上がったのが鼓動の速さからよくわかる。
しかし、それを決して表に出すわけにはいかない。
すっと澄まして視線を上げると、その声の主は丁度、下ろした髪を右耳にかけるというあざとい仕草を終えたところだった。
「また来たんですね、Shu先輩」
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