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    @Futa_futa_2222

    ジャンルごちゃまぜ闇鍋。
    カプは全部プラトニックです。
    官能表現に乏しすぎてどう脳内をほじくりかえしても生み出せないので……

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    Ich liebe dichってやつ

    2022/2/13ワンドロワンライ司冬 バレンタイン前夜祭 冬の風が頬を撫で、身震いするほどの寒さの中。彰人は街で特徴的な髪色でよく目立つ相棒の姿を見かけた。手には大きな袋を携えている。見るにゲームセンター帰りで、袋の中身はお菓子やらぬいぐるみ等と予想する。賑わう人混みの中で相棒の姿を見失わないようにと、彰人は小走りで冬弥の元へ駆け寄った。
    「よ、冬弥」
    「!彰人」
    偶然出会った相棒の姿に冬弥は驚くが、週末ということもあり周囲が人で賑わっていたため、二人で人混みから抜け出した後に冬弥は口を開いた。予想していた通り、ゲーセン帰りで袋の中は景品で埋まっているらしい。お菓子は今度のチーム練習の際にWEEKEND GARAGEやセカイへ持っていくそうだ。
    一通り自身について話し終わった後、冬弥は彰人について尋ねた。普段相棒として行動を共にしてはいるが、休日にこうしてばったり会うことは珍しい。冬弥は書店やゲーセン、彰人は洋服を見たり、美味しいスイーツの店へと姉に駆り出されたり……と、元々の行動範囲が異なっているから特にそう感じるのだろう。
    「彰人は?今日はバイトは無いと言っていたはずだが……?」
    「あー……姉貴がうちのキッチンとリビング占領しててさ、邪魔だからって追い出された」
    邪魔だからという言葉の割に、彰人は嫌な顔は一切しなかった。いつものことで慣れている、なんなら数年前に比べたらマシという心持ちであるが、それよりも世の中が経済的に動く大切なイベントが控えているからだ。普段なら練習をしている週末も、杏とこはねが何かをする(大方予想はつくが)ようで練習は無しになった。自宅で母と共にチョコと格闘している姉もそうだが、皆イベントに浮かれているのだろう。それほど大切なイベントということなのだろうが、彰人としてはお返しが面倒な行事という印象でしかない。
    「今日は、街全体が忙しないな」
    宛もなく二人で歩いていると、冬弥が呟いた。
    周囲の浮かれた様子と正反対の冬弥。この様子だと何も気付いていないようだ。
    「ああ……そりゃ今日は……」
    彰人が言い切る前に、冬弥が足を止めた。隣にいた冬弥が立ち止まったことで彰人も自然と立ち止まる。そして、冬弥の目線の先を辿ると、彰人も知っているとある洋菓子店……の前にある看板だった。
    「……バレンタイン特集?」
    バレンタイン風に宣伝が描かれたカラフルな看板を、冬弥は瞠った後、やっと気付いたのか、納得したように声を漏らした。
    「そうか、明日はバレンタインなのか」
    矢張り気付いていなかった相棒に内心で苦笑をこぼす。
    「……彰人、すまないが少し待っていてくれないか?」
    唐突な申し出に訝しむが、直ぐに目の前の洋菓子店に入店した冬弥の後ろ姿に、もしかしなくても……と、また彰人は苦笑をこぼした。

    案の定、入店した相棒はチョコを携えて戻ってきた。そして、オレの手には冬弥から受け取ったチョコの袋が。
    「……明日渡した方が良かったか?」
    「いや違ぇよ、つーかなんでオレに?」
    「……?バレンタインはお世話になっている人への感謝を伝える日だろう?」
    当然だろうとでも言いそうなその表情に、肩透かしを食らったような気分になる。
    「なんだよそれ……」
    「お返しは歌で返してくれ」
    「はー……わかったよ。だったら、今から歌いに行かねえ?」
    「俺もそう言おうと思っていたところだ」
    手元のチョコは冬弥と二人で食べるかと脳内で今日の予定に組み込んだところで、ふと冬弥の手元が気になった。
    「そっちの袋は何なんだ?」
    「司先輩にあげようと思って」
    「……一応聞くがそれ、どういう意味のチョコだ?」
    「……?司先輩には昔からお世話になっているから、日頃のお礼にと……」
    「ああ……」
    本当に純粋な想いでバレンタインを楽しんでいるであろう相棒に、片想いしているらしいセンパイに内心でどんまいとエールを送った。


    「……好きな人……か」

    《メッセージカードで好きな人に素直な気持ちを伝えてみませんか?》
    昨日チョコを買ったおまけとして貰ったバレンタインフェアのメッセージカード。書いては消してを繰り返し、何度も悩んでいると気付けば朝を迎えていた。どうにかメッセージは形になったものの、これでいいのかと未だメッセージカード片手に考え込んでいる。
    まだ家を出るまでは時間があるようだとまたペンを握った瞬間、スマホの通知音が響いた。件の想い人からのメッセージのようだ。跳ね上がる想いと体温を鎮ませ、一呼吸置いてからメッセージを表示した。
    『咲希が冬弥に渡したい物があるらしい。今日学校で会えないか?』
    内容を確認し了承の旨を送ろうと指を滑らすと、またホップアップが表示される。
    『ちなみに、オレも冬弥に渡したい物があるぞ!』
    そのメッセージで、胸中が荒れた海から平静とした凪へと変わった。変に何かを考えるよりも、素直に今の自分の気持ちを伝えたらいいのだ。司先輩はいつも自分の気持ちを臆せずに伝えてくる。自分のその気持ちに応えたい。
    俺もです──と返事を返した後、メッセージカードの最後に一文を書き足し、学校へと向かった。
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