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    @Futa_futa_2222

    ジャンルごちゃまぜ闇鍋。
    カプは全部プラトニックです。
    官能表現に乏しすぎてどう脳内をほじくりかえしても生み出せないので……

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    2022/3/13 司冬ワンドロワンライ 「ホワイトデー前夜」「お菓子言葉」 先日チョコレートファクトリーで各々チョコを作り、迎えたホワイトデー当日。
    瑞希は件のチョコレートファクトリーでも会った(協力した)先輩の姿を見つけた。司はどこかそわそわとした落ち着かない様子で、ホワイトデーを意識していることが遠目で窺えた。
    「司先輩〜!」
    呼びかけると、司は一瞬肩が飛び跳ねたように見えたが、すぐに普段のように大声で応えてくれた。
    「司先輩、もしかしてボクを誰かと間違えた?」
    「ま、まま間違えてなどいない!暁山を間違えるわけがないだろう!」
    明らかなほどに狼狽える司に笑ってしまう。
    「あ、司先輩ってお菓子言葉って知ってます?」
    今日はホワイトデーだから、という単純な理由で投げかけた言葉。そんな言葉に意外にも司は食い付いた。矢張りこの類のジンクスじみた話題は誰もが興味を惹かれるものなのだろう。
    「花言葉なんかと同じように、バレンタインやホワイトデーに贈るお菓子にも意味があるんだ〜ま、殆どの人は貰う物の意味とか気にしてないと思うけどね」
    「ほう……ちなみに、どんな言葉があるんだ?」
    「先輩も興味がおありで?」
    そう問うた司は真剣な顔で、思わず自分も声を潜めた。変な密会みたいで少し楽しい。話している内容は真逆なものだが。
    「定番のお菓子だと……チョコはあなたと同じ気持ちとか、クッキーならあなたとは友達、とか!」
    よく話題になる言葉を羅列し、その都度司は相槌を打った。
    「あとは……マシュマロがあなたが嫌いって意味とか……ってあれ、司先輩?」
    相槌を打っていた司の気配が消えた。話を止め様子を窺うと、司の表情が消えていた。それはもう真っ白と。さながら先程のマシュマロのように。
    「もしかしなくても……」
    考えなくても、司の表情を見れば一目瞭然だった。贈った、もしくは贈る気なのだろう。マシュマロを。
    「ま、まあ大体の人は意味なんて気にしないから!多分!」
    何とかして空気を変えようと振る舞うが、司の表情は変わらなかった。しかし、一つの疑問が浮かび上がった。
    「あれ、司先輩ってチョコレートファクトリーでチョコ作ってたよね?なんでマシュマロ?」
    「ああ……はじめは作ろうと思っていたんだが……考えれば考えるほどどんなチョコがいいかわからなくなってな……」
    「それで、作れなかったの?」
    何に触れていいのかがわからず、手探りに会話を進めた。
    「ああ……幸い、良いお菓子が見つかってな。それがチョコマシュマロだったんだ」
    司の声のトーンが上がり始める。
    「マシュマロなら、甘い物が苦手でもコーヒーの中に入れて飲むことが出来るだろう?だから良いと思ったんだが……」
    また司のトーンが下がり、目線も下がった。跳ねている髪すらも下へと向いたと錯覚してしまうほどに。
    (すっっっごくダメージ受けてる……!?)
    自分の些細な一言でここまでダメージを受けるとは微塵も思っていなかった。瑞希の中ではチョコレートファクトリーの印象が大きく、マシュマロという選択肢は始めから無かった。だからこそ、司がマシュマロを選んだことに驚いた。
    「マシュマロについていたメッセージカードも綺麗でな……それにメッセージを書いて放課後に渡そうと思っていたんだが……オレとしたことが!」
    聞いていないことまで話し始め、さすがの瑞希も慌てた。自分がこんな話まで聞いてよかったのだろうか。何か大事なことまで聞いてしまっている気がする。
    「お、落ち着いて……司先輩が選んだ物なら大丈夫!」
    「その人のことを想って選んだものでしょ?ボクだったら、ボクのことを想って選んでくれた物なら、どんな物でも嬉しくなるな!」
    「あ、暁山……!そうか……!オレは良い後輩を持った……!放課後、オレは必ず渡してみせるぞ……!!」
    (良かった、元気になったみたい)
    瑞希なりの精一杯の言葉で、再起不能だった司は息を吹き返した。大袈裟な程にリアクションが激しいが、先程の消沈した表情よりは何倍もマシだった。

    視界から次は移動教室らしい司の姿が消え、瑞希は物思いに耽りながら自身の教室へと足を進めた。その思考の対象は先程別れたばかりの先輩だった。
    (うーん、あの司先輩にあんなに想われてる人って誰だろう?ボクの知ってる人かなあ……)
    あの司の狼狽っぷりは、それほど大切な人だからなのだろう。
    (あ、そういえばホワイトデーに贈るマシュマロの意味伝えるの忘れてた)
    例を出すために、わかりやすい言葉を伝えたのが却って失敗だったかもしれない。しかし、普段見れない先輩の姿に訂正する気が起きなかったことは本当だった。
    (相手の気持ちをマシュマロに包んで愛でお返しする……か、今の司先輩にぴったりだなあ)
    ホワイトデーが終わったら、上手くいったのか司先輩に聞いてみようか。
    (ボクも放課後、楽しみだなあ)
    普段学校では刺さるような視線や言葉で重い足が、今日は何故か軽く感じた。
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