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    etieti_gabriel

    @etieti_gabriel

    最近は鯉月にお熱

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    etieti_gabriel

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    坊メ鯉月🌙サイド。絵師のイラストからssつけるやつ。ムロさんのイラストにssつけさせていただきました。
    🌙サイド。
    ⬇素敵イラストこちら!
    https://twitter.com/muro_no_e/status/1647907816995442689?t=h-jTd9mXT2FULH3owAuQ9A&s=19

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    坊メ鯉月 🌙サイド「海がみたい」

    突拍子もない彼の言葉に顔をしかめる。
    「分かりました。行きましょう」
    あなたはいつもそんなことを言う。

    鯉登グループの次男坊である音之進様に、お見合いの話が来た。なんと喜ばしいことなのか。屋敷に住む使用人の全員で喜ぶ。でも私は心のどこかではきっと、

    私がこの屋敷にやってきたのは音之進様が8歳の頃だった。わがまま放題で息子に困っていると言われ始めて会うと、これは確かに甘やかされて育ったのだろうというほど生意気だった。この人がお前専用のメイドだと紹介された時の音之進様の表情といったら。まぁそもそも男でメイド服を来ている時点で驚いたのだろうが、威圧感を与えないためだなんだと言われてこの服を支給されたのでしょうがない。よろしくお願いしますと声をかけたらすごく小さな声でお願いしもす、と返したのだった。

    それからは甘たれな態度を矯正するため厳しく接した。今まで屋敷内のメイドや執事達は音之進様に強く出なかったのだろう、強めに叱ってやれば親の仇かのように顔をしかめて私を睨むのだった。

    音之進様が10歳の頃、ユキ様が大事にしていた花瓶を音之進様が割ってしまうことがあった。自分は悪くないなどとのたまる彼に、私はこう言った。

    「音之進様、ご覚悟ください」
    音之進様が集めた収集品やおもちゃを、次々と壊していった。やめろと泣きわめき、私の背中をポカポカと叩く。ここだと思った。

    「ここにあったのが悪いんです、私は悪くありません」「どうせかわりはいくらでもあるので」
    何かを言い返そうとした音之進様が固まる。その台詞が彼がさっき発した言葉だったからだ。

    「ユキ様の花瓶も、ユキ様にとっては大切なもので、その ‪”‬かわり‪”‬ となるものはないのですよ。お許しください音之進様」
    彼の前でしゃがみこみ、頭を撫でる。
    「つきしまぁ、すみもはん。もうせんで、だかや許してくいやい…」初めて見せた素直な彼の様子に、確かな達成感を覚えた。

    それからの音之進様は事ある毎に私を呼んだ。花が綺麗だとか、秘密基地を屋敷内に作っただとか、テストでいい成績をおさめたのだとか…
    綺麗ですね、ご両親にはないしょですね、努力の賜物ですねと返すと、太陽のような眩しい笑顔でえへへと照れるのだった。

    音之進様はすくすくと成長し、立派な大人の男となった。仕事の補佐も手伝うようになり、ゆくゆくは会社を継ぐ彼の手伝いができることに喜びを感じていた。

    そんな矢先に見合いの話が出たのだ。

    平二様が取り決めたことに音之進様が拒否することはできない。赤の他人と結婚することになった彼を哀れに思った。

    車を走らせしばらくすると、海が見えてきた。小さい頃に音之進様にねだられこっそり連れてきたことのある海だった 。

    音之進様が窓を開けて、海の景色を楽しんでいる。これ以上ここにいたら、この日常から離れるのが惜しく感じてしまいそうで、もう屋敷に帰ろうと遠回しに伝えた。

    ああ、と彼の返事を聞いて、車をUターンさせる。

    「月島、おいはお前と会えて本当によかった。小さいころから面倒を見てくれてありがとう」
    音之進様がそう口を開く。やめてくれ。永遠の別れと言うわけでもあるまいに。
    「私も、あなたにお仕えできて幸せでした」
    と答えた。そう答えるので、精一杯だった。

    それから月日が巡り、いよいよ結婚相手との顔合わせの日がやってきた。テーラーに仕立ててもらった新品のスーツに身を包む彼は、一層大人びて見えた。顔合わせが行われるホテルの入口まで、ついて行く。
    「ここから先は、あなたひとりで」
    平二様に頼みたいことがあると呼ばれ、ここで音之進様とは別れてしまう。顔合わせが終われば、彼は婚約者を得た大人としてホテルのドアを出てくることになる。喜ばしいことだ。それをお迎えするのは喜ばしいことなのに。
    「では、行ってくる」
    そういう音之進様に頭を下げる。ロビーの中へ入っても、この顔を上げることはなさそうだ。

    ずっと一緒にいたかった。大人になってからも、仕事で成功する度に彼を隣で褒めてあげたかった。彼のためにスープをつくったときのあの笑顔を、これからも見続けていたかった。隣でずっと。

    この気持ちが恋だと気づいたのはいつだろう。子供だった彼が私なんかに懐いてくれて、つきしまつきしまと名前を呼ぶ。隠しきれていたと思っていたのに、体調が悪いのを気遣ってくれた。古くなったみたいだからやる、とリボンタイをプレゼントしてくださった。思い出が涙となって溢れる。嫌だ、離れて欲しくない。ずっと傍にいたかったのに。

    最後に目に焼き付けておきたいとロビーを後にするであろう彼の姿をこっそり覗く。その時に。



    泣きそうな表情の彼と目が合ってしまったのだ。


    ああ、やめてくれ、こっちに向かって来るな。顔合わせの約束の時間が。私を抱きしめてる場合じゃないでしょう。離れたくなくなるから、もう離してくれ。


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