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    nmhm_genboku

    @nmhm_genboku

    ほぼほぼ現実逃避を出す場所

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    nmhm_genboku

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    じゅじゅつの美醜逆転

    美醜逆転物語個人的に美醜逆転の女尊男卑世界 ※ただし女子2割男子8割の世界 っていうのが大好きなので、書いた。


    因みに一人称でわかる心の距離
    悠仁相手:俺
    他:私

    主人公以外全員男というとんでもない設定なので、それでもいいよって方はどうぞ

    内心:友達の美醜逆転に対するプッシュが強い
    総評:めちゃくちゃ加筆した

    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

    おぎゃっと産まれて早10数年。

    この世界が圧倒的におかしいと思ったのはいつだろうか。生まれた時から見えるダークファンタジーの漫画に出てくる気持ち悪いやつが見えた時からだろうか。
    もしくは幼馴染の悠仁が毎朝同じ時間に家が近くもないのに迎えに来て、女の子は脆いし危ないからと言って木登りとか虫取りとかさせてくれなくなった時からだろうか。
    それとも過疎化が進んでいないこの地域なのに女子がやたら少なく、蝶よ花よと地域全体から可愛がられてはいるのに、可愛がるやつら全員モブおじよろしくブサ…ンンッ…ちょっと個人的に苦手だなぁと思うレベルの奴らしか話しかけてこないみたいな空気を感じた時からだろうか。
    ちょっと苦手なその顔をまるでイケメンとでも言うような態度を醸し出しながらナンパしてくる奴に、嫌な顔をしながら悠仁の方へと避難した時にパーカーで顔を隠して謝ってくる事が多いと感じた時からだろうか。
    それとも、幼馴染の悠仁が初めてーーー

    「悠仁!!!」
    「み、瑞樹!?」

    ーーー初めて、お前こんな夜更けになんで外に出てんだよ!!なんて怒られている今だろうか。

    正解なんて無いんだろうな。実際私からしてみれば悠仁はカッコいいけど、この世界じゃ生き難いのだろう。でも怒られる筋合いはないと思う。オメー私があの結婚結婚うるさい親戚嫌いなの知ってンだろ!!モブおじ×キャラは紙面で見るのが良いのであって体験したいわけじゃねぇんだわ!!紹介されるモブおじと結婚するぐらいなら本人の意思なんて関係なく悠仁と結婚したいです!!!

    「つーかそれなら悠仁だってこんな夜更けに学校に侵入してあまつさえ校舎破壊してんじゃん!!ここ来る前に通った廊下で割られてた窓ガラス、ぜってぇお前だろ!!」
    「ゴメンネ!!」

    でも緊急だったの!なんて言っている悠仁に、なら仕方ないね!!と返事を返す。そんな俺らの会話に、黒服の少年(伏黒恵くん)は思わずというように2度見をしていた。ごめんね!多分なんで会話出来てんだこの女って感じなんだろうけれど、今はそれに付き合ってあげる暇ないから、また今度ね!!なんて思いながら、目の前の化け物に目線を戻す。げ、原作~~!!なんて声が出なかったことだけ褒めて欲しい。まだ指を食べていないのがせめてもの救い。ここで悠仁が指を食べなければ万事解決って感じじゃない!?原作始まんないけれど、幸せな生活を送るならマジでここで何もアクション起こさない方が身のためじゃない!?なんて思っていれば勇敢にも目の前のバケモン倒そうと走り出す悠仁に、
    おっまえはそういう奴だよな!!!
    なんてちょっと泣きそうになった。ついでに俺のすぐ横に吹っ飛ばされたのでめちゃくちゃビビる。巨漢を受け止められる筋肉なんて持ち合わせていません(キリッ)
    確かに生まれた時から見えていたけれど、今ここで視えるのが正解なの!?視えないのが正解なの!?なんて一瞬思考が別のところに言ったけれど、確か1巻でこういう危機的状況下に入ると生存本能で見えるって血塗れでちょっと疲弊している伏黒くんが言ってたのでそれを信じます!!!!
    てかそれ以前に確かここで虎杖が指食ってたような気がする!!

    「俺にジュリョクがあればいいんだろ!」
    「ま、待て虎杖!!」
    「ちょ、ま、悠仁やめろ!!!」

    ゴックンしないで〜!!!あとホントここで弁明をさせてほしい。指を食べるタイミングがアニメ版とコミックス版で違うんだよ~~(ぴえん)指を取り込んだ瞬間から禍々しいオーラを纏って、目の前の呪霊を圧倒的な強さで葬った悠仁(宿儺の姿)に頭を抱えた。アッー!!!お客様!やめてください!!そんな良質な筋肉を見せつけるように上半身裸になるのやめてください!!通報案件!110番される!!ケヒケヒと笑いながらフェンスに上がる悠仁(宿儺の姿)に、頭を抱える。宿儺様降臨じゃんなんてちょっと呑気に感動してる私の横で眉間に皺を寄せて舌打ちした伏黒君に、やっべリアルでイケメンじゃんって思った。空気読めなくてごめんて。ちょっと現実逃避したいんだって。

    「最悪だ…ッ」
    「やっべ」

    いやもうほんとまって欲しい。光は生で浴びるに限るなって言っているのを見ながら、無意識に腰を落とす。転生してから何も考えなかったけど、私術式あるっけ???こういう時転生特典で多分あるんだろうけど、世界の常識が強烈すぎて全然気にしてなかった!!もう少し本気で頑張れば良かったー!なんて思いながら、溢れる汗を抑えて小さく、悠仁、と声を上げた。

    「ほう?女の気配が少ないと思っていたが、まぁいい」

    貴様で許してやろう、そう言って悠仁(宿儺の姿)が、俺の目の前にきていた。
    隣でこちらへと手を伸ばす青年(伏黒)が逃げろと言っている。大丈夫。アニメでも漫画でもだいたいこのタイミングで戻っていたし、大丈夫!多分。えっ、でもまって、この世界で本当にこのタイミングで戻るという自信なんて、ある?

    「ッ…!!」
    「ほう?」

    バヅッ、と頬を掠めた爪先にひゅう、と息をのんだ。ハッ、ハッ、と息を荒々しく吐いて、頬を伝う血を制服の袖口で拭いながら、あっぶね〜〜〜!!!なんてちょっと泣きそうになった。やだやだやだ!こんな所でジ・エンドしたくねぇって!!誰だよ入れ替わるから大丈夫って言ったやつ!私〜〜〜!!!死ね!!!脳内が現実を受け止めきれない中、息を大きく吸って強く幼馴染の名前を呼ぶ。ビクリと震えた体、刺青のような模様が少し薄くなってきている。それを見て、ポタポタと流れる汗を拭って、ふぅふぅと上がる息を整え、再度大きく息を吸い込んで、声を出した。

    「虎杖悠仁!!!“起きろ”!!」
    「こッの、女ァ!!」

    ザンっ、と砂ぼこりごと空気を飛ばされてぎゃん、と声を上げてしりもちをついた。煙が晴れるころ、自分の首を自分で絞めている悠仁がいた。なぜ動ける貴様とか言ってる宿儺っちに中指建てたいです!いいぞ悠仁!!もっとやれ!!

    「瑞樹!!大丈夫か!?」
    「大丈夫じゃねぇよ~~~!!!!!」

    いつもの刺繍も何も無い状況の彼を見て、もうほんとお前犬猫でも食べないもの食うなよォォォオおお!!!なんて泣きながら腹パンすれば、ごめんな~、なんて困ったように言ってくる。オメー反省してねぇな???

    「衛生概念母ちゃんの腹ン中に忘れて産まれて来やがって~~~!!」
    「こら!女の子がそんなこと言うなって!」

    うるっせぇ~~~~!!!なんてちょっと赤くなった目元を無視して怒り心頭な顔で悠仁の足をけっていれば、今どんな状況?なんて声が上がった。ぞわってした!!ひっそりとこっちに気づかせないような声色だった!!こわッ…

    「こっわ…」
    「え!?ちょ、ごめ、ごめんね!?」
    「必死かよ。ちょっと近づかないで貰ってもいいですか?」

    ササッと悠仁の後ろへと隠れる。さっき殺されそうになったのに!?なんて言っているが君の存在より悠仁の方が安心するっていうか…

    「初対面の人より、殺されかけたとしても親友のコイツの傍の方が安心しますし…?」
    「うそでしょ!?」
    「あと多分こいつは私の友人で親友の(衛生概念皆無の)幼馴染だと思う」
    「へぇ…?それは友人としての希望?それとも確信?」
    「個人的な話だけど、確信に近いかな。変な気配はするけども、それを表に出さないように?してくれてるみたいだし。変な気配はするけども」
    「二回言った!?え、俺の気配っていつもどんなの!?」
    「なんか夏!!って感じ」

    めちゃくちゃ眩しいわって言えばちょっと困った顔された。なんやお前文句あんのか!(脛を蹴る)

    ★★★

    ふわふわの癖のある少女の髪の毛を風が撫ぜるのを見ながら、この任務を請け負ったことを半ば後悔した。
    暫定宿儺の器の後ろに隠れながら、こちらを睨み見るその姿を見て、僕も恵もなるべく顔を見せないようにする。流石に緊急時だというけれど、女性から罵詈雑言はきついものがあるし、接し方ひとつとっても好きにはなれない。女性というものは自分に利益のない時こそ面倒な生き物だと僕も恵も知っているから。
    そう。知っているから、なるべくこの顔を見せないように、気をつけながら行動をとったというのに、まるで僕らのこの行動に嫌悪を表すように眉間に皺を寄せ、首を傾げられたので内心慌てた。もし僕たちの行動であの宿儺の器を渡さないと言われてしまえば、彼女のご機嫌取りをしなくてはならないし、僕も恵もいわゆる不細工と区分される人間だから、説得に時間もかかってしまう。
    困ったようにそう思いながらも彼女の本質を見ようとすれば、彼女は、はぁん?なんて機嫌の悪い声を上げた。こっちの思考が駄々洩れかと思うぐらいにタイミングのいい声色だった。思わず不細工すぎて不評な困り顔をするぐらいには動揺していたけれど、目の前の少女は小さく鼻で笑って悠仁と同じかよ、と声を上げた。そんな彼女に、首を傾げる。と、言うよりもいくら幼馴染だからといってその距離ってどういうことなの!?

    「あぁ、私の場合他の人と比べて美醜感覚が違うんですよ」
    「…は?」
    「この世界のイケメンは不細工だし、この世界の不細工はイケメンじゃん??なんだろ、私の目は正常です」
    「????」
    「異常だと思う」

    宿儺の器―悠仁―に黙ってろなんて少し強めの言葉を吐く彼女に、とりあえずそこは危ないからこっちに来るようにと声をかける。いや、ほんとここで彼女が死ねば僕らが上の腐ったミカン共に怒られるどころじゃない嫌がらせ受けるし。

    「危ない?なんで?」
    「ちょっと彼が本当に宿儺を抑え込められているのか見るため、かな」
    「はぁン?(そういえば十秒ファイトしてねぇもんな)んー、あ~~~…大丈夫そ?」
    「まぁ、多分」
    「君さっき宿儺に殺されそうになっていたから、その、女性に怪我させたら僕らが怒られるっていうか…」
    「そういう事か。おけおけ~」

    ひょいっ、と虎杖の脇から抜け、ゆったりと五条の方へと歩いてくるその姿に、なるべく顔を見せないように努めつつ、九条をなるべく自分の背後へと迎え入れ、五条は虎杖に向けて十秒経ったら帰っておいで、と言葉を投げた。

    「大丈夫、僕最強だから」

    にっと笑った彼を見て、九条はほぅ、と言葉を吐いた。言葉の重みなんてまぁわからないけれど。なんとなく強そうだな、というのはある。綺麗な言葉を投げかけられるより、男のような強気の言葉の方が納得する。

    「すごい小並感の言葉使っていい??なんか強そう」
    「…そうだな」

    ぼんやりとした返答だなぁ、なんて思いながらついっと彼らを見やる。コツ、コツと二回つま先を叩いてふぅと息を宿儺に変わった悠仁と、それを軽くいなす五条。きっかり十秒。カウントを刻み、もうそろそろかな、なんて言ってしっかり制御した裕仁を見てふう、と詰めていた息を吐いて裕仁の名前を呼ぼうとした九条を横目に、五条は虎杖を気絶させた。

    「…誘拐?」
    「違うから!!」

    ☆☆☆

    「は?死刑?悠仁が??なんで???」
    「んー、上の老害達がさァ、彼が宿儺を制御できてるっていう根拠がないから今すぐ殺せーって躍起になっててさ」
    「覆せないんですか?」
    「出来るには出来るけど、君の人権を全部捨ててもいいって言うなら」
    「おっと、闇が出たぞ???」

    どう言うことだってばよ、なんて困惑している彼女を横目に、女性が少ないからねぇ、と声を出す。

    「女性が少ないのと、悠仁の死刑取り消しとどう繋がるんです?」
    「君結構鈍感でしょ?」
    「失礼ですねぇ、この世界のイケメン()と私が思っているイケメンの基準が違うってことは分かってますよ?」
    「んー、じゃぁ、君に女の子のトモダチってどれぐらいいる?」
    「女の子の友達ぐらいごまんと…ごま…?」

    そういえばこの世界女子すくねぇな???なんて思いっきり首を傾げた。
    オカ研の2人は何故か男だったし、学校でも、女子は1クラスに1人いればいい方。圧倒的女子の不足率。両親がいる所はいるけれど、片親の方が断然多いって感じがするし、何故か結婚したら報奨金がある馬鹿みたいな地域まで存在する。

    「んんんん?」
    「あ、今気づいた感じ?」
    「えっ、まって?もしかして私が悠仁の死刑執行辞めてくださいって言ったら叶う感じですか?」
    「うーん、死刑執行は免れないけど、無期限とか出来るにはできるよ。でもそれを言ったら君の自由は無いかな」
    「だから闇深いって~!!!」

    がばっ、と頭を抱えて体を折りたたんだ彼女を見て、とりあえず頑張ったんだけどね、と言葉を出した五条に、九条は、例えば?と尋ねた。しっかり五条の顔を見て。それに対してサッ、と顔を隠した五条に、面倒な人間だな、とつい悪態を着いた九条は悪くないと思う。

    「隠されるとムカつくんでそういうのやめてもらってもいいっすか?悠仁から聞いてると思いますけど、私他の女性との価値観違うんですよ」
    「でも、そういって後から違うっていってくるでしょ?」
    「なにそれウッザ」

    はー、面倒な世界ですこと!なんてお嬢様言葉を使いながら舌を打つ九条に、五条は小さく笑いながら街中では見せられないからね、と言葉を繋いで、それでも見たいって言うなら悠仁に相談して、と声を出す。
    実際彼女は保護対象だ。しっかりと見ていないけれど、術式はあるし、おそらく呪霊が見えている。自分の周りにはあまり興味なんて持っていないようで、悠仁が中心に動いている節もある。

    「(出会ったばかりで生徒になる可能性のある悠仁に対してこんな感情を持ってしまうのはどうかと思うけれど…)悠仁が羨ましいな」

    ボソリと呟いた声に、頬杖を着いていた彼女は小さく笑いながら、うそつき、なんて言ってくる。ふわふわの腰まである髪の毛に思わず手を伸ばして柔らかな髪質を感じながら、本当だよ、と声を出せば、イケメンがそういうことするのはやめてもらっていいですかなんて言葉を出したので思わず笑ってしまった。

    「あー!瑞樹がナンパされてる!!!」
    「ハハッ、残念ながら口説かれてませーん」

    スルッ、と小さな拘束を抜けた髪の毛の感覚を五条の指先に残して、九条は虎杖の方へと向かう。それを見ながら、五条は息を吐いて再度言葉を吐いた。
    あぁ、ほんと

    「悠仁が羨ましいよ」

    ★★★

    「駅弁!駅弁食べたい!!」
    「新幹線アイス!」
    「買ってあげるから早く乗るよー」

    あの後軽く荷物の整理などをした後、九条の家の人間に保護対象になるということを隠しながら、学校の転校の件について挨拶をしに来た五条に、親戚の奴らはブサイクな顔をさらにブサイクにさせながら、私にどうしたいと聞いてきたので笑顔で転校したいです!と答えた。
    まぁ、悠仁が私を残して東京行くのすごく不安だとか何とか言って一緒に高専行こうと言った時は面倒くさくて嫌だと言ったけれど、五条先生から術式あるのに高専に勧誘しないなんて出来ないよ、とかうんたら言われたら行くしかないし。
    悠仁がいなくなったら牽制してくれるやつとかいなくなってしまうから余計にお見合いとかさせられそうだし、それを天秤にかけたら、もう行くしかねぇかなって。

    「それにしても新幹線で個室取るとかすげぇなって」
    「それ俺も思った」
    「まぁ、不快な思いさせる訳にも、通報される訳にもいかないからね…」
    「通報?」
    「あ~…。ありがとうございます」

    かったい新幹線アイスに悪戦苦闘しながらもそう呟いた五条の言葉に首を傾げれば、瑞樹は分からなくてもいいよ、と言ってくれたので再度アイスと格闘することにした。

    「瑞樹、これ美味い」
    「あ、」

    隣でお菓子を食べている悠仁からそう言われたので雛鳥よろしく口を開けてお菓子を強請れば、五条サンと伏黒クンからびっくりした顔でこちらを見てくるので、再度首を傾げることとなる。

    「あー…、こいつのコレは通常運転だから…」
    「うま。悠仁、アイス溶かして」
    「もー、後でもいいじゃん!弁当食べな?」
    「米よりアイスが食べたい」
    「ホントに君人間?」
    「失礼じゃない!?」

    いや、普通はみんな嫌がるから、なんてこの世界での正論を出す五条センセに、えー、と声をあげる。

    「ごめんね、ほら、これも美味しいよ」
    「ん、んー、喜久福じゃん」

    もふ、と口に押し付けられた宮城土産を口に含みながら、溶かしてもらったアイスに手を伸ばす。はー、日本に生まれてよかった!

    「…こわ…」
    「…大丈夫、瑞樹だけだから…」
    「ほら、それ食ったらこれも食っとけ」
    「至れり尽くせり~。幸せ」

    おにぎりのフィルムを取って渡してくれた伏黒くんには私のじゃがりこをあげよう。

    ☆☆☆

    「めっちゃ山ん中じゃんウケる」
    「ごめんねー、歩かせちゃって」
    「モーマンタイ!俺も瑞樹もそれなりに体力あっから!」
    「内心早くベットに倒れ込みたいけどね」
    「分からなくもねぇな」

    はぁ、とため息を着いた伏黒クンを見て、私もため息つきたーい、なんて思う。

    「悠仁はこれから学長と面談。瑞樹はちょーっと大変だろうけれど、上の人たちに顔見せって感じかな」
    「盛大に煽っていい??」
    「やめなさい」

    ペちっと軽く悠仁から頭を叩かれたのでへーい、と言葉を吐いた。

    「悠仁は下手すると入学出来ないかもだから、頑張ってね」
    「えぇっ!?そしたら俺即死刑!?」
    「そういえば必要最低限しか持ってきてないから買い物行きたい」
    「それ今言う!?」
    「えー、どうせ悠仁合格するデショ」
    「…お前の俺に対する信頼度なんなの…」
    「ん?勘」

    逆に俺が入学拒否しそうだから頑張って合格してね、なんて言えば頑張ると言ってくれたのでまぁ大丈夫っしょ。

    「まぁ、瑞樹に関しては入学拒否なんて出来ないけどね」
    「嘘じゃんwwww」

    ☆☆☆

    あの後無事悠仁の面談が終わって現在私の面談である。さて、ここでめちゃくちゃテンション上がること言っていい??
    な、なんと!!!メロンパン入れとなっていた夏油(外道)傑クンが生きてます~!!
    同じ特級で僕の親友って紹介されて思わず泣きそうになった。優しい世界じゃん…。

    「はー、イケメンでありながら筋肉もあるってやっばいね!悠仁といい勝負じゃん」
    「…悟」
    「大丈夫、瑞樹がおかしいだけだから」

    何度目だよ、この会話。なんて思いながら長い廊下を歩く。やだなー、悪魔の巣窟に足を踏み入れたくないなー、なんて思っていれば、大丈夫だよ、と声を貰ったのでまぁ、頑張ろうと思った。

    「どーも、九条瑞樹といいます」

    よろしくねぇ?なんて声を出して中に入れば、シンッ、と元から静かだった室内がさらに静かになった。

    「なんか話せよ声出すための口着いてんだろ」
    「瑞樹、煽らないで」
    「もう少し穏便に…」
    「いや、だってなんか呼吸したら死ぬみたいな感じ出されてるから…」

    生きてる?なんて失礼だと思っても問いたくなるのが人間という訳でして。

    「五条家の孕み袋として生きれる逸材ではないか」
    「いやいや、御三家で持ち回るのも…」
    「ここ数年健康的な女子はおらんかったからなぁ」
    「子を孕む女が見つかること自体奇跡。どうだ、加茂に来るつもりは無いか?歳も近いだろ」
    「いやいや、それなら禪院も歳の近い若造がいるだろう」
    「ウケるwwwwww」

    口開けとは言ったけど、見合いを進めろとは言ってないんだわwwww

    「個人的に顔も名前も知らない人間と結婚する気も恋愛する気もないんで現時点では悠仁と結婚したいでーす」
    「宿儺の器とだと!?」
    「正気か貴様」
    「やつは死刑だと知らんのか貴様」
    「貴様、貴様ってうるさいんですよ~。私には九条瑞樹と言う名前があるんですぅ〜。無作為に子を孕むために生きる女でもないんですわ。お前らが顔を見せろって言ったから五条センセのメンツ潰れないようにしてるだけで、私はてめぇらが必死になって探してる体のいい母胎じゃねぇんスよ」

    そう言ってコツ、と1回つま先を鳴らす。
    ふわふわの髪が、体内の呪力と共鳴して靡く。呪力量は申し分無し。まさかここで覚醒してくるとは、なんて思いながら五条と夏油はぞわりと背筋をふるわせる。

    ーーーあぁ、美しい。
    なんて。どうしても思わずにはいられなかった。

    「私は私の生きたいように生きて、死にたいように死ぬ。そこに子を成そうが成さまいが、君らに関係ある?人を人として見ない君らに、私を扱う権利なんてこれっぽっちもない。私は、九条瑞樹だ。あんたらの私利私欲のために汚していい名前でも、安い体でもないんだよ!バァーカ!!!」
    「んっ、ンンッ…!」
    「きゃー!カッコイー!」

    最後はちょっと子どもっぽいけれど、それでもこの目の前の老害共相手に高らかと声を出せたのは、とても凄いことだ。傑なんてギャップでテンション上げてるし、女子が苦手だったけれど、彼女だったら、僕や傑達をきちんと知って、愛してくれそうな感覚がする。この界隈には無知であるけれど、それとこれとはまた別だ。いいね、なんて声を出して、彼女を後ろへと下がらせ、老害共に残念だったね、と声を上げた。

    ちょっとカッコつけるぐらい、してもいいだろ?

    ★★★

    「瑞樹の術式は言霊…いわゆる〝呪言師〟の可能性があるんだよね」
    「ジュゴンシ?」
    「おや?結構曖昧だね。どうしたんだい?」
    「流石に不躾に見るのは憚られるだろうし…宿儺の指を食べた後に受肉した悠仁に、起きろって言っていたから、ひとつの可能性として、って感じかな」
    「えっ、何、五条センセ相手の術式分かるんですか?」
    「んー、まぁ、しっかり見れば、だけど…」

    なら今見た方がいいんじゃないですか?なんて言って、両手を広げて見えます?と言ってくる彼女に、頭を抱えてあのね、と言葉を吐いた。

    「見てもいいけれど、僕の顔に不快感を持ってしまう可能性もあるし、流石にその…女性をジロジロ見る訳にもいかないでしょ?」
    「別に自分の術式知ってもらうために見てもらうだけですし、個人的には何とも…。あと、五条センセ絶対イケメンなので私の心臓が強い今ならイケるかなって」
    「僕瑞樹の感性がわからないよ…」

    分んなくても良いんではよして。そう言って少し拗ねたような顔で言った彼女に、困ったような雰囲気を出して、気持ち悪くなったら言うんだよ、と一言付け加える。
    あーあ、初日から嫌われるのは嫌だなー、なんて思いながら震える指先を叱咤して恐る恐る目隠しを外す。ひぇ、なんて言葉が聞こえた。

    「えっ、まってセンセめっちゃ目ェ綺麗じゃん。ひぇ、イケメン。やばやばやばのやばたにえん。私の顔見ないで。やっば!!!」

    きゃー、なんて悲鳴じゃない悲鳴にポカンとしていれば、待機していた悠仁が、慌てたように駆けつけて五条先生目隠しして!なんて怒られた。えっ、まって今なんて言った???

    「瑞樹こう見えて目フェチなの!!だから先生もう瑞樹の前で目隠し外すの禁止!!ダメ!」
    「ひぇ…無理。めっちゃ綺麗だった。油断してた。もう俺の心のライフはゼロだわ。クリティカルヒットした…俺もう今日で死んでもいいわ」
    「死ぬならお前の心臓は俺が食べるから」
    「いつからお前は食人鬼になったん?ねぇ、情緒大丈夫??」

    ぱっ、と少し頬を赤らめた瑞樹に、え、と声を出す。巷(呪術師界隈)で噂のセルフ無領空処したような、いつまでも情報が完結しない感覚。

    「ふふッ…」
    「傑ッ!!!!」

    漏れ出た笑い声で現実に戻された。びっくりしたー!!なんなの!?君よくそんなんで生きていけたね!?人よりも違う価値観だから生きていけてたのか!?なんて。心臓がドクドクと脈打つのを必死で押えながら、顔を隠して、でもそうか、と悠仁の言葉まで反芻して、冷静になる。

    「ふふ、瑞樹は目フェチなんだね。僕の目は好き?」
    「ひぇ」
    「ちょっと!!五条先生!!」

    ギャンッ!と幼なじみを取られないように庇う悠仁をからかいながら、ごめんね、と言葉を投げる。あぁ、無理だ。生徒だから、とかそういうの関係なく、僕はもう彼女が僕と一緒の未来を歩んでくれたらな、なんて思ってしまったじゃないか。

    「(まさか出会って数日もしない人に惚れられるなんて、瑞樹も悠仁も思ってないんだろうな…。いや、悠仁はきっと分かっているんだろうな)ふふ、悠仁、ごめんね」

    そう言ってゆったりと瑞樹を視線に捉えながら目を細め、目隠し用の布からサングラスへと変更した僕に、いくら先生だからって瑞樹はダメ、なんて言葉を吐く彼に今度こそにっこりと笑った。

    ☆☆☆

    「ひゃー、びっくりした。先生の目が綺麗すぎてテンション上がったー」
    「お前もうほんと声出さないで!!」
    「理不尽すぎでは?」

    俺の目だけ見てて、なんて言えば、瑞樹はトロリとした若草色の瞳を見せながら、悠仁のハニーオレンジに勝てるやつなんて居ないよ、と笑ってみせた。
    瑞樹と俺の出会いはあまりにも偶然だった。不細工と罵られて、しんどくなっていた時期に現れた天使みたいな子。九州の田舎から一身上の都合で引っ越してきた彼女は、パーカーで顔を隠して生きていた俺の隣の席に座ったあと、よろしくねぇ、なんてのほほんと笑って俺の顔を見てくれた唯一の人。
    彼女の存在はあまりにも眩しくて、教科書がないからって隣にクラス1イケメンの奴がいるのに、俺の方に机を引っつけて、見せてって言ってくるし、帰り道が俺の方家から少し遠いけど、一緒だと聞いて、毎朝迎えに行っても嫌な顔せず、行きも帰りも一緒にいてくれた。
    パーカーで顔を隠していた俺の顔を見て、綺麗だと、かっこいいと言ってくれた。それだけでこんな汚い世界から彼女を一生守ろうと、俺は心に決めたんだ。

    「悠仁の目は綺麗だね。蜂蜜みたい」

    ゆる、と笑った彼女の言葉が、小さくなっていた俺をすくい上げてくれたから。だから…

    「五条先生でもだめ」

    浮気しないで。なんて、今は言えないけれど、それでも瑞樹を奪うのは、許さない。そんな俺の言葉を聞いて、若いねぇ、なんて言っている隣の前髪の先生も敵だって思った。瑞樹は綺麗なものが好きだから。だから、ダメ。

    ☆☆☆

    「風影呪法?」
    「そ。瑞樹の術式の名前だよ。風と、影を使って呪霊を倒せる。術式の解釈次第では他を圧倒できるだろうね」
    「瑞樹すげぇな!」
    「風と、影かー。なんか思考が散らばりそう」
    「器用貧乏にならないように満遍なく術式の解釈を広げでいこうね」
    「はぁい」

    とりあえず自分と悠仁の影の中を行き来できるようにしたいな、なんて思った瞬間ずるっ、と体が沈んで、急いで出口であろう場所へと向かえば何故か悠仁の影からでてきた。まって????

    「びっ、くりしたァ…」
    「俺が!!!1番びっくりしてるから!!!」
    「えっ、まって何したの!?」
    「いや、普通に自分と悠仁の影を行き来出来たら楽だな、と思った次第でして…」
    「ほんっといきなりはやめて!!!!」
    「ばっか!!俺だって予想外の出来事だわ!!!」

    ☆☆☆

    「どうも、釘崎野薔薇」
    「わっ!わっ!!!野薔薇ちゃん?野薔薇くん??すごい綺麗!可愛い!!私九条瑞樹!!ねぇねぇ、コスメどこの使ってる?リップ可愛い!マスカラ赤色だ!すっごく似合ってる!ねぇ!LINE教えて!」
    「瑞樹!!!!!」

    ☆☆☆

    波乱の顔合わせから翌日。何故か私だけセキュリティ抜群の場所へと案内されました、九条です。今日は4人目の子を迎えに原宿まで来ているんだけど、周りの目線がすごく痛い。なんかこう、不躾な目線が多くて思わず眉間に皺を寄せた。

    「…私の服が変なのか?」
    「え?俺は可愛い、と思う。けどちょっと露出が高いかな」
    「悠仁~!!」

    そんなにサラッと褒めないでよ~!なんて言いながらギュッギュッしていれば、目の前に伏黒クンが壁になってくれた。あざっす!

    「ねぇ、かーのじょ。こんなヤツらと一緒にいるより、俺と一緒に遊ばない?」
    「………(うっっっっっわ!!!!ブッッッッッサ!!!!!)ごめんねぇ、私ナンパしてくる男嫌いなの。あと今学校の実習中なのにそれほっぽって遊ぶの?バカじゃん」

    お呼びじゃねぇんだよな~!!!なんて。つーかよく来れたな???壁になってくれてんのによく来れたな???なんて思いながらサラッと煽っても、ご、ごめんね?なんて言って立ち去る男を横目に頭を抱えた。

    「無理」
    「おー…瑞樹の嫌いな要素3コンボじゃん」
    「マジでむり。あー、やっぱ目の保養にするなら悠仁たちの方がいいわー」
    「…俺がおかしいのかお前の目がおかしいのか分からなくなる…」
    「瑞樹ほんとこういう所あるから」

    たまに俺ももしかしてって思うけど、現実は違うから気をつけろよ、なんて言ってくる悠仁に、この世界はほんと面倒だな、と思った。

    「おまたせー。おっ、悠仁も瑞樹も制服間に合ったんだね」
    「今日朝渡されましたー」
    「俺もー」
    「今日は遅刻しなかったんですね」
    「流石に瑞樹がいるからね。さっきナンパされてたみたいだけど…。あと瑞樹は可愛いけれど、ちょっと露出が高いね…」
    「可愛くない?個人的にソックスガーター見せたくてこれにした」
    「瑞樹、お前……」

    パチーンとソックスガーターを引っ張って音を出せば、そういうのやめてってば。なんて悠仁に言われたけど、ニコッと笑って可愛いでしょ、と言う。かわいいは正義だ。可愛い格好さえしていれば、何を言っても許される感あるし。ちなみに服装はスカートだと動きにくいから悪魔で執事の坊ちゃんが豪華客船で着ていた服装のモノクロバージョン。首元のリボンがワンポイントですね!

    「うーん…可愛いけれど、他の人の目線があるからダメかな。悠仁たちの心の安念のためって思ってそういう服装は我慢してくれないかな…?」

    あと僕のためにも、なんて言われて首を傾げる。可愛いのはいいけど、ダメなのか。ちぇ。

    「えー、じゃあ五条センセが勝手に決めていいよ。スカート以外なら特に気にしないし」
    「えっ!?」
    「瑞樹、俺と決めよ?7分のズボンで考えるから…」
    「あ、じゃあオソロ!パーカーオソロっちしよ」
    「んー、流石に瑞樹はパーカー要らねぇっしょ?」

    えー、じゃあ適当に決めといて、と言っておく。自分で要望出すの面倒だし。個人的に動きやすいならなんでもいい。そう思いながらボーッと足元眺めていたら悠仁がタピオカ買ってきてくれたので有難く飲む。

    「そういえば呪術師が4人って少ないね?」
    「それだけマイノリティなんだよ」
    「あの~、私こういうものなんですけど~」
    「…………。あ、私か!!」
    「えっ、はい!そうです。どうですか?お話だけでも」
    「興味無いんで~」
    「いえいえ、そんな勿体ないですよ~」

    ボーッと悠仁達の掛け合いを聞いていれば横からヌルッと現れた人にびっくりして2度見してしまったじゃん。ぜひこれもご縁だと思って~なんて言ってくる芸能プロダクションの人の名刺を見ながら、悠仁に目配せする。ひっ、と私の後ろを見たそいつが悲鳴をあげたのをいいことに、にっこりと笑って、一歩下がって、悠仁の腕に自分の腕を絡めて、優しく言ってやるのだ。

    「私、人よりも審美眼がズレているので」
    「…ちょっと」
    「えっ!?」

    まさか悠仁と思っていた腕が野薔薇様の腕だなんて誰が思うかって話だけどね!

    そうして冒頭に戻る。
    男じゃなかなかメイクをしているやつなんて居ない。ましてやこの世界で釘崎の全面的に不細工に寄せるそれは許されるわけが無い。けれど、けれど、だ。それをかっこいいと言わしめる人物がここにはいる。

    「アンタ、見どころあんじゃない。今度デパ地下行きましょ」
    「いく!」

    そう返事をした瞬間素早く虎杖は荷物持ちに立候補した。
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