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    しおん

    @GOMI_shion

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    しおん

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    『青色、夏と逃避行』-コハクの後日談②-

    ##TRPG後日談

    カミサマとの約束は年に一度の村中の人が集まる大規模な祭り。今年もその日がやって来た。
    「やっと来たか、早く行こうぜ〜!」
    祭りに一緒に行く約束をしていた結弦、凛咲、響輝が、浴衣姿で待ち合わせ場所で僕が来るのを待っていた。もちろん僕も浴衣を今年は着た。
    「待たせてごめん。」
    みんなの所まで急いで駆け寄る。こう見ると、いつも遊んでた人の人数減ったな…。ひまりは去年のこの日神への生贄になり、小夏は病で去年亡くなった。たった2人が居なくなっただけで喪失感がかなりある。…2人が居なくなったって思ってるのは僕だけだけど。
    「まずどこ行く?」
    響輝がそう問うと、凛咲が手を挙げた。
    「射的!」
    去年と全く同じだ。凛咲の意見で射的をしに行くことになり、また去年と同じように結弦がいい調子で景品を落としていく。その後凛咲も挑戦するが、全く景品をおとすことができずに射的の屋台を担当しているおじさんを狙おうとする。平和な楽しい、友達との時間だ。楽しむみんなを見ていたら、ふと見た事のあるコート姿の男が後ろを通った。
    「…長谷川……!」
    反射的に声を出して名前を呼んでしまったが、本人は気づいていないようだ。あいつがなんでここに居るのか気掛かりでしかない。去年、海山芝葦倉神とした約束があるから誰も生贄にはならないと信じたい。だが嫌な予感がする。
    「ちょっと行ってくる。」
    「え?おい!どこ行くんだ!」
    長谷川を放ってはおけない。あいつだけは捕まえないと。あいつだけは殺さないと。祭りを楽しむ人々の群れをかき分けながら、走って長谷川を追う。人が多すぎてどこにあいつがいるのか分からない。見失ってしまった。
    「…クソ…!!」
    小声でそう呟いていると、目の前に誰かが立ち止まった。
    「おぉ猫羽〜お前も来てたのか。」
    笹本先生だ。そういえば笹本先生は長谷川の友人だったような…。
    「足止めですか…?」
    「うん?何言ってんだ?そんな事よりみんなはどうした、あ、さては迷子だなー?」
    「話を逸らすな!長谷川は、長谷川は今どこにいる!!」
    そういうと笹本先生は何も喋らなくなった。喋らない笹本先生を無理矢理退け、再び長谷川を探した。

    探し始めて1時間ほど経った。全く見つからない。下駄で走ったせいで足が痛い。もう走れないなと思い、1度休憩する為に神社の階段に腰掛けた。スマホの画面に目をやると、凛咲達からの何通ものメッセージや不在着信が届いている。申し訳ないことをした。お詫びのメッセージを全員に送信する。

    { さっきはごめん。やらなきゃいけないことを思い出した。今日は僕のことは気にしないで、みんな楽しんで。

    そう送ってスマホの電源を切り、神社への階段を登った。

    この神社は相変わらず静かだ。空を見上げると、大きなまん丸の月が浮かんでいる。あそこに行けばきっとあいつが居る。本当は1人で行くのは怖い。だけどみんなを巻き込みたくない。
    僕は“あの世界”へ向かう為、そっと目を閉じた。

    目を開けると、前に来た時は踏切の前に居たのに神社に着いていた。なにも変わっていないのかと思ったが、さっきまでいた時間とは違い夕暮れのようだった。ちゃんと来れている。辺りを見渡すと、誰もいない…と思ったが長谷川がいた。長谷川の横には、何人かの幼い子供の死体が積まれていた。…もう全てが遅かった。何かをこっちに言おうと口を開こうとする長谷川を無視して神社の奥に走る。神に直接、言うこと言わないと。後ろで「待て!」と叫ぶ長谷川を他所に、僕は海山芝葦倉神に会いに行った。

    「おや、コハク…だっけか。久しぶり。」
    呑気に神は笑っている。僕はそんな神に近付き、気付いたら無意識に胸ぐらを掴んでいた。自分でももう自分を制御出来ない。
    「話が違うじゃねぇか!約束はどうした!!」
    神は笑顔を崩さないまま返事をした。
    「約束?なんの約束をしたんだっけね?」
    「…は?しただろ、去年のこの祭りの日!もう生贄は出ないようにするって!ひまりと翠の命を…今までお前のせいで犠牲になった命を無駄にしやがって!!」
    そう言うと笑顔だった神は真顔で僕を振り払った。
    「その約束を覚えてるなら言ったはずだよ?生贄が無いと、君たちの村は危ないって。」
    「生贄が無くても大丈夫にするって約束だっただろ!?」
    少し間を開け、振り払われて地面に座りっぱなしになっている僕にしゃがんで近づいてきた。
    「君も“神”なんだから、そろそろ分かってくれ。」
    「僕はお前みたいな神にはならない!!!僕は誰が何と言おうと人間だ、普通の人間としてあの村で友達と過ごして、普通の人間として死ぬ。僕を勝手に、神にするな!!」
    そんな事言われてもなぁ、と神は困ったような顔をした。そんな顔に腹が立ち、僕は思わずその顔を殴った。
    「…………そこまで私に歯向かうのか。」
    流石に怒ったようだ。殴られた頬を触りながら睨みつけてきた。
    「当たり前だ、最初からお前に従うつもりは無い。」
    そんな事言いながら僕は恐怖で震えていた。神に怒られるのが怖いとか、殺されるかもしれないという恐怖ではなく、今自分がしてしまった事のせいで村が危なくなってしまったらどうしよう、そう言う恐怖心だ。
    「そうか…残念だよ。考え方が改まってから、またここに来るんだね。」
    神がそういうと、僕は強制的に元の世界へ戻されてしまったようで、夜の学校の前に立っていた。悔しい思いで胸がいっぱいだ。また長谷川を止めれなかった。神相手に何も出来なかった。結局何も得られなかった。
    「残念だったね、コハクくん♪」
    嘲笑うかのように、背後で長谷川が笑っていた。
    「あ、不審者…。」
    「その呼び方やめろ。」
    僕はゆっくり立ち上がり、万が一の為に持ってきていたナイフをバレないように手に取り、背中に隠しながら長谷川に近づく。
    「まだ諦めてないんですね。ゆずさんの事。」
    「そうだね、君こそまだ諦めてないようだね。」
    もう手の届く距離だ。相手はすっかり油断している。
    「そりゃ諦めませんよ。あの神が憎いのもそうだけど…1番許せないのはお前だよ長谷川。」
    僕は勢いに任せて、長谷川の腹部にナイフを突き刺した。その勢いに負けて長谷川は倒れ込んだ。
    「お前!なにを…!」
    刺す手を抜こうと抵抗するのを押さえ込み、馬乗りになって何度も何度も刺す。刺しているうちに長谷川がピクリとも動かなくなった。それでも僕は、全ての恨みの気持ちを込めて刺し続ける。
    「猫羽!!何してんだ!!!!」
    後ろから笹本先生が駆け寄ってきた。でもそんな事どうでもいい。もう僕にはこの手を止めることが出来ない。こんなことして自分がこの先どうなるのかなんてどうでもいい、ただ友人や家族には申し訳ないが、僕はこの世にこいつさえ居なければ、それで満足だ。
    「やめろ!もうやめろ!!」
    笹本先生が手を押えて止めてきた。その声に気付いたのか、周りの人達がこっちを見に来た。警察に通報する者やスマホのカメラを向けてくる者がいる。その中に、大切な友人たちも、絶望したような顔でこっちを見ていた。そんなみんなを見て、こんなことをしたことに少し後悔してしまっている自分がいる。

    みんなともっと一緒に居たかったな。

    そう思いながら、僕は大人しく警察に連れていかれた。パトカーに乗る際、結弦が必死に話しかけてくる。
    「なんで人殺してんだよ!?なんかあったなら言ってくれたらよかっただろ!」
    「言っても信じて貰えないと思って…ごめんね、そうだ、母さんに伝えといて、翠にはこれからもご飯作ってあげてねって。…ばいばい。」
    まだ何か言いたそうにこっちに近付こうとする結弦を警察が止めている。それに抵抗する声を聞きながら、僕はパトカーに乗った。

    “お兄ちゃん、なんであの人を殺したの?”
    幻聴だろう、弟の翠の声が聞こえる。
    「あの人が翠を殺したからだよ。」
    “僕、殺されたの?”
    「そうだよ、だから翠はもう居ないんだ。それに僕は捕まっちゃったから、もう一緒にゲームも出来ないね。」

    ………………………

    あれから何日経ったんだろう。僕は今留置所に居る。一応釈放される日は来るらしい。
    だけど、もしされたとしてもみんなに合わせる顔がない。会いたい人も別に居ない…。
    僕が会いたいのは、弟だけだ。
    僕は密かに毛布を切って作っていた紐をロープ替わりにして、取っ掛りのある部分にそれを結び、紐に頭を通す。
    「翠、今会いに行くよ。」
    これでまた、一緒に過ごせるね…。凛咲、響輝、結弦、もうみんなには会えないよ。ごめんね。

    僕は覚悟を決め、首を吊って自殺をした。
    次生まれる時は、あんな村とは違う、全員が幸せになれる場所で生きたいな…。

    ……………………………

    …今更もう遅いのは分かってる。
    僕は、死んだことを後悔している。もう、みんなに会えないから。死ぬ前は誰とも合わせる顔がないから、会いたい人は居ないって思い込ませて強がってた。だけど…やっぱり僕は、みんなに会いたい。死んでも翠には会えないじゃないか。ただ僕は、あの神の所にいるだけ。何もいいことなんてなかった。最後に見た結弦の顔を思い出す度、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。どうして話を信じて貰えないって勝手に決めつけて何も相談しなかったんだろう。みんなならきっと寄り添ってくれたはずなのに…。本当に僕は馬鹿だなぁ…。今思えば、あんな良い人達他に居ないだろうな。

    翠の無邪気なところが好きだった

    凛咲の優しいところが好きだった

    響輝の仲間想いなところ好きだった

    小夏の明るい笑顔が好きだった

    ひまりの面倒みの良さが好きだった

    結弦の元気の良さが好きだった


    もう会えることがなければ、話すことも出来ない。それでも僕は、未だにみんなを見守ってるとき、つい話しかけてしまうことがある。…そして今も、神社で泣いている結弦に、届きもしない声をかけている。
    「…ごめんね、ごめんね。」
    僕のせいで、辛い思いをさせてごめんね。今更僕の勝手な行動を許して欲しいなんて思わない。彼の泣いている姿を見ていると、後悔の気持ちが強くなる。
    「また様子を見ているのかい?」
    海山芝葦倉神が話しかけてきた。
    「うん、僕のせいで泣かせちゃった。」
    「ふぅん…。」
    興味無さそうに横に並んで結弦を眺める。
    「“僕のせい”ねぇ…でも君が死んだのは誰のせいだい?弟だろ?」
    「は…?なんで翠のせいになるんだよ、お前のせいだろ!」
    「おぉ…人のせいか…。」
    「元はと言えばお前が約束を守らなかったのが悪いだろ!?」
    「はいはい悪かったねぇ〜。」
    今ではもうすっかり、この神と口喧嘩を軽くするのが日常になっている。ある意味平和に過ごせているのが、辛い思いをさせているみんなには申し訳ないけど、僕はもうこう過ごすしかない。もう生き返ることなんて出来ない。だから僕は、この生活を受け入れて、みんなのことを見守り続ける。
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