マクミラン・エステート/コール・タワー
儀式開始を告げる音が聞こえてジェイクが辺りを見回すとそこは建物の中だった。
どうやらエース・スティーブ・デイビッドも同じ場所からのスタートのようだ。
「はぁ〜久し振りの儀式だぁ……おじちゃん緊張しちゃうなぁ…」
着け慣れていない眼帯をいじりながらエースは大きく息を吐いてそう呟いた。
「嘘つけよ、オッサン」
言葉とは裏腹に口角が上がりっぱなしのエースを見て思わずデイビッドはツッコミを入れた。
「久々の儀式なのに眼帯とかハンデだろうが」
「だってこの服カッコ良かったんだもーん、見てよ『エース』パイロットなのよっ」
エースは無邪気にドヤ顔でポーズを決めてみせた。
「……あーぁ、マジでやんのかぁ…」
くるくると帽子を指で回しながらスティーブは天を仰ぐ。
「おっ、スティーブちゃん良いねぇその衣装!水兵さんみたいで可愛いねぇ」
「ははは…バイト先の制服だよコレ。スクープス・アホイって名前のアイスクリーム屋なんだ」
ノリノリのエースに苦笑いしつつスティーブは手にしていた帽子をやれやれと被り直す。
「ていうかデイビッド、すっげぇなそのカッコ…」
「仮装っぽいヤツって言われたからな…本気出しちまったぜ。まぁ、この森に来てから海なんて一度も見てねぇけどな」
水着に目立つ赤いジャケットを素肌に羽織ったデイビッドの格好はさながらビーチのライフガードだろうか、適度についた筋肉のおかげでとても様になっている。
「きゃー、デイヴちゃんカッコいい〜っ!!」
エースはそんなデイビッドに遠慮なく抱きつき、若い娘のようにはしゃいでいた。
「おいヤメロ、離れろよオッサンッ!!」
これから殺人鬼と命を賭けた脱出劇を繰り広げなければならないというのになんだか和やかな空気が流れていた。
まるでこれからお菓子を貰いに練り歩く仮装した子供の様に、なんとなく漂ったハロウィンの空気に皆酔いしれていたーーーそう、ある1人を除いては。