「でも煽るってどんな…」
「そりゃあもう『色仕掛け』に決まってんでしょ〜、せっかくそんな素敵なパジャマ着てんだし」
「……は?」
間髪を入れずにとんでもない事を言い出すエースにジェイクはいよいよもって頭が痛くなる思いがした。
「前々から思ってたんだけどジェイクちゃんのその衣装ってさ無防備だよねー、どう見たっておウチでくつろぐ格好じゃん?ちょっと着崩して艶っぽい言葉吐いたらどのキラーだって追いかけ回してくれるって」
「オイ待てエース、アンタ何言って」
「『罰ゲーム』だもーん、ちょっとは恥ずかしい思いしなきゃ罰になんないでしょ〜」
自分に非があるせいだろうか、エースの吐く暴論も微妙に正論の様な気がしてジェイクは言葉を詰まらせた。
「……なぁ、でも艶っぽい言葉は無理だぞ…煽るんなら『殺せるもんなら殺してみろ』くらいで良いだろ……」
このふざけた提案を全部呑むわけにはいかない。
何処かで折り合いをつけたいジェイクは呻くように呟いた。
「あ!じゃあハロウィンに因んで『メメントくれなきゃイタズラするぞ』ってのはどうよ?」
「いいなソレ、最高の煽り文句じゃねぇか。ついでにフックも落としちまうか」
スティーブの発言に同意しつつ、さらにハードルを上げるデイビッド。
お前ら他人事だと思って絶対楽しんでるだろーーーとジェイクは心の中で盛大に恨み言を唱える。
「……オッケー、分かった……色仕掛けで、フック落として、煽り文句……それで良いな?」
これ以上ふざけた条件をつけられてたまるか。
ジェイクは覚悟を決めたように息を吐くと愉しげな3人をジロリと睨んだ。
「つーか、ここまでやるんだからちゃんとこの儀式でハロウィンしろよな……何戦もやるとか俺は嫌だぞ…」
乱雑に伸びた髪を緩く掻き上げジェイクは懐中電灯の電池残量を確かめる様にカチカチと点灯させる。
「大丈夫よ〜、ジェイクちゃんの犠牲は絶っ対に無駄にしないからねっ!!」
大仰に敬礼をして見せるエースにもはや乾いた笑いしか出てこないジェイク。
「死ぬの確定させんなよ……ったく。じゃあ、まあ、……ぼちぼち始めるか。スティーブ、デイビッド…オッサンのお守りは頼んだ」
「気をつけろよ、ジェイク」
「通電ゲートで会おうぜ」
気遣う2人の声を背にジェイクは建物の外へと向かった。