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    みちとせ🍑

    基本小説は支部 ここは短めのものあげる時とかに使う

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    みちとせ🍑

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    オリアカワンドロワンライ 司馬懿
    タイトルが全てのわちゃわちゃ落書き。
    張郃さんと清河卿が「いや、今まで司馬懿さんに振り回されたんだから少しくらい此方が振り回してもいいのでは?」と監修:張郃、実行:清河卿で色々試してみる話。

    司馬懿はどこまで許してくれるのかチャレンジ「主サン、今時間あるっすか?」
    「ぎゃーっ!?」

    それは清河卿が眠い目を擦りながら清河郡の執務室で雑務処理をしていた時であった。最近すっかり暖かくなって春らしくなってきたなあ、と頬杖をつきながら外をぼんやりと眺めていると、突然そこに逆さまの人間が振り子の如く舞い込んできたのである。夜という事もあり、それが誰なのかすぐに気付くことが出来なかった清河卿は反射で思わず素っ頓狂な悲鳴を挙げる羽目になったのだが、帝剣を抜く前に蠟燭の灯りが届くところまで近付いてきた事でようやく正体に気付く事ができた。

    「主サンてば、ぎゃーって叫び声はちょっとありきたりすぎるっす。もうちょっときゃ~! とか可愛い悲鳴を出してくれると脅かし甲斐があるっすよ」
    「訪問の仕方が明らかに私の寿命を縮めに来ているんですが……何か急用ですか? 張郃さん」
    「急っていうほど急ではないっすよ。ほら帝剣しまったしまった」

    扱いが雑……と清河卿が何とも言えない表情で帝剣に添えていた手を離せば、張郃もまた纏っていた空気を緩ませる。お互いに戦場への慣れがどうしても出てしまい、相手が武器を握っているとつい警戒心が顔を出してしまうもので。癖というものは怖いものである。

    「それで、急というほど急では無い用事ってなんですか?」
    「ほら、明日には魏から司馬懿サンが休暇も兼ねて主サンに書簡持ってくるじゃないっすか。絶好の機会っすよ」
    「ええ?」
    「司馬懿サンがまさか本当の本当に天刑宗ではなくて魏のために行動していた、って知るまで俺と主サンはだいぶ振り回されたじゃないっすか。その分俺と主サンも、少しくらい司馬懿サンを振り回していいんじゃないかって!」
    「わあ、一理あるにはありますね」
    「何すかその珍しく~って言いたげな顔」

    要するに張郃は迷惑をかけられた分だけ迷惑をかけかえしておこう、と言いたい訳だ。清河卿としても正直、魏の動乱に巻き込まれてしまった分の謝礼が欲しかったところである。

    金銭的な礼をしてくれという事ではなく、兄弟喧嘩やら親子喧嘩やらであちこち励まし続けていたのでそろそろ溜まりに溜まった気持ちを何処かで解き放っておきたかったのだ。そこの曹丕さんと曹操さん、目を逸らさないでくださいね。こら、コオロギ合戦で有耶無耶にしない。生前から言葉が足りないんですよあなたたちは~!!!!!!!!! と声を大にできるのならどれだけ良かった事か。

    それから天刑宗への嫌い値が常に限界突破している清河卿にとっては、司馬懿が魏国の味方なのか天刑宗側なのかで最初から最後まで振り回され続けた事に対しての胃痛も中々のものであった。正直此方の方が途中まで大きかったし、出来れば天刑宗の仲間ではないと少しくらい示してほしかったもので。実際諸々が終わったあと曹丕が開いてくれた宴の最中に清河卿は司馬懿にその旨を伝えたのだが、

    「フハハ、主よ。まだまだ頭の使い方がわかっていないようだな」

    との事である。流石に頭に来た清河卿は魏を発つ前、曹操に「司馬懿さんが曹操さんと囲碁を指したがっていましたよ」とでっちあげて来たのだった。司馬懿の性格だ、忖度囲碁はさぞ楽しく無かったことだろう。ちなみにこの話を聞いた張郃は今、清河卿の目の前で手を叩いて笑っている。

    「道理で司馬懿サンが連日げんなりしてた筈っすよ。ははっ主サン最高、」
    「で、振り回すって言っても何をするんですか?」
    「こう見えても色々考えてきたっすよ、例えば……」

    もしここに星辰がいたのならば、きっと張郃と清河卿の作戦会議を呆れ顔で聞きながら口を挟んでくれただろう。しかし悲しいかな、星辰は暫く家に帰っていて清河郡に居ない。当初の目的は司馬懿を振り回す事だった筈が、いつの間にか議論は「司馬懿はどこまで許せるのか、また、司馬懿はどこから怒るのか」にすり替わっていたのであった。

    これは、当初の目的を見失った張郃と清河卿が「色々苦労をかけられたので」を免罪符にして司馬懿の行動を見守った実録ドキュメンタリー番組で──そんなわけがあるか。

    ◇ ◇ ◇

    作戦一:史上最高に下手な茶を淹れる

    「お久しぶりです、司馬懿さん。お元気そうですね」
    「主も健在のようで何よりだ。背は相変わらず伸びていないようだがな」
    「司馬懿さんでも怒りますが???????」
    「フハハ、冗談だ。測定してみれば少しばかりは伸びているかもしれんぞ」

    相変わらずだなこの人、と思いながら司馬懿を客室に通す。ほんの五日ばかりの滞在とは聞いたが、初っ端から身長いじりとは全く恐れ入る。

    それもこれも三国の武将たちがみな揃いも揃って高身長なのが悪い。あとは曹丕との親子関係が些か改善した事で父親の顔をしている曹操が司馬懿もいる場で清河卿に「しかし清河の主よ、おぬしは何年経っても姿かたちが生前の記憶と寸分違わぬな。背は伸びたか」なんて言うのが悪い。それについては、っと噎せていた曹丕と司馬懿、あとその場に居合わせた曹仁の全員をやや恨んでいる。高身長どもが。

    「じゃあ、茶を淹れたら私は頂いた書簡の方を処理してきます。司馬懿さんはまあ……酒蔵に行くなり城下を視察するなり、ご自由にどうぞ。今度飲むと行って置いて行った酒ならちゃんと取ってありますから」
    「ああ」

    とぽぽ、と慣れた仕草で茶を注いだ清河卿は書簡を掴むなりそそくさと部屋を後にした。

    「お疲れっす主サン」
    「注いだけど、司馬懿さん流石にこれでは怒らなさそう……?」
    「まあまあ、飲んでからのお楽しみじゃないっすか?」

    そう、実は今清河卿が注いだ茶は普通の茶ではない。張郃が適当に茶葉を組み合わせた何とも言えない味の茶である。試飲はしたが、清河卿的には史上最高に不味い茶であった。怒られる事を想定してこの三日間、清河卿は予め変装術の応用で張郃が施してくれた「いかにも寝不足で頭が回っていなさそうな化粧」でいざという時の為の予防線を貼っている。さあ、茶で司馬懿は怒るだろうか。予想としてはまだ張郃も清河卿も怒らない、を選択している。

    「お、」

    襖の向こうで司馬懿が湯吞を手に取り──

    「っ」

    一口含んだ瞬間、硬直した。ぴたりと動きが止まっている。司馬懿の周囲だけ時間が止まってしまったかのように見えたが、湯吞を持つ手は微かに動いていた。唇から湯吞が静かに離れていく。

    「怒って……」
    「無さそう、っすね」

    作戦一、検証終了である。死ぬほど嫌そうな顔で湯吞に入った茶を眺めているが、二度ほど深い溜息を吐いた後にちゃんと飲み干している。流石司馬懿、食料品を無駄にはしない。少しばかり清河卿の中で司馬懿の株が上がった直後であった。

    「あれは茶葉の見分けもつかないほど頭が悪かったか……?」

    上がったばかりの株は驚くべき速さで急降下し、誤解を解くべく司馬懿に全てを話しに行ってしまいそうな清河卿を必死に張郃が引き留めるのであった。

    ◇ ◇ ◇

    割れたら物凄くうるさい皿を朝っぱらから割る。
    ※張郃の指導のもと、破片が飛び散らないように加工を施した皿を使用しています。良い子の武将たちは真似しないでください。

    司馬懿の気に入っていた銘柄の酒だけ切らしておく。
    ※持ち込まれていたものは除く

    銀屏が清河郡にも何匹か住ませている兎を昼寝中の司馬懿の膝の上におく。

    などなど、一日に五回ほど様々な検証をしたが司馬懿が怒る所はまだ見られていない。この馬鹿みたいな案を見ていれば分かるだろうが、清河卿と張郃は人によっては本当に怒りそうなことをかなり頑張って狙っている。なお兎が乗っかかっている事に気付いた司馬懿はじっと兎を見つめた後諦めたように二度寝をしていた。絵面が色んな意味で凄まじかったとだけ言っておこう。

    「どうしますか、張郃さん。案外怒る際が見分けませんねこれは」
    「明日が本命っす。頑張るっすよ、主サン」

    そして清河卿は思った。実行が自分である以上、そもそも司馬懿が怒った時に怒られるのは自分だけではなかろうかと。

    ◇ ◇ ◇

    作戦:? 囲碁の邪魔大作戦

    そう、実は今日は司馬懿の滞在四日目にして、蜀から諸葛亮が偶然にも来る日である。二人が顔を合わせれば十中八九囲碁が始まるため、清河卿は予めかくかくしかじか……と諸葛亮に相談済みなのだ。

    「なるほど、司馬懿殿の沸点を見極めようと」
    「一度だけ囲碁の邪魔をすることになるのですが、ええと……諸葛亮さんは怒りますか?」
    「いえ。主殿の方から事前に知らされていますから」

    という事である。計画としてはこうだ。二人が囲碁を差している最中、いい感じに勝負の分かれ目になりそうな局面になった所で諸葛亮が合図をする。清河卿はさも諸葛亮宛の急ぎの書簡が届いたかのように、書簡を握りしめて「急ぎです!」と二人が対局をしている所に乱入し──うっかり転んで盤面を台無しにしてしまうのだ。正直なところ諸葛亮と司馬懿であれば碁石がどこにあったか、など簡単に思い出せるだろうが、「諸葛亮との対局に水を差される」が今回の検証では重要な点になってくる。

    「おっ、主サン。諸葛亮サンが茶を飲んだっすよ」

    ──合図だ。張郃の言葉で覚悟を決めた清河卿は深呼吸をすると静かに廊下の端まで引き、一気に助走をつけて二人が対局している部屋へと向かう。

    「諸葛亮さん、急ぎの報せが来っ」

    そしてそのままわざとらしく転んで盤面をひっくり返す──筈だったのだが。襖の淵に一周回って綺麗に足を引っかけてしまった清河卿は、勢い良く碁盤に向かって突っ込んでいく。あれっもしかしてこれは頭を碁盤の角の方にぶつけてしまうのでは!?と最悪の痛みを予期した清河卿が目を瞑った瞬間のことである。

    清河卿を襲ったのは痛みではなく、弾力のあるものに受け止められる感触であった。そう、腕の筋肉である。服越しでも分かる鍛え抜かれた腕。貴方は本当に軍師なんですか、と問いたくなる腕だ。

    「……全く、急ぎは急ぎだが生き急ぐ必要はないのではないか? 主よ」

    目を開けると司馬懿が呆れ返ったという顔で此方を見下ろしているではないか。清河卿の頭は床すれすれの所で司馬懿の腕に受け止められており、碁盤は他でもない司馬懿自身がもう片方の腕で押しのけてしまっていた。当然、勢いよくどかしたのだから盤上はめちゃくちゃな事になっている。

    「す、すみません!? おこ……らないんですか?」
    「何をだ」
    「いや、司馬懿さんいっつも孔明! って諸葛亮さんとの対局を楽しみにしていたので……邪魔をしてしまい……」
    「阿呆面で何を聞くかと思えば。主よ、私はお前を見捨てるほど薄情だと思われていたのか?」
    「薄情と思ったことはないです、時々性格が悪いなとは思ああ待ってください頭を掴まないで」

    ふん、と助け起こしてくれた司馬懿がついでに清河卿の落とした諸葛亮宛(のまっさらな)書簡をなんと諸葛亮に投げ渡してくれたではないか。これが大本命と言った通り、張郃が清河卿に提案した作戦はこれで全てである。検証完了、結論から言うと司馬懿の沸点は分からないままだ。諸葛亮は面白いものを見た、というように微笑んでいる。

    「……つかぬ事をお聞きしますが」
    「何だ」
    「司馬懿さんって何をしたら怒るんですか?」

    きっと答えは決まっているだろう。この人はいつも澄まし顔で笑った後に、

    「フハハ、主よ。それが分からないようではまだまだ先が思いやられる」
    「今回ばかりはやや司馬懿殿に同意します」
    「諸葛亮さんまで!?」

    自信満々の顔で嫌味を言うのだ。まったく、感謝のしどころも見失ってしまう。

    ◇ ◇ ◇

    「あ、司馬懿サンお帰りっす。清河郡での休暇は楽しかったっすか?」
    「……張郃。土産だ」

    ん? と張郃が司馬懿から渡されたのは何処かで見たような書簡である。清河卿が諸葛亮に渡したまっさらな書簡と瓜二つではないか。嫌な予感と共に書簡を開けば、そこには張郃への罰則が司馬懿名義で記されているではないか。曹丕の承認印も押してある。

    「じゃあ最初からお見通しだったんすか!? 折角の機会だったんすよ!?」
    「清河の主に全て行動させれば自分が怒られることはないと踏んだようだが詰めが甘い。何故なら、主の頭で思いつく嫌がらせはもっと残念なものに違いないからだ。となれば必ず背後に誰かがいる」

    さらっと清河卿をけなしているが、司馬懿自身にはそんなつもりはない。彼はあくまでも伝え方があれなだけで、本当に貶す意図はないはずなのだ。多分。きっと。おそらく。

    「ちょ、ちょっと司馬懿サン! この罰則の量は流石にやりすぎっすよ~!」

    その後、張郃が司馬懿ではなく曹丕に罰則を減らしてもらえないか交渉しに行く場面が見られたとか、何とか。
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    Replies from the creator

    みちとせ🍑

    DOODLEオリアカワンドロワンライ、開催ありがとうございます

    家園の歩練師さんの思い出で時間が進むごとに恋から愛に変わっていく感じがとても素敵だなと思ったのでそこらへんの雰囲気らくがきです

    オリアカの歩練師さんと孫権さん夫婦かわいくて好きなんですけど、あの、史実……二宮の変のことが頭を過ると陸遜の関連ダメージが入るのでかなり胃痛がします 史実って何?(知らないふり)
    あなただけにあなたの傍にいたいと、願った。

    ◇◇◇

    貴方に嫁いだ日の事を、よく覚えている。

    「後宮に入ったら、もうこのように臆病じゃだめだぞ」

    柔らかな声で諭してくれた貴方の顔が見られなくて俯いたままのわたくしを責める事も呆れる事もなく、ただ優しく頭を撫でてくれた貴方の手のぬくもりを。

    その瞬間はまるで時が止まってしまったかのようで、けれど、その永遠のような一瞬の静寂の中で──わたくしの心臓だけは、鼓動が貴方に聞こえてしまうのではないかというくらいに高鳴っていた。

    今思えばわたくしは、あの瞬間に恋をしたのだと思う。
    貴方を好きになることは──この世界のどんな事よりも当たり前に思えたのだ。

    ◇◇◇

    「今度の戦いには自ら顔を出すのですか?」
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    みちとせ🍑

    DONEオリアカワンドロワンライ「陸遜」の開催、ありがとうございます。

    陸遜が見た、ほんの少しだけ長くて、あっけない程に短い夢の話。

    熱が下がらず布団でワンライ参加したので誤字脱字が目立つかもしれません。
    ⇧の事情からちょっと前にスタートしたので1.5hくらいです。

    どうか陸遜が、他の誰でもない貴方がこの先、笑顔でいられますように。
    灼灼たる夢の先「……ん、陸遜」

    おーい、と呼びかけるような声。それから肩を軽く揺らされて、意識を引きずり上げるように瞼を開いた。ちかりと光に眩んで、幾度か瞬きを繰り返した先で二人分の影が目に入る。

    「っ、孫策殿、周瑜殿!?」
    「なんだ、やっと起きたな」
    「陸遜、休むのなら軒先ではなくせめて部屋に入りたまえ」
    「いえその、ああ……言い訳をさせてもらえませんか」

    身なりをささっと正して先ずは礼を。寝起きだろうがその身体に染みついた礼儀作法は消える筈もなく、ただ縁側に腰かけて柱に頭を預けていたせいか陸遜の冠は微かに頼りなく揺れていた。当人は後から気付くのだろうが、それを目の当たりにした周瑜はまだまだ若いなと笑みを零す。

    「別に言い訳なんかしなくていいぜ、この季節は縁側での昼寝が気持ちいいからな」
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