待ち合わせの時間が迫っていて、俺は走ってそこへ向かっていた。「わざわざ待ち合わせなくても一緒に行けばよくない?」と言うシュウに「待ち合わせたほうがデートっぽいでしょ?」と言ったくせに遅刻なんてカッコつかない。寄りたいところがあるからと先に家を出て行ったシュウを見送ってから身支度を整えて、アクセサリーをどれにするか迷っていたら予定より遅くなってしまった。
約束の場所にたどり着いて辺りを見渡し、建物の影に立っているシュウを見つける。スマホを見て少しだけ不安そうな顔をしているからたぶん待ち合わせの時間を過ぎちゃったんだろう。息を整えてから行こうと思っていたのに、そんな顔を見てしまったらもう少しも待たせたくなかった。
「遅くなってごめん!」
「わ! びっくりした……。んは、走ってきてくれたの? ゆっくりで良いのに」
そう言いながらシュウは手を伸ばして、風でぐちゃぐちゃになってしまっているだろう俺の髪を優しく撫でた。しばらくされるがままその手に甘えてから、俺はシュウの頬に手のひらを添える。
「うん?」
「待たせてごめんな?」
「ふふ、そんな待ってないって。僕も結構ギリギリだった」
「どこか寄ってたんだっけ」
「うん。だからルカのこと待たせずに済んで良かったよ?」
「……シュウは優しすぎる」
「そんなことないけどな。それで、今日のデートは何をするの?」
「シュウの好きなことをたくさんしよう! 遅れちゃったお詫びにごはんを奢らせてほしいな」
「ええ、いいよそんなの。でも行きたいところはあるから付き合ってくれる? ルカと一緒に選びたくて」
「うん、もちろん。選ぶって何を?」
「ピアス」
ニッと笑うシュウの耳に、俺は指先を触れさせた。