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    途綺*

    @7i7_u

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    途綺*

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    🐑🔮//例え世界がひっくり返っても

    別れる理由を問う話。双方向に愛が重い2人が好き。

    #PsyBorg

    「ねぇ、ふーふーちゃん」

    朝と言うには陽が高い時間。
    ようやくベッドを出て目覚めのコーヒーを飲んでいた浮奇が、ソファで本を読んでいるファルガーに声を掛けた。本を持っていない方の手は、足元に寄り添ったかわいい愛犬の頭を撫で続けている。

    「俺たちが別れる理由ってなんだと思う?」

    明日の天気を訊ねるかのような口振りで投げられた随分と突拍子もない問い掛けを脳内で数回繰り返したファルガーは、怪訝な表情で手元の本から顔を上げた。

    「...どちらかが死ぬ以外にか?」

    回転は早い方だと自負する頭が未だ問い掛けられた意味を理解しきっていない。やや戸惑った色を纏って発されたのは純粋な疑問だった。

    「ふーふーちゃんは死ぬまで一緒にいてくれるつもりなんだね!べいびぃ、嬉しい」

    どうやら彼にとっての正解を導き出せていたようで、途端に口元を緩ませた浮奇が抱きついてくる。猫が嫌がるからとあまり強い匂いは纏わないはずなのに、近づいた身体からふわりと甘い香りがした。首元に擦り付けられるよく手入れのされた髪を撫でてやれば星が宿る瞳に見つめられて、戯れるように触れて離れていく唇を追いかける。

    浮奇はそれ以上、言葉を重ねなかった。



    月明かりが差し込むベッドで、ファルガーはすやすやと眠る浮奇の寝顔を見つめていた。体温を分け合って幸せそうに微睡む浮奇に眠気を誘われていたというのに、妙に目が冴えて眠れないのは昼間の会話が消化不良を起こしているせいだ。

    幸せそうに緩みきった顔が、あの時に発した自分の言葉が浮奇の求めていたものだったと伝えてくれている。けれど、『何か』がファルガーの中で引っ掛かっていた。

    ――俺がお前と別れる理由はなんだろう。死ぬまで離れないと、漠然とそう思っていた

    根拠も確証も無かった。お互いが歩んできた道を理解している2人は『この先』なんて不確かなものに縋るほど馬鹿じゃなかった。
    だから、浮奇からの問い掛けがある種の言葉遊びのようなものだと分かっている。映画の台詞を言われてみたかった、だとかそんな理由なのだろう。浮奇の生い立ちを考えれば、幸せを確約された未来に憧れがあるのも頷ける。
    かく言うファルガー自身も過酷な未来を生き抜いてきた割にはロマンチックな部分がある事は自覚があって、互いが死ぬまで離れない、なんて聞き飽きたような甘い台詞に憧れがないわけではない。つまり、昼間の会話は本当に言葉遊びでしかなかったはずだった。

    それでも腑に落ちないのは、自分の言葉がそれ以上の意味を持っているからに他ならない。恋人同士の甘い会話、約束された輝く未来、分け合う体温。ファルガーが抱えるのは、そんな綺麗なものだけでは無いからだ。

    ――あぁ、そうか。俺は...まさかそんな問いかけを、浮奇にされると思っていなかった。浮奇と手を離す未来を、考えたことがなかった

    それは積み重ねた時間が生み出した、ファルガーの浮奇への『想い』だった。言葉遊びだと分かっていても湧き上がるような強い感情だった。

    ――手を取ったらきっと離したくなくなるから、手を取るのを躊躇っていたのに。引き寄せて抱きしめてしまったから、もう離せない

    周囲からは浮奇がファルガーに心を傾けているように見られているが、心の内は違う、とファルガーは常々感じている。余裕そうな表情で愛を受け止める表の顔とは裏腹に、心の奥底では浮奇を決して離すまいと縛り付けている。
    人々の間を蝶のごとくひらひらと舞う浮奇だって好きだ。恋人の贔屓目で見たって、たくさんの人々の愛に触れて幸せそうに笑う浮奇が一番綺麗だと思っている。けれど、ファルガーの視界から消えることは許せなかった。

    ――別れる理由?そんなもの存在しない

    執着?独占欲?構わない。この『想い』が綺麗なものばかりじゃなくて良い。捕まえた手を離すつもりはない。もし不安になっているなら、言葉遊びでもそんなことを言わなくなるくらい愛を注ごう。

    ――例え世界がひっくり返っても、お前の手を離してやるものか。お前が俺に、愛を教えたんだ



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    途綺*

    DONE🐑🔮//異体同心

    ある雨の日に、お互いの肩に寄り掛かる話。
    雨の降り続くある日、配信を終えて階下に降りたファルガーは、シンクに重なった食器を見つけた。やや潔癖の気がある浮奇が片付いていないキッチンが好まないのは、自他問わずに認める周知の事実である。遅めの昼食をとったばかりだったにしては妙な時間に置かれているそれに違和感を覚えて、室内を見渡せばソファの上に丸い塊を見つける。

    分厚い雲に覆われて仄暗い空間に響くのは、浮奇と愛犬の寝息だけだった。

    「浮奇」

    名前を呼べばむずがるように顔をクッションへと埋め込む仕草が愛おしくて、小さく息を溢しながらふわふわと触り心地の良い髪を撫でる。

    「浮奇、どこか具合が悪いのか?」

    肩を叩きながら問い掛ければ、眠気に囚われた星空を宿す瞳が軽く開かれる。ぱちぱちと瞬きを繰り返す浮奇に、もう一度同じ言葉をかければ、ゆるく首を横に振られた。何かを訴えるように伸ばされた腕の意図を正確に汲み取ったファルガーは、心配を滲ませた表情を崩せないまま、その身体を抱え起こして自分の方へと凭れ掛からせる。ちょうど良い位置を探すように頭を動かした浮奇は、落ち着く場所を見つけるとファルガーを見つめてきた。
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