ハグして、キスしてって、酔って甘えた俺の声を優しい笑顔で全部受け入れてくれる友人と、本当は他の誰とも違う恋人になりたいって言ったら彼は驚いてしまうかな。俺をあやすようなハグはもっとキツく、頬にくれるキスはきちんと唇に。そう望んだらダメ? 今日も言葉にできない意気地なしで、俺はスハのことをじいっと見つめるだけだった。
「ふふ、浮奇、今日はいつもより酔ってるね。お水もちゃんと飲んで? 楽しいうちはいいけど、気持ち悪くなったら後悔しちゃうよ。私とのデートを悪い気分で終わらせてほしくないな」
「ん……おみず、のむ」
「いい子いい子」
頭を撫でてくれる手に自分から擦り寄って、その手の上に自分の手を重ねて頬に触れさせる。カウンターの上に置かれていたもう片方の手も指を絡めて掴み取り、反対側の頬に。いつもキスが降ってくる両方の頬を封じてから、うんと可愛こぶって「キスしたい……」って呟いた。アルコールのせいだけじゃなく、ちょっとだけ恥ずかしくて目が潤む。
「……浮奇、酔ってるでしょ」
「うん。酔ってるから」
「……私も少し、酔ってるかも」
「じゃあ、どっちが酔ってるか比べてみる?」
「うん……?」
「俺とスハ、どっちが体温高いかな」
重ねた手はもうどっちの体温か分からないくらい熱くって、確かめるには向いてないよね。唇を尖らせるのはあからさま過ぎて大人っぽくないから、スハのことを見上げていた視線をわざと逸らしてまつ毛を伏せて、それから彼の眼差しを感じながらゆっくりと上を見た。もう一度視線が重なった時には、彼の顔がすぐ近くまで下りてきている。
「本当にいいの?」
「もっと強引になってくれていいんだよ……?」
「……目を瞑って」
低く囁かれる声に心臓を震わせ、俺はそっと瞼を閉じた。今までしたどのキスより、唇が重なるまでの時間が焦れったい。でもその分、触れた時の幸せは言葉にできないほどだった。ようやく、ようやくスハとキスができた! 本当は自分から舌を伸ばしてもっと激しくスハと触れ合いたかったけれど、彼から与えられる優しさを俺はとても気に入っていたからジッと我慢をした。
初めてのキスは数秒唇を重ねるだけの幼いもので、でも離れてから目を開けた時の、スハの熱っぽい瞳と照れた顔を見たら心は簡単に満たされた。
「浮奇、可愛い」
「スハのほうが可愛いよ……だいすきだ……」
「へへ、うん、俺も大好きだよ。……ああ、キスってこんなに気持ちいいんだね。浮奇だからかな?」
「そうだよ、俺もスハのしてくれたキスだから、すっごく気持ちよかった。しあわせ」
「もう一回してもいい?」
「何回でもして」
「可愛いこと言わないでよ」
「本当だもん」
「……お水は飲んだ?」
「スハが飲ませて?」
「え、あ、……ええっと……キスで?」
「んへへ」
俺はそこまで言ってないのに。スハが言い出したんだから、責任持ってそうしてくれる? 俺、冷たい水は苦手なんだ、なんてね。