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    wonka

    とりあえずマシュおいとく用
    ステ新規/アベとアビ左右不問

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    wonka

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    アニメ12話後
    アベアビ/アビアベ左右未定

    君のことを僕におしえてセルと対峙した後、誰よりも大怪我を負ったアビスは病院での治療を受け校内の医務室の個室で療養することとなった。その部屋を毎日訪れる者がいる。
    「アベル様。あの、毎日いらしてくださらなくても大丈夫ですよ」
    「……迷惑、だろうか」
    「いえ!そんなことはないのですが……アベル様も怪我をされていますし、お体に障るのではないかと。気遣ってくださるのは嬉しいですが、それでアベル様の回復が遅れるのは困りますので……私はもう大丈夫ですし」
    「大丈夫?腹にこんなに大きな穴が空いてるのに?」
    「もう閉じてますよ」
    「まだ完全にくっついてはないだろう。それに君の大丈夫は信用できない」
    「そんな……」
    アビスは困ったように笑う。
    「僕は君の側にいたい。アビスが、嫌でなければだけれど」
    「嫌なんてことありません!ただ、誰かがこういうときに側にいる経験がなくて……」
    申し訳なさそうなアビスに彼が後ろめたく思うことなど何もないのにとアベルは思う。
    「知りたいんだ、君のことを」
    「私を、ですか?」
    「君が僕を庇ったことがあのとき僕にはなぜかわからなかった。その理由を示したのはマッシュ・バーンデッドだった。僕より遥かに君とは関係の薄かったはずの彼にわかって僕は、君のことを何も知らないと気づいた」
    「それで別に構いませんよ。あくまで私があなたにお仕えする身ですし、アベル様が私のことを知らずとも問題はないのでは」
    「いや、僕が知りたいんだ」
    重ねるようにそして少々強くアベルは言葉を発した。
    「今更かもしれない。でもあの時アビスが死ぬかもしれないと思って、嫌だと思った。その理由を僕は知りたい」
    「アベル様……」
    アベルとアビスの関係は対等ではない。アビスはアベルの言葉に救われ自らの意思でこの身を捧げているだけだったし、それを許されているだけでアビスにとっては充分だった。それでも、アベルがアビスに歩み寄ろうとする事実には驚嘆しつつも嬉しさを憶えた。今まで心理的にも物理的にも距離を取られることはあっても近く側においてくれる人やそんなふうにアビス自身に興味を持って存在を見てくれる人もいなかったから。
    「この目が発現してから出来るだけ人目を避けて生きてきました。勿論すでにこの目のことを知ってる人は私が為さずとも私を遠ざけますし、知らない人にはそのまま知られないように、できるだけ透明な存在として」
    物心ついた頃からあたりまえとなってしまった悲しい馴れであっても、暴言をぶつけられ避けられるよりは誰にも認知されないよう生きていくほうがアビスにとっては些かましであった。
    「でも、あなたには私が見えていた。それだけでなくこの目のことを知ってもなお必要としてくれた」
    続きを迷って一度言葉を区切る。少し間をおいて悩むがアビスは再度口を開いた。
    「それだけで充分だったのに、今あなたが私のことを知りたいと言ってくれることが……こんなにも嬉しい」
    なくした感情だと思っていた。もうもれないように蓋をした期待だった。それがアベルの手で解放されてしまった。こんなふうに期待することで傷つくのは後の自分なのにそれでもアベルの言葉をこの心は素直に嬉しいと思ってしまう。
    最早独り言のようにぽつぽつとその口からこぼれ落ちるアビスの心の内をアベルは静かに拾い集める。嬉しいと思ってしまう気持ち、またこの期待も霧散するのではないかと恐れる気持ち、アベルを信じられずそう疑ってしまうことへの懺悔。渦巻く様々感情に戸惑うアビスの心と言葉と共にその両眼から零れる雫は本人が気づいていないのかきらきらと光っては次々に落ち服を濡らしていた。
    またその赤い眼球が涙で満たされていく。満ちてあふれ落ちそうになる様をアベルは勿体無いと思った。思わず手を伸ばす。治療のために解かれた柔らかな髪に指を差し込みアビスの頭を優しく寄せると今にもこぼれ落ちそうな涙を舌で掬った。びくりとしたが驚きすぎて動けないのか身を硬くするのみのアビスに好都合だと瞼に覆われた悪魔の目にそっと口付けを落とし離してやる。
    「……穢れてしまいます」
    ようやくなんとか口を開いたアビスはただそれだけを目を伏せたまま言った。
    「穢れないさ」
    アビスの顔に再び優しく触れる。いまだ閉じられた左の瞼をアベルは親指でそっとなぞった。
    「この目が特異なだけで君は他の人間となにも変わらない。この目だって君の意思で悪行に使用したことはないだろう。みんな悪魔の目に捉われすぎて君自体のことを見ていなかっただけなんだ、僕も含めて」
    アビスは何か言いたげではあったが紡ぐ言葉を迷ってるようだった。アビスの言葉を待たずに続ける。
    「だからおしえて、君のことを」
    「でも……」
    また戸惑いの色を濃くにじませたアビスはきっといつかまた見限られてしまうことを恐れているのだろう。だったら、と思う。
    「君のことを知っても僕は、君を手放すことはないよきっと。これは好意からくる興味だと僕自身は思っている」
    「それって、」
    先程とは異なる戸惑いを含んだアビスに少しだけ揶揄いたくなる気持ちが生まれる。
    「どういう意味だろうね」
    「アベル様……っ」
    揶揄われたのがわかったのかアビスは少しだけ声を荒げた。
    「君のことをもっと僕におしえて。それでどういう意味かわかったら君からおしえてよ」
    「……ずるいですよ」
    「僕はそういう男だよ。知らなかった?」
    「知りません」
    ムッとしたアビスは少しだけ不機嫌そうだったが先ほどまで思い詰めた様子はもうなかった。それで良いとアベルは思う。
    「あなたのことも、おしえてください」
    アビスからの言葉を嬉しく思う。返事のかわりにアベルはもう一度アビスの左瞼に口づけを落とした。

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