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    食事終わりにちょっと揉めるとーはじゅの話です。

    #ParadoxLi腐

    とーはじゅ「周りの目も気にしないで、自由に生きられる夏準さんにはわかんないって」

     思わず口から滑り出た言葉に、夏準さんの目が見開かれるのを確かに見た。咄嗟に顔を逸し、しまったと思うと一気に汗が滲み出る。夏準さんは俺のことを思って、好きにしたらいいと言ってくれたのに、こんなんただの八つ当たりだ。

     今までこんなことはなかった。誰かに何かを言われても受け流せた。それなのにどうして、よりによって夏準さんの前で出てしまったのだろう。嫌われたらどうしよう、呆れられたらどうしようと心臓が騒いで止まらない。

    「斗真」

     聞こえてきた声に驚いて肩が跳ねる。怒られる前に、嫌われる前に、別れ話をされる前に、無かったことにしないと。一刻も早く。夏準さんの目を見ないようにしながらきゅっと口元を上げて言った。

    「ごめん!ちょい疲れモード的なアレでさ!も〜!ネガってる俺出てくんなっつーの!留守番しとけっつったろ〜?つーわけで、今日はもう帰って頭冷やしまっす!」
    「は?」
    「まじでごめん!また連絡するから!」

     一方的に話してその場を走り去った。とりあえず帰宅をして、落ち着いてから改めて謝罪をしよう。そうすれば夏準さんは優しいからきっと許してくれる。大丈夫だ。…大丈夫。

     暫くしてからふいに気になって振り返ると、笑顔で追いかけて来る夏準さんが居た。それを見た瞬間、心臓がバクーッと元気良く飛び出し、慌てて走るスピードを速めた。

    「嘘じゃん!何やってんの!?」
    「술래잡기なんて久しぶりですね。…いや、もしかすると初めてかもしれません」
    「え!?スレ、なんて!?」
    「あぁ、すみません。술래잡기は鬼ごっこのことです。フフフ、ほら頑張ってください。もうタッチしてしまいますよ」
    「ギャー!速すぎなんですけど!」

     どれだけ逃げても、夏準さんにとってはジョギングと何ら変わりないようで、後ろからずっと煽られ続けた。

    「つーかマジなにこれ!マラソン大会かよ!」
    「なら止まってください。斗真が止まればボクも止まりますから」
    「それじゃ意味ねーじゃん!」
    「それほどボクから離れたい、ということですか」

     その言葉にハッとして足が止まる。振り返れば夏準さんは5メートルほど後ろで立ち止まっていた。呼吸を整えながらゆっくりと夏準さんの元へ向かうも、俯いているので顔が見えない。なんて言葉をかけようか考えていると手が伸びて来て、俺の腕に触れた。

    「はい、タッチ」
    「え」
    「これで鬼ごっこは終わりです」

     にっこりと笑ってそう言う夏準さんはいつもの夏準さんで、俺は足の力が抜けてその場にじゃがみ込んだ。ドクドクと騒がしい脈も、慣れれば心地よい気がする。思わず笑ってしまうほどに。

    「ホーント、夏準さんには勝てねーなぁ」
    「お互い様ですよ」
    「えぇ?」
    「今までボクに追いかけさせた人なんて居ませんでしたから」
    「それ喜んで良いやつ?」
    「もちろん」

     なんて笑うので苦笑をした。やっぱり俺のほうが負けてる気がするんだけど。

    「斗真、ボク達は育った環境が違うので考え方も違って当然です。だから考え方をすり合わせ、調整をしながら一緒に居たいと思っています」
    「……」
    「さっきの言葉で気を悪くさせてしまったのならすみませんでした。ただ何がいけなかったのか、どうすればいいのか話し合わせてくれませんか?」
    「…あれは、本当にいっときの八つ当たりでしかなくて、夏準さんが悪いことなんて何もないんだよ」

     そうだ。常に周りの目を気にして、怯えて生きている俺が悪い。向けられる目線の全てが未だにずっと怖い。隠しているそれを見ているんじゃないかと思ってしまう。

    「斗真」

     その優しい声に、頭を撫でられる感触に、自分が手で顔を覆っていたことに気付いた。顔を上げると夏準さんは微笑んでいて、どうしようもなく泣きたくなる。胸が苦しい。

    「ごめん。でも本当に夏準さんがどうとかじゃなくて、単純にさ、羨ましかったんだよ。本当にごめん。夏準さんだってきっと、すごい努力をして手に入れたはずなのに」
    「ボクは君の、素直に感情を出せるところが好きです」
    「え…。え!きゅ…急に何!?」
    「同時に羨ましいと思います。その眩しさに目を逸したくなることも」
    「……」
    「つまり愛憎は表裏一体、同じものなんですよ。だから君は間違っていません」
    「それでいいのかな…」
    「いいんです。決めるのはボク達ですから」

     そう言って微笑みながら、差し伸べられた手に掴まって立ち上がる。向かい合うとなんだか久しぶりに夏準さんの顔をちゃんと見た気がした。だから手を握って、目を見て、口を開いた。

    「夏準さん、その、ありがとう」
    「いえ、お礼なら100倍返しでお願いします」
    「え」
    「このあとたくさん甘やかしてくださいね」
    「…あ!が…がんばります!」

     意味を理解すると顔が熱くなって、夏準さんはそんな俺を見てクスクスと笑っていた。
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