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    Shiori_maho

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    Shiori_maho

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    2023.03.11 開門フェス2展示

    学パロで、高校生×教師の話です!
    ⚠︎年齢逆転です!
    短いです!

    #フィガファウ
    Figafau

    「きみは31日まで高校生だから」~高校生×教師~ それは、一昨年の始業式のこと。気怠い春の温みのなか、美しく背筋を伸ばしたファウストと、渡り廊下ですれ違った。まるで夜明けの空みたいに、静謐で鮮やかな紫の瞳。眼差しがかち合った瞬間に、あっ、いいなと思った。それが始まりだった。
     フィガロのクラスへ副担任として配属されたファウストは、大人らしい思慮深さを持ちながら、思春期の青少年よりももっと無垢で高潔で綺麗だった。眼差しを合わせるたび、言葉を交わすたび、その心に触れるたびに。
     些細な興味は、切なる何かへと塗り替えられてゆく。だから、

    「――俺と恋をしてみませんか」

     軽薄に笑んで予防線を張った。夕日の差し込む社会科準備室で、ファウストの顎先を掴んで顔を寄せた。そうして突っぱねられることを期待していたのに、ファウストは丁寧に一歩後退ると、フィガロとの距離を正して告げた。
    「きみはまだ高校生だ。大切に恋をしなさい」
     ああきっと、もう戻ることはできないのだとそのときに悟った。ファウストの温度の残る指先を握り込んで、「本気の恋なら?」と呆然と問うた。嘘みたいに、声が掠れていた。
    「僕は教師だ。きみたちを導く責務がある。今は、そうとしか言えない」
     フィガロから決して眼差しを逸らさず、ファウストはそう答えた。
    「分かりました」
     フィガロは静かに応じて、社会科準備室を後にした。踵を返す寸前、ファウストの頬に覗いた朱を、夕やけのせいということにして。

     夕やけのあの日から一年半。教材や資料で雑然とした社会科準備室へ、窓から差し込むのは春の柔らかな陽光。それを透かして、ファウストの灰茶色の髪が繊細にきらめく。フィガロは目をわずかに細めて、ファウストとの距離を一歩詰めた。
    「卒業しましたよ」
     制服の胸元に花の飾りをつけたフィガロは余裕げに笑うと、あの日のように、ファウストの顎を戯れみたいに掴んだ。真面目で、案外頑固な先生はきっとまだキスを許さないだろうなと思ったら案の定、
    「……きみは31日まで高校生だから」
     ファウストは難しい顔でそう答える。だからフィガロは予定通り肩をすくめて、ファウストを手離そうとしたのに。
    「……だから、今日の僕を4月まで忘れていなさい」
     ひそやかな囁きとともにファウストが目を瞑るから、え、とフィガロは面食らう。
     見下ろす先の白い頬を、染める夕日は今はない。ぎゅっと寄せられた眉根から緊張が伝わる。顎を掴む指先が、まるで壊れ物を扱っているみたいに強張る。
     たかがキスに、うるさいくらい心臓が高鳴って、これが本気の恋なのだとあらためて思い知りながら、フィガロは嘘みたいにぎこちなくくちびるを重ねた。
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    related works

    Shiori_maho

    DONEほしきてにて展示していた小説です。

    「一緒に生きていこう」から、フィガロがファウストのもとを去ったあとまでの話。
    ※フィガロがモブの魔女と関係を結ぶ描写があります
    ※ハッピーな終わり方ではありません

    以前、短期間だけpixivに上げていた殴り書きみたいな小説に加筆・修正を行ったものです。
    指先からこぼれる その場所に膝を突いて、何度何度、繰り返したか。白くきらめく雪の粒は、まるで細かく砕いた水晶のようにも見えた。果てなくひろがるきらめきを、手のひらで何度何度かき分けても、その先へは辿り着けない。指の隙間からこぼれゆく雪、容赦なくすべてを呑みつくした白。悴むくちびるで呪文を唱えて、白へと放つけれどもやはり。ふわっ、と自らの周囲にゆるくきらめきが舞い上がるのみ。荘厳に輝く細氷のように舞い散った雪の粒、それが音もなく頬に落ちる。つめたい、と思う感覚はとうになくなっているのに、吐く息はわずかな熱を帯びてくちびるからこぼれる。どうして、自分だけがまだあたたかいのか。人も、建物も、動物も、わずかに実った作物も、暖を取るために起こした頼りなげな炎も。幸福そうな笑い声も、ささやかな諍いの喧噪も、無垢な泣き声も、恋人たちの睦言も。すべてすべて、このきらめきの下でつめたく凍えているのに。
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    recommended works

    tono_bd

    DOODLE2022.6.2公開の、フィガロ誕4コマの蛇足のようなフィガファウ。
    4コマ見た瞬間に書いてた。本当はなんでも無い日だって部屋にくらい行く二人です。
    なんでも無い日だって部屋にくらい行くよ。 自分から出向かないと顔を出すまで部屋の扉を叩かれるから。他の賢者の魔法使いは声をかけているのに、一人だけ無視をするのは気が引けるから。理由はいくらでも思い浮かんだけれど、結局の所、僕が伝えたいだけなのだ。
     四百年の間、誕生日という日を特別に感じた事は無かった。それもそうだろう、依頼人くらいしか他人と接する機会が無かったのだ。すると自分の誕生日も有って無いようなものになる。ふと、そういえば今日は自分の誕生日だと思い出す事もあるが、王族の気まぐれで作られる国民の休日と同じくらいどうでもいいものだ。
     それなのに、この魔法舎で暮らし始めてからはどうだろう。二十一人の魔法使いと賢者、それからクックロビンやカナリアの誕生日の度に、ここはおもちゃ箱をひっくり返したような有様になるのだ。自分の誕生日には一日中誰かから祝いの言葉を贈られて、特別なプレゼントを用意されたりして、自分らしくもなく浮かれていた。それは他人が僕のために祝ってくれる心があってはじめて成り立つもので、少なくとも僕はその気持ちを嬉しいと感じた。僕が何か行動を起こしても相手は喜ばないかもしれない、もしかしたら怒らせる可能性だってある。受け取る側の気持ちを強制は出来ないけれど、僕が他人を祝いたいのだ。気持ちを伝えたいだけ、あわよくば喜んで欲しいけれど。
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