Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    こいけ

    @hk_7094 すきかってやってる

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji ㊗ 🉐 ❤ 🚩
    POIPOI 7

    こいけ

    ☆quiet follow

    ふわふわ人外婚姻譚K富
    いわゆる明るい人外のやつ

    #K富

    いや仮に本当だったとしたら三徹の相手にする話ではなくない? その日、というかここ数日はもうめちゃくちゃにはちゃめちゃに忙しくて忙しくて、もうわけがわからない程度には忙しい日だった。今が昼なんだか夜なんだか、寝たんだか寝てないんだか、飯もいつ食べたのか、そもそも食べたのか、とりあえずもうなにがなんやらわからないくらい忙しかった。ようやく一息ついた、というか座れたのは数日ぶりだった。ような気がする。医者の不養生という言葉が思い浮かんだが、人の命がかかってたんだし仕方のないことだし毎日こんなことしてるわけでもないし、と誰に対しての言い訳なのかもわからないまま思考がぐるぐるする。
     今にも寝てしまいたいのに脳は妙に興奮状態のままで、俺は診療所の診察台に座ってぐったりしていた。
    「富永、大丈夫か」
    「大丈夫れす……」
     目を開けたまま上半身だけ横になり休んでいる俺の元に、Kがマグカップを持ってやってくる。コーヒー……ではなくホットミルクだ。なんでこれが飲みたいってわかったんだろう。Kってひょっとして神様かなんかなのか。上半身を起こしてホットミルクを受け取る。暖かな湯気が鼻にあたり、なんだか安心した。
    「なんでKはそんなにげんきなんですか」
    「さあな」
    「じつは人間じゃなかったりします?」
     軽い冗談のつもりだったが、Kの手がぴたりと止まる。何か変なことでも言ってしまっただろうか。ひょっとして怒った?

    「……そうだ」
    「えっ」
    「俺は、人間ではない」
    「はぁ」
     急に何をいっているんだこの人は。やっぱKも疲れてんのかな。人間だもんな。いや人間じゃないって言ってるんだっけ。
    「じゃあなんなんですか」
    「神だ」
    「神かぁ……」
     この人も冗談って言うんだなぁ、と思った。あ、人じゃなくて神様なんだっけ。でもどこか納得しそうな自分もいる。かみさま、かみさまかあ。だから苗字に神ってはいってるのか。いや知らないけど。その原理でいくと俺の家は富がすごいことになるけど。いやでも俺の実家って結構富ある方だな。いやどうでもいいな。
    「だから三徹も余裕なんすか」
    「まあな」
    「いいなぁ」
     いいなぁ。じゃあもう手術とかし放題じゃん。それもそれでちょっと嫌だな。メンタル擦り切れそう。でも神様なら大丈夫なのかな。
    「そもそも神様って、なんの神様なんですか。医療の神とかですか」
    「そうだな、そのようなものだ」
    「はぁ……」
     当然と言えば当然なんだけど、やっぱ医療の神様らしい。ご利益がすごそうだ。それにしてはフィジカルに偏った神様だなぁ。医療と筋肉の神って言われても納得しそうだ。どんな神様だよ。
    「だからずっと元気なんですか」
    「まあな。十日程なら睡眠を取らずともそこまで苦ではない」
    「十一徹目くらいからつらくなってくるんですね」
     神様と言ってもそこらへんは無限じゃないんだ。でも神様って寿命長そうだし、そもそも寿命って概念も無さそうだし、人間とは生活サイクルが全然違うのかもしれない。生活サイクルとかあるのかな。
    「神様ってことは祠とかもあるんですか。山奥とかに」
    「強いて言えばここが祠だな」
    「俺祠で暮らしてたんだ」
     どうやら俺は今まで祠で暮らしてたらしいし村の人たちも祠に診察に来てたらしい。よくドラマとか映画で病気が良くなりますようにって神社で神様に祈る描写あるけどそんな感じに近いのかな。まあここは祈りじゃなくて物理で治してくれるけど。てことは、往診に至っては神様が訪問してたのか。アフターケアまでばっちりしてくれるなんてすごい神様だ。
    「えっと……祠で暮らすって……なんかこう……罰当たり的なやつとかそこらへん大丈夫なんすか」
    「俺が住むことを許可しているのだから大丈夫だろう」
    「よかった〜〜」
     半分寝ぼけているせいか、Kとの会話が楽しい。こんな冗談も言える人だったなんて、思ったよりもKはフランクな人だったのかもしれない。心無しかKの顔もいつもより安心したような、憑き物が落ちたようなと表現してもいいのか。そんな顔をしている。
     でも少しだけわかる。普段冗談言わない人が言う冗談はスベる率高いしな。緊張してたんだろう。冗談ってこの人なら受け止めてくれる!って信頼がないと言いづらいもんな。俺とK、少しは冗談を言い合えるような仲になれたんだろうか。それはそれで嬉しい。
     少しずつ飲んでいたホットミルクはいつの間にかなくなっていた。Kと話してリラックスしたのか、張り詰めていた神経が緩んでくる。神経が緩んで、瞼も少しずつ落ちてくる。少し遠いところで、Kが寝るなら部屋で寝ろと言う声が聞こえてきたけど、もう脚の一歩も動かせそうにない。Kは神様でまだまだ元気らしいので、どうせなら運んでもらいたい。
     俺の気持ちを読んだのか、ふわりと身体が宙に浮く。今までにない安心感に、ひょっとしてKは本当に神様なのかもしれない。……薄れゆく意識の中で、俺はそんなことを思っていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💗💙💚💛💜💘💓💕💋👏👏❤❤💒💞💞💖💖💕❤💕💞💒💴💴💴💴🍆🍼🍆🍼🌋💘😭💯🙏💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    こいけ

    DONE龍太郎の死ネタです。
    急に思いついて急に書いたので色々とおかしいところしかないけど許せる方は雰囲気で読んでね。
    カプ要素はないけどずとたろ(K龍)を嗜むオタクがかいています。
    今さらそんなこと言われても どうやらオレは死んだらしい。

     らしい、というのはそのままの意味で、どうやらオレは幽霊というものになっているっぽいからだ。ガラスには映らないし、壁もすり抜けられるし、手もちょっと透けてるし。脚はあるように見えるけどやっぱり透けてて、まあ典型的な幽霊ってやつだ。
     まさかこんな若さで死ぬとは思ってなかったけど、まあ死んじゃったもんはしょうがない。死んだ理由も実家に帰省途中、変質者に襲われた女の人を見かけて、思わず身体が動いて……脇腹を刺されたんだっけ。痛くはなかった。ただ身体が重くなって、瞼が重くて、急に眠くなったような気がして、意識が無くなって、





     あの女の人、逃げれたかな。





     

     気がついたら診療所の、オレの部屋にいた。なんでここなんだろう。路上で死んだんだから幽霊になるとしたらそこなんじゃないのか?ひょっとして死んだら前日寝て起きた場所に戻されるとか?そんなマイクラみたいなシステム?新発見だ。現世に伝える方法はないけど。
    3239

    こいけ

    DONEふわふわ人外婚姻譚K富
    前回の続き これにておしまい
    どうやら空気を読みすぎたのかもしれない Kが突然の神様宣言をしてから一週間、診療所は平和な日々が続いていた。あんなに忙しすぎてなにがなんやらわからなくなった三日間もどこか懐かしく感じる。二度と経験したくはないけど。
    「富永、俺は明日の往診の準備をしてくる」
    「はーい、了解です」
     平和だ。医者が暇なのはいいことだ。なんとなくカルテを整理しながら、Kの神様宣言について考えていた。Kにしては珍しい冗談だったので印象が強かったのだ。神様によるとここは祠らしくて、それにしてはずいぶん生活感のある祠だなあ。しかもでかいし。中に家電が置いてある祠なんて日本中探してもここにしかないんじゃないか。あってたまるか。
     Kが神様なら麻上さんは巫女だろうか。村井さんは狛犬とか?犬耳と尻尾のついた村井さんを想像して思わず笑いが漏れた。需要が無さすぎる。村井さんは神主だな。神様に仕える人だし。巫女服姿の麻上さんも似合うだろうけど、彼女にはやっぱりナース服が似合う。これは口に出したら例えその気がなくともセクハラになりそうなので決して言わないでおくが。一也くんこそ狛犬が似合いそうだ。でも一族的な考え方をすると彼もまた神様側なんだろうなとも思う。そこまで考えて、じゃあ俺はなんだろうと考えた。いや俺は人間なんだけど。なんなら全員人間なんだけど。
    3216

    related works

    recommended works