炊飯器と薬缶と鮭フレーク休日。
何て良い響きだ。
月島は一週間ぶりの休日の朝の訪れを噛みしめていた。時間的には昼に近い時間帯ではあるが、月島にとって休日の日は目覚めた時が朝なのである。
勤め始めて4年ほどが経ち、月島は半年前、今までの働きと腕っぷしを見込まれ、警備班に配属となった。
勤め先は日本有数の名家・鯉登本家である。身辺調査に合格し、研修に合格し、鯉登家の敷地内に入ることが許されるまでにおおよそ1年、その後は外掃除の清掃員(兼雑事係)として表屋敷と称される場所を掃除していた。
鯉登本家の屋敷は、来客をもてなす表屋敷と、鯉登本家の家族が暮らす奥屋敷に分かれており、使用人からも世間からも奥屋敷は億屋敷と呼ばれるほど立派な邸宅である。
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