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    rica_km

    @rica_km

    👹滅:💎🔥/🔥🧹中心リバ含雑食、時々作文。ねんどーる&オビツろいど歴2周年(ねん🔥兄弟持ち、💎×2)。かなり20↑成人済

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    rica_km

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    4/28(第98回)💎🔥ドロライで書いた話の続きをここに追加していこうと思います……
    ◆追記:全3章、支部へ公開しました 04/30 2120

    素晴らしき幻想とその摂理 [Providence]
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19788049

    お題:食い込む・流し目◆01
     煉獄は宇髄に掴まれた自分の手首へ視線を落とした。長い指先が食い込むほど強く握られている。
     尋常の力ではないと言えばそうだが、普段の宇髄は他人に対して加減をしているだけで、容赦なく掴むのならばこのくらいの握力はあるのだろう。幸いにして骨が砕けるほどでもない。
     煉獄が宇髄を見つけた時点では、二つの可能性があった。
     宇髄が血鬼術に掛かっているか、鬼化しているか。楽観視するわけにはいかないだろうが、察するに何某かの血鬼術に掛かっているだけで、人外のものに変容したとわけではなさそうだ。
    「来いよ」
    「どこへ行くつもりだ」
     街を見下ろす屋根の上。周囲は民家ばかりだ。市井が寝静まるこの深夜、闇の中で二人は立ち尽くした。
     すぐ近くの木から要と虹丸も宇髄を心配して注視している。見た目にも奇妙さが際立つのだから無理もない。普段化粧を施している顔の左半分は墨を塗り付けたように真っ黒で、それが首筋にまで広がっていた。
     これが何であるのかは、まだ判別がついていない。鬼との戦闘でいったい何が起こったのか、同行の隊士も目視することができなかったらしい。
     宇髄が就いていたのは山中での任務で足元が悪い上に、鬼は姿を隠すために夜闇に紛れる黒い霧を吐いたと聞く。
     しかしその黒い霧は姿を隠すだけのものではなかったらしい。そう判明したのは、鬼を斬った後に姿を現した宇髄の様子が奇異だったからに他ならない。顔の半分が闇に溶けたように黒く、隊士の言葉も届いていないようだった。彼らの問い掛けに応答はないまま唐突に隊を離脱して消えてしまったことで、近隣の柱たちへ緊急の捜索要請が出されたのだ。

     果たして今の宇髄が煉獄をそれと認識していたのかも確証がなかった。
     煉獄の手首を掴む宇髄の手は異様な冷たさで、もし宇髄が本当に鬼になっているのだとしたらこの首を自分が斬るのかと思いながらその姿を見上げていた。
    「いいだろう、宇髄。おれを連れて行け」
     行き先も聞けぬままだったが、街中で取れる策には限度がある。ひと気が少なく、朝日を遮らぬ場所を選べるならば尚良い。
     宇髄は闇色の顔で煉獄へ目を配る。きろりとまなじりに動いた瞳の色も漆黒だ。
    「さぁ、どこぞへと行くのだろう?」
     聞こえているのかいないのか。奇妙な間があった。宇髄の顔を覆う黒い何かが彼の耳やうなじへと向かってぞろりと広がる。それを目の当たりにした煉獄は思わず目を細めた。
     足を一歩踏み出し、宇髄の隣へと進んだ。掴まれたままの腕を引き寄せて、行こうと態度で示してやる。すると宇髄は煉獄を捕らえていた手を離し、煉獄の様子を窺いながら、一歩二歩と踏み出した。それに煉獄が追従すると、意図を汲んだように少し足が早まる。煉獄が応じ、ふたりが駆け出す速度は一気に上がった。

     まるで朝から逃げるように深い夜へと向かう宇髄の状態を確かめるべく幾度も言葉を掛けたが、まるで煉獄の言葉は聞こえていないようだった。特に耳の良い音柱が聞き取れていないのなら、それは通常の状態ではないと判断するべきだろう。
     足を止めさせたいが、言葉が届かぬならば実力行使しかない。
     しかし走る宇髄を捉えて昏倒させるとなれば、素手でというのは実に効率が悪い。一度失敗すれば二度目の機会があるとも思えない。どういう状態であろうが、少なくとも実力のほどをよく知る柱が相手ならば、最も確実な方法を選択すべきだ。
     昏倒させるために首を狙うとしても、宇髄は背に日輪刀を背負っているために刀の柄が邪魔になる。煉獄が今選べる手段のうちで最も成功の確率が高いのは自分の刀を使うことだろう。
     ——と、考えたその時。意外なことに宇髄が屋根から足を踏み外したらしかった。目もあまり見えていないのかもしれない。しかし何よりこれは好機だった。煉獄は抜刀し、刀を握り直した。峰打ちで宇髄の首を打つ。直前に宇髄には気付かれたと感じたが、やはり万全ではなかったのだろう、宇髄が次の行動を選択するより先に煉獄が刀を振り抜く方が早かった。


     待ち侘びていた陽が昇る。
     空を赤く染める太陽が顔を覗かせてしまえば、その姿を現すのは早い。川面にも光が満ちて、朝の光を眩しく映す。
     川辺の土手に横たえられた宇髄が朝日に晒されると、身体中から真っ黒な煙のようなものが立ち上る。
     姿が見えなくなるほど濃いそれが治まるまでの間、まさか宇髄の身体が鬼のように灰となって崩れるのではないかと煉獄は緊張の面持ちで凝視していた。
     しかしどうやら、身体は無事にそこにある。黒煙が消え去れば、宇髄はただ眠っているだけのように見えた。
     見慣れた姿を目にして、肩の力が抜ける。息を詰めて呼吸も浅かったようだ。朝の冷涼な空気を肺に取り込みながら、煉獄は初めて自分が身体中を強張らせて宇髄の様子に見入っていたことに気がついた。
    「宇髄、聞こえるか」
     胸郭は静かに上下している。声を掛けると小さく身動ぎ、眉根が僅かに寄せられた。それだけの反応でも生きていることは知れて安堵する。見た目に問題がないことだけで油断はできないだろうが、とにかく、生きてはいる。
     瞼が僅かに持ち上がり、眩しさにか再びきつく閉じられた。その拍子にまた目から黒い煙が薄く立った。
    「そこにいるのは煉獄か」
    「いかにも」
     一言のやりとりだけで互いが普段と大きな相違はないようだと確認できて、僅かに空気が緩む。
    「——できればきみからの報告を聞きたい」
    「血鬼術にやられたんだろうが、術を食らった記憶がない。——いや、返り血を浴びた時か……?」
     首を斬ったと同時に大量の返り血が降り注ぎ、一瞬視界を覆われたらしい。宇髄は記憶をひとつずつ確認するように言葉を選んでいる。
    「なるほど、確かにきみの顔は『黒い何か』に覆われていた」
     それが侵食するようにじわじわと動いているように見えたことを伝えると、宇髄は再び眉を寄せた。
    「あと……、夢を見ていた——かもしれない」
    「どのような?」
    「現実にはあり得ない、……だから、夢だと分かるような夢だ」
     宇髄は口角をほんの少し引き上げると自嘲気味に見える微笑を浮かべた。目元へ掌を翳して瞬きを繰り返す。朝の光に目を慣らして、煉獄の方へ向けた宇髄の瞳は見慣れた色に戻っていた。


    ◆02
     あの時、なぜそんな気を起こしたのか、宇髄自身にも分からなかった。

     鬱蒼とした山に篭りきりで、十日ほどもかけて燻り出した鬼を斬った夜。珍しく疲れを感じていた。後始末を隠に任せて宇髄が先に隊を離脱したのは未明で、明け方もそう遠くない。一人で麓へ下り、街へと出て、寝静まる街の中を屋根伝いに走り出した。

     身体にある疲労は倦怠感というよりは、焦燥感に似ている。最初に何かおかしいと違和感を覚えたのはこの時だ。自分がどこへ向かおうとしていたのか判然としない。ここまでどれほど走ってきたのかも朧げだ。
     行き先も目的も何も分からないことに気付いて立ち止まる。見渡せば、夜の街が暗いことなど道理だが、一際暗く感じた。双眸は子供の頃から夜に慣れている。こんなにも夜闇を深く感じたことなどない。
     瓦屋根の上に立ち尽くし、ぐるりと一周風景を見渡す。既視感のある、しかし、見知らぬ風景だ——と感じた。嫌な予感、あるいは不安感に似たものが足元から這い上がる。
     やけに心許ない気分に襲われたその時、不意に名を呼ばれた。
    「宇髄? ——やはり宇髄か」
     こんなところでどうしたと問いながら、宇髄の立つ屋根へ現れたのは、煉獄だ。軽々とした足取りで真っ直ぐに宇髄の方へと近づいてくる。
    (あぁ、良かった。連れていかなくては)
     頭のどこかで安堵する自分に驚いた。
    (——いや、待て。俺は煉獄を何の目的で、どこへ連れて行くつもりだ?)
     心臓は焦りで早鐘を打つ。関節は緊張を帯びているように軋んで動かしにくい。やはり何かおかしい。そう感じていながら。
    「来いよ」
     宇髄は煉獄の手首を掴む。とにかく早く早くとそればかりで心が塗り潰される。どこへ行くのかを問う煉獄へ答える言葉すらない。
    (だが、煉獄へ来いと口走ったのは確かに俺だ)
     自分の身体のどこかが、自分の関知できない動きをしている——そんな印象だった。
     無性に喉が渇いていた。いや、腹が減っていたのかもしれない。耳の中では風の音が舞うようで、探し当てた言葉はすぐに消し飛んでしまう。宇髄へ何かを語り掛けた煉獄の唇が動くのを見ても、そこから言葉が拾えない。
     煉獄が宇髄の腕を引き、行こうと示す。掴んだ手首を解放してやり、ゆっくりと足を進める。煉獄が宇髄の動きに同調するのを見留めて徐々に速度を上げてゆく。

     軽やかな足音は宇髄の左で半歩後を着いてくる。先導しているはずの宇髄がまるで追われているようだ。やがて本当に自分が逃げているような心持ちになり、ふと空を仰ぎ見た。相変わらずどこへ向かっているのか自分でもわからない。不思議なことに煉獄も行き先や目的を全く尋ねてくることのないまま宇髄についてきている。ただ、より深い夜へ夜へとふたりで迷い込んでゆく。
     まるで逃避行だ。
     それも悪くない。否、ずっとそうしたかったのかもしれない。何もかも投げ打って、どこか遠くへ。攫うように煉獄だけを連れて、足の続く限り遠くまで。その愛は甘美で果てしなく幸福だ。
    (そんなはずがあるか)
     自分のものではない幻覚に囚われそうになるのを感じて、宇髄はその思考を振り切った。例え自分の中にそんな夢想があったとしても、煉獄がそこに追従するはずがない。
     思考だけではなく、身体の知覚も何かがおかしい。自分が当たり前に使っていたはずの体の一部が乗っ取られてでもいるような——。
     いや、おそらくそのものだ。脚が走るためにしか使えないことに気付く。宇髄が制御できる身体性が極度に制限されていて、自分の意志で静止することも儘ならないことを感じ取った。
     ただ夜闇のより深い方へと向かうばかり。焦燥感をより煽る乾きも相変わらず強い。それらが示す可能性にぞっとする。

     自分は鬼化しているのではないか。

     人が鬼になることは理解している。しかし鬼化の経緯を実際に目の当たりにしたことはなく、ましてや当事者の主観的な感覚は知る由もない。
     けれどもし今自分が感じている説明しきれぬ感覚が人としてのものではないとするなら。そこから派生している行動は人外のものではなかろうか。つまり、近くまで迫る朝から逃げ、どこか闇に隠れて煉獄を喰らうつもりなのではないのか。

     視界の端で煉獄を見遣る。彼の左手は腰にあり、日輪刀を意識している。宇髄の行動を完全に信用しているわけではないようだ。やはり煉獄は追従しているのではなく、宇髄を追っていると見える。
    (ならお前に預けるとするか)
     奥歯を噛み締め、強引に身体を捻る。脚が己の制御下になくとも、どうにかすれば身体の均衡を崩すことは可能だ。
     ぐらつく体は足場にしていた屋根のない場所へと無意識的に片足を踏み出す。風景が回転し、足がどうにか壁を蹴る。落下速度を殺して縦にもう半回転すれば、足が地を捉えた。片膝を立て、両手を付いて着地。無様で腹が立つ。関節が錆び付いているような、不快な違和感だ。
     そしてその違和感とは別の気配を背後に捉えて首を巡らせる。
     背後。上方。暗い空に広がる炎の羽織。
     煉獄が日輪刀を振り被りながら屋根を蹴って飛び降りてくる。狙っているのが宇髄の首であることは疑いようもない。
     その赫き炎刀が迷いのない太刀筋で素早く振り下ろされる軌跡を宇髄が見送ることはなかった。
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    rica_km

    PROGRESS宇煉・天桃前提の💎🏅です
    💎🏅・🔥🍑は、どちらも従兄弟関係(年齢設定とか詳細は齟齬が出そうなのでw、ふんわりで…)
    🏅19歳(大学生・成人)・🍑16歳(高校生)の3歳差。両思いながら🍑が未成年の上、🏅が注目を浴び易い状況であることから色々堪えているところ
    💎🔥はいずれも社会人で恋人同士
    💎が一人暮らししている部屋へ🏅は泊まりに来るほど懐いているし、秘密も共有している…
    ひみつとつみひとつ◆01◆01 Tengen side
     俺のマンションには、従兄弟の天満が時々泊まりに来る。いや。時々よりは、もう少し頻繁に。
     立地が便利だからというのは理由のうちほんの一部に過ぎない。
     天満は抜きん出た才のせいで少々注目され過ぎているもので、自宅近辺には大抵マスコミ関係の誰かしらが潜んでいるらしかった。横柄だの生意気だの好き放題に言われやすい天満だが、あれで結構繊細なところもあるのだ。注目の体操選手として世間の注目を浴びるのも無理からぬことだが、衆目に晒され続けて疲弊するメンタルが有名税とは到底思えない。フィジカルにだって影響を及ぼすことくらい想像に難くないはずなのに、それでも世間様は若干十九歳の青年を好奇心の赴くままに追い回して好き放題に書き立てる。
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