心に刻む久しぶりに三人のオフが被り、郊外のショッピングモールへ来た。人も少なく、身バレも起きにくいかと思い、郊外へ行こうとなった。
ショッピングモール内の服屋で物色していた時。いつの間にかイヌピーくんが居ない事に気づいた。
「ココくん、お小言が少なくなったな〜と思っていたらイヌピーくんが居ないんですけど。」
「えっ、ホントだ。イヌピー迷子?…………の訳ねーか。この服屋でも一緒に花垣のだせぇ服装について話していたし。」
今は俺の服がだせぇと言った事は目を瞑ります。が俺は!ダサいと!思っていないんで!番組衣装とかそりゃ「オシャレだな〜」「かっこいいな〜」とは思いますよ?でも俺が選んだものだって良くない?……………まぁ今までその服装をカッコイイと他人に言われたことがないけど。
▽
俺らは店内をぐるっと回ってイヌピーくんを探す。すると店内の中央より少し端よりの所にいた。服ではなく自分の足元を見ている様な感じで顔は俯き、その場で棒立ちしている。
「イヌピーくん。何しているんですか?」
「イヌピー、何見てんだ?」
「…………。」
俺とココくんが話しかけても返事がないし、微動だにしない。ぼーっとしている事はあっても声をかけたら返事はしてくれるのに。
「……………っ。」
「イヌピーくんっ?!泣いているんですか?!…………たまたまファンの声聞いちゃってそれが良くない事だったとかですか?」
「いや、イヌピーはそんな理由で泣かないだろ。…………なぁ、イヌピー。お腹痛くなって泣いちゃった?」
「いや、ココくん。流石にその理由の方が無いでしょ。」
もしかしてココくんの中では、イヌピーくんって幼い頃で止まっている?あと数年でハタチだよ。泣くほどお腹痛くなっていたら流石に座り込んだりしているんじゃない?
そんな俺らのやり取りを聞いていたはずのイヌピーくんが言葉を発さず、俯きながら上を指さす。俺らはその指さす方を見上げる。あるのは一面白の天上と店内BGMが流れるスピーカーのみ。
「………上には何も無いですよ?ね、ココく………」
「花垣、少し静かにしてくれ。今、心に刻んでいる所だから。」
「えー、なんで?………ってか心に刻むって何、、、。」
とりあえず、言われた通り静かに待つ。この待ち時間が暇だから、顔面偏差値高すぎる二人を眺める。さっきの発言とあわせて謎な行動をする所が残念な気もするが、面白いからそんな所も含めて俺は結構好き。
俺自身も黙っている事で先程まで聞こえていなかった店内BGMが耳に入ってくる。こういう店内の服屋のBGMって今話題曲を流していたりするよね。……………だからさ、聞こえるはずがないんだよ。俺のソロ曲なんて。黒龍の楽曲ならまだ分かるよ。最近発売されたアルバムに収録された個々のソロ曲の内、、なぜ俺?アルバムのタイアップされている黒龍の楽曲流すものじゃない?
…………と困惑したし、疑問点も多いが純粋にBGMに流れるのすっっっげー嬉しい!しかも!俺の!ソロ曲!!この店内で流れたという証拠を数十秒だけでも動画に納めたい。現実は出来ないから心に刻み込むか。
「…………………って、これか!二人が言っていた事。」
「「花垣、静かにしろ。」」
「はい。」
怒られた。俺も曲が終わるまで静かにして、再度心に刻み込もう。
▽
「二人とも、曲終わりましたよ。」
次の楽曲が流れ始めた頃に声をかけるが、まだ反応がない。先程と変わらず二人とも微動だにせず俯いている。
「あの〜、、、次の店見に行きませんか?」
「花垣は悪魔か?」
「余韻に浸っていたのに。」
なるほど、余韻に浸るとかあるんだな。そんな感想を思っている間に、二人は余韻に浸るのを辞めた様で、俺抜きの感想会が始まっていた。本人目の前に居るんですよ。試聴会でもこの二人から感想は貰っていた。だけど、自分のソロ曲の感想を言葉に発せられて聞くのはまだ、、恥ずかしい。
「花垣のソロ曲って明るくて元気いっぱいに未来へ突き進んでいるって感じの曲なのに、ラストサビ前で急に後ろ振り返ってこちらの存在に気づいていたよって感じで語りかけてそうな雰囲気ないか?」
「わかる。全く同じこと思っていた。そこでさ、一緒に行こ?と静かに手を取る感じもする。」
「わかる………流石イヌピー、解釈一致。」
そう感じてくれていたのなら嬉しいな。俺もそう思って歌ったから。この二人からの感想を聞けるのは嬉しい。だけど―――
「久しぶりの三人被ったオフなのになー。」
「…………っ!」
二人が一斉にこちらへ驚いた顔で振り向く。えっ、急に何?!
「ごめん、花垣。話に夢中になりすぎた。」
「そうだよな、花垣の言う通りだ。せっかく三人揃ってのオフなのに一人にしてすまない。」
花垣の言う通り?………………あっ、もしかしてさっき思っていた事を口にしていた?ちょっと拗ねていたから恥ずかしい、、。
「……………今からは俺のソロ曲でなく、今目の前に居る俺の事を見てくれますか?」
恐らく顔は恥ずかしさで少し赤かっただろうな。そして、そっぽを向いてしまった事でまだ気持ちが消化しきれていない拗ねた態度が表に出てしまったな。
「もちろんだ。常に花垣の事は考えているが、今は目の前の花垣の事を見ている。」
「行動、言動共に…………全てにおいて可愛いの塊か?」
「ココ、花垣は元々可愛いし、そしてカッコイイも兼ね備えている最高のボスだ。」
「そうだな、当たり前のことだったな。」
恥ずかしいけど、そう二人に思われている事は嬉しいな。俺も二人の事は考えているし、カッコイイ所もたまに俺に甘えてくる可愛い所も好き。これは二人が喜びそうだから今日は絶対言わない。
この後、改めてショッピングモールを三人で見て周った。喧嘩したわけではないが、仲直りとしてお揃いのピンキーリングを買い、イヌピーくんが嬉しすぎてSNSにあげて大バズりした。
もちろん事務所内の他グループから俺へ質問攻めにあい、数人からは俺ともリングを買いに行こうと言われた。