Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    wakako_sks

    なんとなく最近の落書きをアップしています

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    wakako_sks

    ☆quiet follow

    むつきよ出来てないお話

    #むつきよ
    firstDayOfTheMonth
    #刀剣乱舞
    swordDance

    すでに夕暮れが近い。東の窓は桔梗色をしていて、開け放たれた南向きの窓からは斜めに橙がかった光が差し込んでいた。くっきりと窓の形に切り取られた橙色は、同じ着物の色をまるで黄金のように輝かせている。
    暑くないのかな。
    加州清光は強い西日の下で眠る男の妙にあどけない寝顔を見ながら思った。
    この本丸は――正確には拡張された二の丸にあたるが――二階建てで、一階には厨や風呂といった水回りがあり、二階にはいくつにも仕切られた部屋があった。以前、まだ本丸の規模がそこまで大きくなかった頃は刀剣男士たちがそこで寝起きしていた。今は空き部屋になっているが、こうして加州のように時々気の向いたものがうろうろとしていたりする。
    とはいえ今加州がここにいる理由はちょっと情けない。自室に口にするのも憚られるような虫が出たため、殺虫剤を焚いているので一時避難してきているのだった。
    すると先客がいた。があがあと大きないびきをかいて寝こけていたのは同じ刀剣男士のひとりである陸奥守吉行だった。別の部屋に移動してもよかったのだが、ひとりになるのはなんとなく心許なくて同じ部屋に留まることにしたのだ。
    加州は日の入ってこない部屋の奥で膝を折り曲げて足の指の爪紅と、自分が入ってきたことにも気づかず寝ている男の顔を交互に眺めていた。起こして話し相手にしてもよかったが、あんまり気持ち良さそうに寝ているのでそのままにしている。
    「俺も寝よっかな」
    ぐっと足を伸ばしてごろりと横になる。少し行儀は悪いがそのままごろごろと陸奥守のそばまで転がる。日の当たらない場所を選んで陸奥守の横に寝転がると、先程までより寝息を近くで感じ心臓がことことと揺れた。
    最初は、この男のことをあまり好きだと思えなかった。加州の成り立ちが本能的にこの男を拒否したのだ。けれど本丸での日々を重ねるにつれ、彼の人となりを知るにつれ、徐々に好ましさを覚えていった。本丸に顕現した時期も同じような頃だったので今では友人のような気安さで陸奥守と接している。
    むにむにと陸奥守の口が動き、ごろりと寝返りを打つ。先程よりも距離が近くなり、陸奥守のゆるく結ばれた拳が清光の手に触れた。
    心臓のことことという音が少し跳ねあがった気がする。なぜそんなふうになるのか加州はその理由を知らなかったけれど、いやな感じはしなかったのでそのまま陸奥守の体温を感じて目を閉じた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    wakako_sks

    REHABILIむつきよ出来てないお話すでに夕暮れが近い。東の窓は桔梗色をしていて、開け放たれた南向きの窓からは斜めに橙がかった光が差し込んでいた。くっきりと窓の形に切り取られた橙色は、同じ着物の色をまるで黄金のように輝かせている。
    暑くないのかな。
    加州清光は強い西日の下で眠る男の妙にあどけない寝顔を見ながら思った。
    この本丸は――正確には拡張された二の丸にあたるが――二階建てで、一階には厨や風呂といった水回りがあり、二階にはいくつにも仕切られた部屋があった。以前、まだ本丸の規模がそこまで大きくなかった頃は刀剣男士たちがそこで寝起きしていた。今は空き部屋になっているが、こうして加州のように時々気の向いたものがうろうろとしていたりする。
    とはいえ今加州がここにいる理由はちょっと情けない。自室に口にするのも憚られるような虫が出たため、殺虫剤を焚いているので一時避難してきているのだった。
    すると先客がいた。があがあと大きないびきをかいて寝こけていたのは同じ刀剣男士のひとりである陸奥守吉行だった。別の部屋に移動してもよかったのだが、ひとりになるのはなんとなく心許なくて同じ部屋に留まることにしたのだ。
    加州は日の入ってこない部屋の 993

    wakako_sks

    REHABILI以前にぷらいべったーに投下した五夏たとえるならウユニ塩湖。鏡面のように凪いだ海に白いテーブルクロスの掛かったテーブルセットが浮いていて、夏油はそこに腰掛けているのだった。どういう原理なのかはわからないが、そこではそれが自然なことだと理解している。
    周囲には何もなく、空と溶け合う水平線は夕焼けの赤に染まっている。少し上を見上げれば雲が折り重なり、淡く青に溶けてそこから藍。見事なグラデーションが描かれている。
    顔を正面に向けると、そこには五条のふぬけた笑顔があった。
    「何食べたい?」
    問われて、夏油はそうだ、ここはレストランなのだったと思い出す。
    「ラーメン半チャーハンセットと唐揚げ」
    「お前いつもそればっかだよな」
    半ば呆れた表情の五条がつぶやく。何食ってもいいのに。
    「俺はね、ステーキ丼とデザートにパフェ」
    五条がそう言った瞬間、影のようなものがあらわれ瞬く間にテーブルクロスの上に給仕がされていく。気づけばテーブルの上には馴染みの中華食堂のラーメンセットと、その三軒隣にあるステーキ屋のランチセットが並んでいた。
    「食べようぜ」
    いただきます、と手を合わせ箸を持つ。唐揚げを齧る。いつもに比べて味が薄いような気がして胡椒を 1193

    related works

    wakako_sks

    REHABILIむつきよ出来てないお話すでに夕暮れが近い。東の窓は桔梗色をしていて、開け放たれた南向きの窓からは斜めに橙がかった光が差し込んでいた。くっきりと窓の形に切り取られた橙色は、同じ着物の色をまるで黄金のように輝かせている。
    暑くないのかな。
    加州清光は強い西日の下で眠る男の妙にあどけない寝顔を見ながら思った。
    この本丸は――正確には拡張された二の丸にあたるが――二階建てで、一階には厨や風呂といった水回りがあり、二階にはいくつにも仕切られた部屋があった。以前、まだ本丸の規模がそこまで大きくなかった頃は刀剣男士たちがそこで寝起きしていた。今は空き部屋になっているが、こうして加州のように時々気の向いたものがうろうろとしていたりする。
    とはいえ今加州がここにいる理由はちょっと情けない。自室に口にするのも憚られるような虫が出たため、殺虫剤を焚いているので一時避難してきているのだった。
    すると先客がいた。があがあと大きないびきをかいて寝こけていたのは同じ刀剣男士のひとりである陸奥守吉行だった。別の部屋に移動してもよかったのだが、ひとりになるのはなんとなく心許なくて同じ部屋に留まることにしたのだ。
    加州は日の入ってこない部屋の 993

    recommended works