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    saku_hpyuri

    hpyuのなにか

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    saku_hpyuri

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    キスのお題をやろうとした頓挫したのを供養

    「かなり伸びたな、髪」

     言って、ホップはわたしの後ろ髪に触れた。旅を始めたころよりも伸びているが、長さは胸の半分を覆う程度で、あのころに比べれば確かに伸びている。チャンピオンとして忙しい日々を送っているが、手入れを怠ったことはない、はず。
     かつてのチャンピオンであったダンデさんの長さにはまだ届かない。彼が髪を伸ばしていたのはチャンピオンの象徴だったかららしい。らしい、とはいうが、すでにチャンピオンではないのに未だにダンデさんの髪は長いままだ。
     切らないのかと一度聞いたことがあるけど、彼は穏やかに笑うだけで何も答えてはくれなかった。

    「手入れとか大変だろ」
    「うーん、まあ」

     わたしは曖昧に答える。そこまで長くはないが、いかんせん、わたしの髪は量が多い。一見細く見えるけど、よく見れば結構なボリュームなのだ。
    一人掛け用のソファに腰かけたわたしの後ろにホップは立ったまま、わたしの髪を撫でつける。わたしは頭を後ろにもたれかけさせ、背後に立つホップに手を伸ばした。
     ホップは不思議そうにわたしを見下ろして、わたしはホップの肩から零れる紫色の髪を一房手に取る。
     わたしより短い、けど、旅をしていた時より幾分か伸びた紫色の髪が肩から零れ落ちる。ホップの髪は鎖骨の辺りにまで伸びていて、わたしと違って後ろで一つに縛っているのだ。
     わたしも結ぶことはあるけど、大体オフの日は髪を下ろしていることが多い。
     今日はソニアさんが遠征で別地方に行っているため、ブラッシータウンの研究所にはわたしとホップしかいない。たまたま今日がオフだったから遊びに来ただけなのだ。

    「オレのは忙しくて髪を切りに行く時間がないだけだぞ」
    「長い髪も似合ってるよ?」
    「あのなー」

     見下ろしたまま、ホップの顔が赤くなっていく。
     普段から人のことをやたらめったら褒める割に、自分が褒められるということには未だに慣れないらしい。
    わたしは面白くなって、ホップの髪を指先で弄り始める。男の人の割にさらっとしていて、指通りがスムーズなのはちょっと女子として負けた気がする。
    そんな風にホップの髪で遊んでいたら、ふいにホップの顔が近づいてきた。

    「ホップ?」
    「ユウリの髪のほうが、綺麗だし似合っているんだぞ」

     髪を弄っていた手がふいに重ねられる。ホップを見上げたままの体勢でいると、彼は空いているほうの手でわたしの首筋を撫でて、下ろしていた髪を一房掴んだ。
     そのまま流れる動作で、平然とわたしの髪にキスを一つ、落としたのだ。あまりにも自然すぎる流れで、ホップは首を撫でて、髪にキスをしていったのだ。
    そんなすごいことをやってのけたホップは、何もなかったみたいにすたすたと自分のデスクへと戻っていく。
     残されたわたしは一人ぽつんとその背中を見ながら、みるみる自分の顔が赤くなっていくのを感じるだけだった。
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    saku_hpyuri

    MAIKING孤独を愛する彼女と帰る場所の書き下ろし部分一部抜粋
    こんな感じにややオカルト?テイスト入ります。
    どこんっ!

     “それ”は、突如として地上へ振り落ちた。誰もが興味を持ち、誰もが関心を持った。人の手ほどの大きさをした“それ”は真っ黒い塊としてガラル地方のとある場所に落下した。
     それがなにか、この場にいる誰も知らなかった。ただただ、好奇心に駆られてしまい“それ”が落ちた場所に人々は集まる。
     ふと、人々は口を開く。
    『これはなんだろう』
    『隕石だろうか』
    『ずいぶんと小さいな』
    『ポケモンの隕石かな』
     口々に声を上げ、各々好き勝手な感想を述べる。
     そうして、誰かが言った。

    『触ってみよう』

     一人の若者が好奇心に駆られ、落下した“それ”に触れた。なんともない、ただの石にしか見えない“それ”は触れた途端、ぴきっと歪な音を響かせた。割れ目がめきめきと嫌な音をたてながらその場に木霊する。
     そして聞こえたのは、絶叫。

    『――――――――――――――――――ッ!』

     地上を振るわせる絶叫がその場に振り落ちる。
     鼓膜が振るえ、立っていることすらできない。
     絶叫を発しているのは若者ではない。歪な悲鳴を響かせながら、隕石と思われた“それ”が地鳴りを轟かせる。地面が揺れ、地割れが起 1299