ふるつわものの唄 当代の語り部は、気難しいことで知られた人だった。
コンゴウ団には代々、昔話や神話、歌を後世へ伝える役割を担った人間がいる。それが語り部で、子供たちは物語の中から様々な教訓や信仰を学ぶ。祭りや集会などで人前に立ち、我らが神を語ることが許されているのも語り部だけだ。
一つ例外があるとすれば、口伝でしかないそれが途切れることのないように、語り部の後継者以外に長もその全てを学ぶということだ。
「りーだー、お話聞かせて」
「シンオウさまのお話してー」
「ああ? ったく仕方ねぇな」
勢い良く足に纏わりつかれる。なんとかよろめくことなく耐えて、自分の服の裾を掴む子どもたちの頭を撫でた。本来それは語り部の仕事だが、子供たちが自分のもとにやってくる理由も知っている。今はきっと楽しい物語くらいにしか思っていないだろうが、団の伝統に興味を持つのはいい事だ。
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