Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    冴木理由

    @rsaeki_18

    20↑腐女子/一応字書き/リハビリ中
    当面は右skで書いたものを置く場所になる予定

    アイコン◆Picrew「やわらかめのネコヤギ」

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    冴木理由

    ☆quiet follow

    書く気力がなくなって放置してるのでここらで供養🙏
    長なら団に伝わる昔ばなしや神話、歌なんかも網羅してるんだろうな〜という願望

    ##セキさん
    ##コンゴウの風習

    ふるつわものの唄 当代の語り部は、気難しいことで知られた人だった。

     コンゴウ団には代々、昔話や神話、歌を後世へ伝える役割を担った人間がいる。それが語り部で、子供たちは物語の中から様々な教訓や信仰を学ぶ。祭りや集会などで人前に立ち、我らが神を語ることが許されているのも語り部だけだ。
     一つ例外があるとすれば、口伝でしかないそれが途切れることのないように、語り部の後継者以外に長もその全てを学ぶということだ。

    「りーだー、お話聞かせて」
    「シンオウさまのお話してー」
    「ああ? ったく仕方ねぇな」

     勢い良く足に纏わりつかれる。なんとかよろめくことなく耐えて、自分の服の裾を掴む子どもたちの頭を撫でた。本来それは語り部の仕事だが、子供たちが自分のもとにやってくる理由も知っている。今はきっと楽しい物語くらいにしか思っていないだろうが、団の伝統に興味を持つのはいい事だ。
     セキはこの後の予定と、本日中に片付けなければならない仕事を頭の中で並べる。急ぎのものはないし、少しくらい良いだろう。

    「ほらよ、なんの話がいいんだ」

     子供たちの腹を抱えて持ち上げる。足をばたつかせてはしゃぐ様は無邪気で愛らしい。子供が元気だということは、集落が平和だということでもある。

    「きゃー」
    「あははは」

     その場でくるくる回ってやると一層高い笑い声が響いた。騒ぎを聞きつけて、数少ない他の子どもたちも寄ってくる。もっとして、りーだーずるいぼくもやって。勢い良くぶつかられて、危うく転びかける。抱えた子供を下ろして、セキは尻餅をつくように座り込んだ。

    「ほら、遊びはしめぇだよ。今からシンオウ様の話を聞かせてやっからな」

     胡座をかいた膝を叩くと、早い者勝ちとその上に座られる。落ちないように支えてやって、適当に周りに腰を下ろした子供たちの顔を見回した。

    「どの話にすっかなあ」
    「最初にシンオウ様に会った人のお話がいいー」
    「お、いいな。俺もその話大好きだぜ。じゃあそれにしよう」

     子供の小さな頭を撫でて笑いかけた。咳払いして、声と空気を整える。

    「そら、始めるぞ。昔々あるところに……」
     今はいくらでも諳んじることのできる、何遍もの物語。勿論セキだって最初はそうではなかった。


      ◆


    「そら、また間違ったよ」
    「……ごめんなさい」

     謝ったセキがそのまま口をつぐむと、狭い室内には重い沈黙が流れた。気まずさに、少年は小さな手で服の裾を弄る。

    「もう一回」
    「っ、はい!」

     声変わり前の高くて甘い声。集落の大人はみんなセキの声を褒めたが、この老婆だけは一度も好意的な反応をしたことはない。
     当代の語り部である嫗は、気難しいことで知られていた。いつも眉間に皺を寄せて、同年代の者達でも彼女が笑ったところを見たことがないと言う。
     セキは少し前から、長となるための修業の一環で、その語り部の元で教育を受けていた。いくつあるのか、途方もない数の物語を全てすらすら暗誦できるようになるまで終わらない。ずっと座ったままなので足が痛いが、泣き言は言えなかった。集中するために目を閉じて、体に染み込ませるように言葉を紡ぐ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    冴木理由

    TRAINING仔セキさんと相棒の話。
    以前書いたお話のセキさんの入墨についても少し掘り下げてます。
    仔セキさんと相棒ss/選択の話1.

     セキが刺青を入れたのは、12歳になった頃だった。右腕全体と左の手の甲に模様を入れるのは覡の伝統だ。シンオウ様に捧げる為のものなので、祭りや儀式の時以外は人目に触れぬよう布を巻いて隠すことになっている。そのため、父の腕にもあるが息子であるセキすら見事な彫り物をじっくりと見たことはなかった。
     成長途中の子供の体ということもあり、広範囲の図案は数度に分けて彫られた。セキが痛みや熱から開放されるのにかかった時間は丸1年ほど。相棒が寄り添い支え続けてくれた歳月だった。



    「肘の墨は、大人でも痛みに泣き叫ぶ者がいるくらいなんですよ。声も上げずに耐えきるとは、流石セキ様。次の長は違いますなぁ」

     どこか含みを感じる軽口に、セキが応えることはなかった。体を押さえつけていた男達が離れ、悲鳴を殺すために噛んでいた布を吐き捨てる。歯を食いしばり過ぎたせいで顎に違和感があった。気が遠くなるほどの激痛は耐えきったとはいえ、余韻のように震える身体を抑えることはできなかった。そんな状態で話すことができるわけもない。
    8009