逢魔時に棲む者 その日はいつもと何ら変わりない一日だった。
時間はあるけどお金は無い、高校生の夏休み。暇を持て余していた花垣武道は、バイトが休みで何も予定が無いという松野千冬を誘ってファミリーレストランでだらだらと日中を過ごした。
平日午後の閑散期にパフェとドリンクバーのセットを注文すれば、長時間居座る高校生でも追い出されることなく涼しい店内でしゃべり倒していられる。しかしそれもディナータイムまで。夕刻になり店側の無言の圧力を察して退店した。外に出るとまだむわっと蒸し暑い空気が身体に纏わりつく。
「大分日は傾いたけどまだまだ暑ぃな、外」
「俺らさっきまでめちゃ冷房ガンガンかけられてたし、余計だな」
「わざと寒くして帰らせるっていうのあからさま過ぎねえ?」
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