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    kago_me__gu

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    kago_me__gu

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    戦闘描写が死ぬほど苦手で抜け出せないって言う……頑張れ私

    ビリワがでてくるとこまで     ノイズキャンセリング

     久しぶりの休日を一人堪能するフェイスは、グリーンイーストの街に足を運んでいた。勿論この休暇は、フェイスのみに与えられた物ではなく、ウエストセクター全体で図られた休暇である。ジュニアはバンドの練習、キースはディノと共に、ウエスト居住区で飲み会をしている。
     フェイスがグリーンイーストに足を運んだのはただの気まぐれで。「たまには一人で散歩でもしてみようか」という、当たり障りのない一つの理由から、この街を訪れていた。
     グリーンイーストと言えば、ウッドデッキの歩道に差し込む木漏れ日が、大層美しい町だ。木漏れ日を朧気に反射させる歩道に、軽快なリズムとともに足を落とすフェイスの気持ちは、いつもと比べ幾分か落ち着いたものとなっていた。

     そんな、とある昼下がり。
    天下泰平のその場所へ。土崩瓦解の合図が、警鐘となり響き渡った。

     突如として飛来したサブスタンス。その姿を見るや否や、住民達はその場を後にする。避難誘導をしようにも、フェイス一人の力では無理なことは、誰が見ても分かることである。イーストは、今はパトロールの時間では無いはずだ。なら、イーストの面々がこの現場に辿り着くのは、まだ先の可能性が高い。隣接するウエストはもちろん休暇で非番であるし、ノースも駆けつけるのには時間がかかるだろう。サウスなんぞ例外だ。ふと、私服のポケットを上から撫でるフェイスは、安堵のため息をひとつ、静かに零した。
    (たまたまインカム入れっぱでよかった…。)
    基本的にインカムは持ち歩かない主義のフェイスだが、昨日の緊急出動の際、私服のまま現場へ急行した為、インカムを入れっぱなしにしていたのだろう。ポケットから取り出したそれを耳に運び、十九歳の青年から、「ヒーロー」へと、変容する。

     開戦から、十分ほどの時間が経った。未だヒーローの増援は来ていない。ここでふと、フェイスは疑問に思った。「ヒーローが現場に着くのは、こんなに遅かったか?」と。エリオス内では、エマージェンシーコールが届いてから五分以内に現場に急行することを鉄則としている。五分はとうに過ぎている。
    (まさか、エマージェンシーコールが鳴ってない?でも、本部からそんな不調一言も言われてないはず。まさか)
    まさか、イクリプスの仕業か?
     フェイスがそう思い立ったと同時に、聞き慣れたくもない、聞き慣れた爆発音が響く。これは。この、音は。
    「シャムス…!」
    「あ?んだよ、なんでヒーローがいんだぁ!?」
     やはり、エマージェンシーコールがヒーローに届いていない可能性が高い。「なんで」とジャムズが発言した瞬間、そのことを瞬時に理解してしまったフェイスは、一人苦渋の顔をする。つまり、ヒーローの増援は望めない、ということだ。実際、フェイスが一人でシャムスを倒せるかと聞かれれば、五分五分だろう。もし倒せたとしても、フェイス自身が大ダメージを食らう展開になることは、約束されたも同然だ。
    (けど、逃げちゃダメだ。)
    増援は見込めない。勝てるか分からない。死ぬかもしれない。でも、自分が挑む以外、この場所を死守する手が、無いのなら。
     ヒーローとして立ち向かうフェイスは、一人、心の中で自嘲した。一昔前の自分であれば、こんな場面一目散に逃げていたであろうこと。たまたま訪れた場所が、グリーンイーストだったと言うこと。そして、増援が見込めないこと。一瞬、目を伏せるフェイスはその思考に深ける。が、何を思おうと、何を考えようと、この状況が変わることは無い。目の前の敵を倒せば、自分を自嘲しなくても、良いのだろうか。

     シャムスの爆発音と共に爆風が巻き上がる。フェイスは体制を低くし、爆風を交わしながら、距離を詰める。一定の距離まで詰めたところで、フィンガースナップによる攻撃。爆発に相殺された次の瞬間、フェイスは立ち込める黒雲へと入り、シャムスの腹に蹴りを入れる。足を掴まれようとした瞬間、音の追撃。怯むシャムスを横目に、フェイスは更に能力での追撃を続ける。シャムスの能力は、近距離だからこそ、その驚異的な威力を発揮できる。が、フェイスの能力は、その逆で。遠距離と近距離では、圧倒的に遠距離の方が有利だ。
    (このまま一方的に攻撃を続けられれば、もしかしたら…)
    そう思えたのも束の間、フェイスの追撃から離脱しようと試みたシャムスは、地面を大きく爆破させ、土煙と共に姿を晦ます。突然のその行動に不意をつかれたフェイスは、シャムの気配を完全に失う。
    「オラァッ!!!」
    「っ!」
    フェイスの後ろから姿を現したシャムスは、フェイスの背中に向け、大きな爆発を起こす。フェイスは、音圧による防御を展開したお陰で、攻撃をもろに食らう、最悪の事態を免れたものの、その体は遠くまで吹き飛ばされる。受身をとるまもなく、フェイスの体は地面に叩きつけられた。距離を詰めるシャムスは、フェイスを仕留めるであろう最後の一撃を構えている。やっとの思いで体を起こすフェイスは、その瞬間を、脳裏に刻む。

    「死ねぇっっ!!!!」
    大きな爆発と、耳を聾する炸裂音が、グリーンイーストに響き渡った。

     その攻撃を最後に、フェイスの体は、地面に磔になる。
    「フェイス!!」
     その聞きなれた声。
     音が消える最後に聞いた、声だった。




     ノイズキャンセリング




     「レオ、ごめんな。折角来てくれたのに…。」
    「いーよ、兄ちゃん。バンド練習なんていつでも出来るし。またやろーぜ!」
    「うん。ありがとう。気をつけて帰るんだよ、」
    「わーってるよ。」
     同日。兄の元でバンド練習をしようと足を運んだジュニアは、早々に帰路を辿ることとなった。急遽兄の方に仕事が入ってしまったのに、「練習やろう」とも言えず。かと言って、早くタワーに帰ったところで、飲んだっくれに巻き込まれるだけか、と考えれば、自然とその足は止まってしまう。イエローウエストを歩こうにも、行きたい場所は無い。
    (ほかんとこ…。サウスとかにでも行ってみるか?)
     前から話を聞いては気になっていた、ウィルの花屋にでも行ってみようか。あまりレッドサウスに赴くことがないジュニアは、徐に携帯を取り出す。ウィルは今忙しいだろうか。忙しくなければ、一度電話をかけて道を聞いておきたい。が、忙しい中電話を取らせるのも、気が引ける。一度電話をかけて、出なかったら諦めよう。そう心の中で決断したジュニアは、通帳アプリを開く。「ウィル・スプラウト」と表示されたアイコンをタッチしようとするが、それは叶わない。
    「グリーンイーストでサブスタンスが出たって!」
    「まじか!」
    「……は?」
     市民の会話を横目に、ジュニアは驚愕する。コールが、届いていないのだ。放置しておけば、グリーンイーストは壊滅状態ー市民のへの被害が出ることは、免れないだろう。
    (今から言って間に合うか!?とにかく急がねぇと……!)
     手に馴染むインカムを耳元へ。ヒーロースーツに身を包んだジュニアは、イエローウエストの街を離れた。

     ジュニアが着いた時、既にサブスタンスの姿はなかった。その代わり、ジュニアの目に焼き付いたのは、ボロボロになりながらも応戦するフェイスと、傷を負いながらもフェイスを追い詰める、シャムス。言葉よりも先に足が動いたジュニアは、今にもフェイスに振りかざそうとしている攻撃を止めようと、戦闘態勢に入る。ピックを持ち直し、ギターをかき鳴らそうとした、瞬間。

     大きな爆発と、大きな炸裂音。

     爆風に巻き込まれ、後方にまで体が飛ばされたジュニアは、何とか受身をとりつつ、軋む体を無理やり起立させる。まだ土煙が晴れない戦場に目をやるが、二人の姿を視界にいれることは、叶わない。
    「フェイス!おい!どこだ!」
     いつもの「クソDJ」という呼び方はどこへやら。緊急事態に対処しきれない脳は、彼の口調を顧みない。必死の思いでツチケムリヲかき分ける、その先に、見慣れた黒髪が反射する。ぐったりと地面に倒れ込む彼の本へと駆けつけるものの、その顔からは覇気が感じない。
    (脈はある。けど、呼吸が荒いし、背中の傷が酷い。)
     一刻も早く、フェイスをエリオスタワーへと連れ帰ること。これがジュニアに課された、使命だった。土煙が立ち込めている今が、逃げるには最高のタイミングである。自分より一回りも、否、それ以上かもしれない人間を担ぎながら帰るのには、些か骨が折れる。脚に力を込め、シャムスが動くよりも前に、ジュニアは動こうとした。
     しかし。
     近くで響く爆発音。まさか、と振り返れば、そこには、捉えたくもない天敵の姿。爆発を相殺するため、ジュニアは決死の思いで雷を落とす。しかし、相手は怯むことなど辞書にないかのように、激しい攻防を続ける。これでは逃げ切るどころか、ジュニア自身まで共倒れになる可能性が否めなかった。せめて。せめて、もう一人ー。

    「稲妻ボーイ、伏せて!」
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    kago_me__gu

    MOURNINGenstついんくちゃんのシングルのタグから思いついたフェイジュニのお話再掲です。
    タグ↓
    # 君へ送るLoveletterはショコラ色
     鼻歌交じりにフェイスがライトに当てる一通の手紙。この後持ち主の元を離れることとなるこの手紙は、果たしてどんな結末へと自分たちを導いてくれるのか。フェイスは高鳴る胸をそっと抑えた。


     事の発端は、とあるアイドルのCD広告だった。
     二日前、ジュニアとフェイスのオフがたまたま重なり、二人はイエローウエストアイランドにある、ニューミリオン一のCDショップ、DISCNEWMILLIONに足を運んでいた。元々好む音楽の方向性が異なる二人は、足を運ぶ先は同じでも、足を運ぶコーナーは全く異なる。着いた矢先に単独行動をとる二人が再開したのは、別れてから2時間以上も経った時だった。
     今日は帰りにダイナーでもよろうか、という話でまとまりそうな時、ジュニアはふと、足を止める。熱心に見つめるその先が気になったフェイスは、ジュニアの視線の先へと目を向ける。そこには、恐らく新しいシングルを出すのであろうアイドルの、可愛らしいMVが流れていた。しかし、その音楽の方向性は、ジュニアが好むものとは違う。はて、何がジュニアの足を止めたのか。
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