お題 悪童 愛情表現 海に行く登り初めてわずか30分、自分の体力が思っていたよりも快復していない事を実感した七海健人は、疲労と自身へのあきれが混じった、ため息を1つ着いた。
渋谷で散ったと思った自分の命、確かに消えたはずこの身は、何故か今、五体満足のまま動いている。
「いえ、これで満足とは…」
そこまで独り言を言いかけたが、言葉は続かなかった。
痺れる指先、思うように曲がらぬ爛れた腕、すぐに息があがるほど弱った肺、他にも後遺症は多々あるが、七海健人は間違いなく生きている。
死への旅路を辿った者達に思いを馳せれば、まさに満足と言っても過言では無いだろう。
すうっと、息を吸って深く吐き出す、深呼吸は息を吐き切る事が重要だ。吐き切って、また息を吸った途端、新鮮な空気が脆い肺に流れ込んできた。
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