甘い話「ガイア」
ゆったりとした優しい声に名を呼ばれ、伏せていた瞳を上げてみれば、光を受けて輝くカトラリーの上に乗せられた一口分のアイスクリーム。ぱくりと口に含むと、濃厚で香り高いカカオの味が広がる。
その甘さに自然と口が緩むガイアをディルックが優しい瞳で見つめていた。
「美味しい?」
「うん。……ほら」
自身の手元にある透き通った黄金色にカトラリーを差し込んで、少し多めに掬い取る。目の前に座っているディルックの口元へ差し出してやれば、嬉しそうに口元を弛めて、ガイアと同じように口を開けてみせる。
ゆっくりと迎え入れられたカトラリーを引き出して、形のいい唇が動く様を眺める。
「……ん、それも美味しい」
ガイアが食べているシャーベットに使われている果実と同じ赤い瞳をゆるりと眇めてディルックが微笑む。どうやら育ちが良く舌の肥えたディルックのお眼鏡に叶ったようだ。
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