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    白流 龍

    @houhoupoteto

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    ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    白流 龍

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    #ディルガイワンドロワンライ 海
    この鼓動を波の音でかき消して

    #ディルガイワンライ
    dirGaiWanRai
    ##ディルガイ

    波の音がする。



    砂浜で、ギリギリ波が届かないところで体育座りをする。
    太陽がギラギラと照りつけ、ジリジリと暑い。このまま服を来たまま海に入ろうかな
    そんな事をぼーっと考えていた。

    「わっ」
    ぼすっという音と共に視界が暗くなる
    「熱中症になるよガイア。ちゃんと帽子かぶって」
    「え、あ…ありがと」
    ディルックはふわりと笑って俺の隣に座った。
    「なに考えてたの?」
    「え…と、海に入ろうかなって。」
    「じゃ入ろっか!!」
    でも服が、という間には既に腰までつかっていて
    「ガイアもおいでよ気持ちいいよ!!」
    なんて誘われたら入らないわけには行かない。
    ちゃぷ、と足が波につくと心地よかった。
    「うわっ!!」
    「はははっ」
    頭から海水を浴びせられ一気にびしょ濡れ
    「悔しかったらガイアもやってみなよ」
    「…くっそー!!」

    物心ついた時から、一度心の中で相手の反応を伺ってから発言する癖がついていた。
    でもこの時、初めて自分の感情を表に出せた気がする。
    今まで、色々な感情からディルックには素直な気持ちも表情も出来ずに来たけれど、なんとなく、ディルックがそれを嫌がっているのはわかっていたから。

    「やったなこの!!」
    「僕だって負けないぞ!!」
    いつの間にか気が引ける、なんて気持ちはなくなっていて、全力でディルックと取っ組み合っていた。それも楽しくて仕方がなかった。
    ディルックもそうだったんだろう。すごく、嬉しそうだった。
    「はー…つ、疲れた…」
    「あはは。僕もこんなにはしゃいだのは初めてだ」
    「えっそうなの?」
    疲労から砂浜に寝転がっていた俺は起き上がる。
    ディルックは少し恥ずかしそうにした。
    「だってほら、家に子供って僕だけだったろ?父さんは忙しいし、アデリン達だって一線は引いてるし…モンドの同い年くらいの子達ともなかなか遊べないし…だから、」
    膝に顔を埋めながら、ちらりと目だけ除かせて
    「ガイアが弟になってくれて、本当に嬉しいんだ」
    そしてまた目が見えなくなった。
    それをいいことに俺も赤面する。
    「そ、んなこと…思っててくれたんだ…」
    麦わら帽子のつばを両手で下にさげて、見えてないのに顔を隠して
    「あ、ありがと…」
    そんな素直な気持ちを伝えたことなんて初めてだった。
    「…あ、あのね、ガイア」
    目の前に、両手に乗せられているのは小さなホラガイ
    「きれいだったから拾っちゃった。ガイアに色が似てるから」
    透明感のある水色。夕日があたって煌めいている。
    「ホラガイってね、耳に当てると波の音が聞こえるんだよ。落ち着くんだ。…そんなことも誰かに話せなくてずっと一人で思ってたんだ。」
    眉を下げて、頬をぽりぽりとかきながら、
    そんな子供らしい気持ちを素直に伝えられる相手もいなくて、寂しかったのかな。
    …俺も、そうだったな。
    ホラガイを耳に当ててみる。
    「うーん…目の前で波の音が鳴ってるからわかんないなぁ」
    「えっあっそうか」
    そしてお互いの目を見合って。笑いあった。
    その日帰るとびちゃびちゃの服を砂まみれにしていたことでアデリンからの雷が落ちた。



    さぁさぁと、砂浜が優しく波に撫でられているような音。
    目を瞑ると眼前に広がる景色。あの時の砂浜。
    この所忙しく、気持ちが穏やかではなくなっていたな、と。
    そんな中、ディルックからの告白で、頭が回らなくなっていて。俺の気持ちも知らないで、とイライラもしていたから。
    自室の棚に飾っていたその水色のホラガイで試してみたのだ
    「…懐かしいな。」
    ぽつり、口から出た言葉。
    …あれから色々あったから、もう過去のようには戻れないけれど、
    ディルックの気持ちは素直に嬉しかったから。また、隣にいるのも悪くないか、と。
    「よし」
    心臓を大人しくさせるために、きゅ、と胸の前でホラガイを握った。

    呼び出した海岸には既に赤い姿。
    「遅いぞガイア、さん」
    「はは、悪い悪い。まぁ座ろうか」
    不満そうなディルックに、片手をあげて挨拶をする。
    二人で並んで座る。お互い大きくなりすぎた。
    「なんだ急に」
    「お前がそれを言うのか?この前唐突に騎士団に来てのあの横行だったろう」
    「そ…れを言うな…」
    両膝に隠れる顔は、きっとあの時と同じ。
    「…波の音を聞きながら、過去を振り替えるのも悪くないと思ってな」
    素直になっても、いいのかなと。
    「どういう…」
    「覚えてるか?」
    それは片手に乗るほどの大きさのホラガイ
    「…もちろん、覚えているさ。…僕が、君にあげたものだ」
    オレンジ色の空の中、その柔らかな笑みは何年ぶりに見たのだろう
    「…この前の、事だが」
    ぽりぽりと頬をかきながら、
    すっと立ち上がり、覚悟を決める。
    「…イエス、だ。ディルック。お前が好きだよ」
    お互いの目があう。…無表情のディルックに、堪えられなくなり徐々に視線をそらす
    「…なんか言えよ」
    あんなにかっこつけて言ったのに、今度は恥ずかし過ぎて両手で顔面を覆う。
    その手を外されると、目の前にはディルックが立っていた。
    そしてそのまま片膝をつきまるで姫への言葉のように。手の甲へ、キスを落とされる。
    「君を永遠に愛すると誓おう。ガイア」
    「なっ!?」
    ダメだもう脳が煮えそうだ
    腕を振り払い走り出す。そして、
    「何をっ…」
    「お前が悪い!!」
    上半身が濡れたディルックは、一瞬怯む。しかしそれもつかの間で、
    「…覚悟しろよ」
    「な、何上着脱いでるんだよ…ちょっこっちくんな!!」
    久々にお互いびしょ濡れになりながら、互いに笑あうのも悪くないなと。
    心の隅でそう思った。
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