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    ちまちま

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    フェス伊×フェスぐだ♂

    可愛い女の子を助けたよ

    #伊ぐだ♂

    始末屋×運び屋2狭い路地裏で所狭しと電気関係のパーツを売買している。それがこの場所におけるかつての様相。今はやたらと露出の高い服装に身を包んだ現実には存在しないであろう美男美女の絵で埋め尽くされた看板がビルの合間から顔を覗かせ行き交う人は足を止めてスマホを構える光景が散見。

    「……」

    呆然と立ち尽くしながら何故…と呆れに嘆息が漏れるがいけない…とかぶりを振りスマホのメールから目的を再確認する。そう遠くは無い距離だが何せ縁のない土地だ。土地勘がない以上頼りになるのは右手にある型落ちして画面にもヒビが入っている相棒だけなのだから。
    甘い声で客を引くキャッチを躱しながら足を進めるも観光客も多く中々距離は稼げない。しまいには見知らぬ観光客に勝手に写真を取られる始末。どうやらキャラが何とか言っていたので誰ぞ似た架空の人物でもいたのだろうなと嘆息。しかし盗撮はいただけない。申し訳なかったが通り過ぎるフリをしてカメラごと斬らせてもらった。目にも止まらぬ速さで一閃、こうしてそれなりに高そうな一眼レフのカメラは見事真っ二つに切れてガシャンと道路へ転がり落ちた。更なる不幸はそのまま車のタイヤに轢かれて粉々になったことだろうか。
    泣き叫ぶ彼らを尻目にその場を足早に後にする。こんな身の上では些細なことでも命取りになりかねない。

    (せめて相手に了承ぐらい取れ)

    それでも自分は許しはしなかっただろうが。

    「?」

    不意に前方より何やら争う声が聞こえてきて耳をそばだてる。争うというよりメイド服の愛らしい客引きを何人かで囲んで執拗に迫っているようだ。彼女とて仕事なのだからそういった手合いには慣れているだろうが如何せん勘違いした輩が寄りにもよって複数人で詰めているのだからどうしようもないのだろう。困り顔で眉をはの字にしながら懸命に仕事中だから付き合えない旨を伝えるも聞く耳を持たないらしい。周りも一部始終を見てはいるもののここではよくある光景なのか誰も心配はしておらず各々足を止めることは無い。
    よく見れば自分が探していた店のロゴが入ったチラシを持っているではないか。雑居ビルの3階にあるとの記載だけは頭に入っていたのでこれは渡りに船。

    「すみません。警察ですか?3人組の男が女性に付きまといをしているのですが───」

    雑踏の中でそこそこ通る声で話せば当然周りは一瞬静まり返る。その様子を見逃さなかった奴らは慌てて声の主を探そうとこちらに向かう。しかし連中が動き出す前に相棒からサイレンの音を鳴らせば群衆はあっという間に蜘蛛の子を散らすよう逃げ回り奴らは伊織を見失う。パニックになった周りに足がすくんで動けなくなっている彼女に「こっちだ」と肩を抱き大通りからは離れた場所へと移動した。
    見るからに驚きを隠せずに何がなんだが分からないでいる彼女には申し訳なかったがこちらも苦肉の策だ。非礼は助けた恩で相殺して欲しいと思わず思ってしまった。

    「あの……」
    「すまない。手荒な真似をした」
    「いえ。その事なら助かりました。いつもよりしつこくていつヘルプを呼ぼうかなって考えてたので…ありがとうございました」

    両サイドに水色の髪紐で結い上げた黒髪の少女がぺこりと頭を下げる。衣装の造形には明るくないがこれが所謂メイド服というものなのであろう。ふわりと雲を連想させるような白を基調としてフリフリとしたレースがふんだんにあしらわれている。膝上までの長い靴下に履くのが大変そうだなと履きもしないのにそんな安直な感想を持ちえた。
    大通りからは少し離れてしまったがビルとビルの間で人通りも然程多くは無い。流石にメイド服とスーツ姿の男とくれば目を引くものはあるが先程の騒動故か皆そちらに野次馬で忙しいようだ。

    「助けを呼べたのであれば余計なことをしてしまっただろうか?」
    「いや。大丈夫だと思います。それよりお礼がしたいので是非お店に「その事なんだが───」」

    くるりと吸い込まれるようなアクアマリンの瞳が伊織へと向き、はて?と微かな引っかかり。しかし時間が惜しいと手短に説明をすれば成程、と彼女はチラシを取り出し胸ポケットに入れていたボールペンでさらさらと走り書き。

    「今来た道をここまで戻って信号をゲームセンターの方へ渡ってそこから3つ目の雑居ビルの3階です。上に猫カフェがあるからその看板探してもらった方がわかりやすいかもしれません。結構目立つので」
    「忝ない。それより貴女は、」
    「大丈夫。丁度いいから連絡して休憩入っちゃいます。一緒に着いていけないのが残念」

    苦笑いを浮かべた彼女から「サービスです。ゆっくりしていってください」チケットを手渡され礼を言うと足早に踵を返した。少しだけ残していく彼女に後ろ髪を引かれる思いだったが伊織とて仕事は忘れていない。雇い主から依頼はそこで聞けと言われてはそうする以外にやりようなどないのだ。

    「うっっっわマジかー、うっか、つ~」

    徐ろに路地にチラシを敷いて座り込む。その座り方も大股開いてどっしりと座るものだからおよそメイド姿では見たくは無い光景だろう。しかし彼女には清楚な座り方等到底できないのだ。何せ骨格からして正真正銘の男であるのだから。

    『リツカちゃんまーた絡まれたんです?今月何回目なんですかもう!』
    「阿国ちゃんそれどっちへの文句……?」
    『勿論輩への文句に決まってるですよ!』
    「ははは……はぁ~……店長なんだって?」
    『とりあえず戻って来なさいと。あぁでも8番テーブルのお客様が帰るまでは外にいた方がいいネ、って……なんです?あのサーモンピンクのお下げヤロウ』
    「ん~了解。とりま休憩入っちゃうから備品買い出しあったら送って」

    まだまだ言いたげな相手の会話を遮り通話終了をタップ。ふぅ、と重たい息を吐きながら頭をガシガシとかいた。
    どれだけ鈍いのか、それとも自分が完璧なだけか。どちらにせよ今後のアドバンテージも維持できそうで安心材料が増えた分立香はニマニマとご機嫌だ。女装の時は念の為ボイスチェンジャーをしているがそれだってあんなに近かったらわかるだろうに。

    「おにーさんダメだよ不用意に近づいたら…」

    自らの手のひらでクルクルとペン回しのように回されるスマホ。それを任意のタイミングで天高く投げて落ちてきた所をキャッチする。その画面にはとある連絡帳の1ページが表示され立香の手により名前が“おにーさん”と入力されアイコンには先程まで隣に居た人物の顔に犬の落書きを施したものを宛てがう。

    「おマヌケさん♡」

    するりとウィッグを脱ぎ去った者の表情はまだどこかあどけなさを残した紛れもない男の顔をしていた。
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    可愛い女の子を助けたよ
    始末屋×運び屋2狭い路地裏で所狭しと電気関係のパーツを売買している。それがこの場所におけるかつての様相。今はやたらと露出の高い服装に身を包んだ現実には存在しないであろう美男美女の絵で埋め尽くされた看板がビルの合間から顔を覗かせ行き交う人は足を止めてスマホを構える光景が散見。

    「……」

    呆然と立ち尽くしながら何故…と呆れに嘆息が漏れるがいけない…とかぶりを振りスマホのメールから目的を再確認する。そう遠くは無い距離だが何せ縁のない土地だ。土地勘がない以上頼りになるのは右手にある型落ちして画面にもヒビが入っている相棒だけなのだから。
    甘い声で客を引くキャッチを躱しながら足を進めるも観光客も多く中々距離は稼げない。しまいには見知らぬ観光客に勝手に写真を取られる始末。どうやらキャラが何とか言っていたので誰ぞ似た架空の人物でもいたのだろうなと嘆息。しかし盗撮はいただけない。申し訳なかったが通り過ぎるフリをしてカメラごと斬らせてもらった。目にも止まらぬ速さで一閃、こうしてそれなりに高そうな一眼レフのカメラは見事真っ二つに切れてガシャンと道路へ転がり落ちた。更なる不幸はそのまま車のタイヤに轢かれて粉々になったことだろうか。
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    lunaarc

    MOURNINGバレンタインで失恋して部屋を出たら晴信さんに会って、察せられて泣いちゃったところを追いかけてきた(タケルに言われて)伊織が目撃する伊ぐだ♀
    …のつもりで書いてたんだけどたぶん最後まで書ききれないと思うのでここまで。

    伊織いないけど伊ぐだ。晴信とぐだ子は×じゃなくて+(兄妹みたいな感じ)
    サムレムはコラボしか知らない+第一部と1.5部ちょっとしかやってない知識量のマスターです
    どうやって部屋に戻ったんだろう。腕いっぱいに抱えた仏像を棚に並べて、立香はしばし立ち尽くす。
    わかってはいた。一緒に駆け抜けた偽の盈月の儀の最中、ことあるごとに、傍で見てきた。
    片方が記憶を失っていても、あの二人の絆は強固なものであると。その間にぽっと出のマスターが割り込むなんてもっての外だと。わかっていても。
    「……はぁ…」
    それでもやっぱり、寂しい。
    そのやりとりを微笑ましいと思っていたのは確かだ。戦闘時には抜身の刃の化身のような鋭さを持つ青年の雰囲気が、彼の相棒が一緒だと柔らかく変化していく。それを見ているだけで十分だと、最初はそう思っていた。
    ただのマスターとサーヴァント。その垣根を超えるような接触をしてきた者は他にもいた。けれど立香はそれでもマスターでいられた。一人の人間としてではなく、サーヴァント全員のマスターとして。そうあることが自分の存在価値なのだと割り切っていたからだ。
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