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    808koshiya

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    結②

    ユエが目を覚ました時、ユエの体は食事の動作をしている途中だった。ハルニードの小屋、屋外のテーブルセット。掴んでいたパンと口の中で咀嚼途中のものの味が一致する前に、喉は勝手に飲み込んでいた。
    「……あら?」
    その手が止まったことを見とめたか、傍らで洗濯物を干していたネムが訝るような声をあげた。手を止め、そばに寄ってきて、ユエの目の前に手をかざしたりその手を振ったり、両手で耳の横を掴んで引き寄せたり、両目を覗き込んだり、といったことをする。
    近いな、と思いはしたが、まだ胡乱な意識はその行動の理由までを察することはしなかったし、敵対行動として不快に思うこともできなかった。まぶたと睫毛の造形はハルニードによく似ているが、色味は藤色に近い、不思議な目の色。嗅覚ならぬ嗅覚にじわりと届いた香気はわずかに居心地の悪い気配がするだけで、ハルニードのものほどの求心性はない。
    「おはようございます、ユエ様」
    ややあって離れた彼女は柔らかに微笑んだ。使用人のような質素なワンピースにエプロンを重ねた姿は貴族の令嬢からはかけ離れているし、バランスが悪いという点で美しすぎる顔かたちにあまり似合っていない。おはようというには日は既に頂点に差し掛かっていた。
    「……?」
    記憶の連続性が断ち切れている。呪のものの大量発生。オーラレン領。内部循環を暴走させる魔力香。不死族を倒さねばならないのではなかったか。
    「ナディは……」
    そしてこの家の主は。ハルニードの妹はそれとわからないほどに小さなため息を吐き、柔らかな笑みに憐憫のようなものを混ぜ込んだ。
    「とりあえずお食事をお済ませになって?そのあとで順番にお話ししますから」
    小さな手のひらが食卓を指した。状況から判断するとこれらは彼女が用意したものだろうか。食べかけになっている手の中のパンに燻製肉と野菜のスープ、それから果物。ネムは軽い足取りで干している途中の洗濯物のもとへと戻っていった。
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