あまりの脆さに、呆気なさに、え、と間抜けな声が出た。戯れですらない、意志なくまとわりついてくる虫を振り払う、程度の、仕草だった。のに。
吹き出す赤、膨れ上がる怒気。消失の予感が眼前に迫り、それに恐れを感じるよりも先に腰から下が水に戻るような感触を、得る。
「……だめ、」
呼吸の音がようやくその形を作ったのは僥倖で、そのささやかな声が届いたのも奇跡に等しい幸いだっただろう。
「大丈夫だから、やめて」
大丈夫なわけがなかった。感触は間違いようがない、まるでただの人間の強度だった。繰り返し繰り返し、水を捏ね続けた怨讐の果てにこの器を造るに至った者としてはあまりにも不似合いに脆い、か弱い、ただの肉。
「大丈夫なわけがあるか!!!!」
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