失敗したのだ、結局その程度だった。結局抜け殻を愛でる終わりを過ごしながら、それでも不思議と穏やかな日々であった。
自分のことさえ満足にはできない男であるのに何を、と思わぬこともない。ただ、こうなってしまった責任としてそうしている。朝になれば顔を拭き、瞼が開いたことを確かめて着替えさせて起き上がらせ、食事を運び、口元を拭って日当たりのよいところへ連れていく。日が沈んだらまた食事を与え、口元を拭って身体を清め、着替えさせて横たえて瞼を閉じさせる。
人形を人間のように扱っているに過ぎないが、ただの人形よりは愛おしいものだった。肉の手触りがあり、体温がある。器としては十分なものができた、それに関しては少しばかり自画自賛の余地がある。
時間の概念はとうに蕩けて、外ではいくらほどの時間が経ったのかは知らない。興味もあまりなかった。必要な支度をするためだけに出かける街並みは少しずつ変わっていたのかもしれない。造るためにかかった時間、魂返りを損なってからの時間、ただこの子のことだけを考えていたのでよくわからない。
「大丈夫、お父さんに任せておきなさい」
返事はない。ないことに満足した。お前はもう傷つくことがないのだ。