臆病な俺を許して「サニー、と僕が?」
「う、うん…でも信じられないよね」
「ん〜、正直ほんとに記憶には無いんだけど…」
「…うん」
アルバーンが頭をひねらせている
無理もない
だって、そんな記憶自体…どこにも無いのだから
アルバーンが目を覚ました時、嬉しくて思わず抱きついてしまった
けど、アルバーンから
『誰…?』
と言われ
あの時は心臓が張り裂けるかと思ったが…
『あ…俺、サニー・ブリスコーって言うんだけど……お、…俺、アルバーンの恋人なんだっ!』
俺はアルバーンに弟としてではなく、異性に向けるような恋情を抱いていた
記憶が無くなったのだと理解した瞬間、俺とアルバーンの兄弟みたいな関係を違うものに塗り潰してしまえると思ってしまった
「あー…、ごめんね?起き抜けにこんな話して、、しばらくは絶対安静にって言われてるし、あんまり考え込まなくて、も…」
ふと、両手をすくわれてぎゅっと握られた
唐突なアルバーンの行動に顔を上げると、彼と視線が交わった
「…?」
「…忘れちゃってごめん。時間かかるかもだけど…お医者さんもきっかけがあれば記憶もどるって言ってたし、
…ぜったい、絶対にサニーのこと思い出すから!」
”だから待ってて!”そう真剣な顔で言うアルバーン
両手を握ったまま、真っ直ぐにこちらを見つめてくるオッドアイの目には自分が映っている
それを見た途端、ふつ、と何かが湧き上がってきた
「…どうして、」
「だってサニーは僕の恋人なんでしょ?
もちろん、今からの時間も大切だけど…好きな人のこと忘れたまんまじゃ悲しいよ」
耐えきれなくなってアルバーンから視線を下にそらし、そっか、と答えた
じわり、目頭が熱くなった
またふつふつと募っていく…
…ああ、これはきっと罪悪感だ
アルバーンを騙してしまったことへの…
こんな事していいわけがない
最低だ
でも…それでも、
「うん、そうだ、ね…。早く思い出して欲しいな…
声が震える
「早く、っ元気にも、なって欲しいし…
ダメなのに
溢れる気持ちが、言葉が抑えられなくて
…俺、アルバーンのこと大好きなんだ…本当に」
ごめんね、心の中で謝った
〈続き〉 ー🎭視点ー
僕の手に縋るようにしながら好きだと言うサニー
その言葉は本心なのだろうけど、まるで懺悔でもしているかのようだ
「サニー、泣いてるの…?」
声が震えているサニーに問いかけながら、口角が上がってしまう
…本当は覚えている
転んで、運悪く頭を強く打ってしまったが、たんこぶができたくらいで記憶喪失なんて真っ赤な嘘だ
少しだけ、興味があったのだ
僕から忘れられたらサニーがどんな反応をするのか
サニーは僕をいつも弟のように可愛がってくれる
それが嫌なわけじゃない
でも、僕はサニーに恋人としての恋愛感情を抱いていた
嘘をついてしまったのは咄嗟だったけれど
でもそれがまさか、こんな大物が釣れるなんて…
「…ううん、泣いてないよ。心配してくれてありがとう、アルバーン」
相も変わらず、サニーは顔を伏せたまま答える
そうされると無性に顔を見たくなってしまう
絶対泣いてるでしょ?
なんで泣きそうなんだろう
僕が目を覚ましたから?………分からない
それは分からない、けどまたあとで聞けばいい
サニーの自分へ向けられてる感情がわかった今、もう僕は我慢しなくてもいいのだ
「そっかぁ…ね、サニー、こっち向いて?」
「えっ、あー…ちょっと待って、今はムリかm…」
……――…ちゅ
言葉を遮り、僕は姿勢を低くして下からサニーの唇に自分の唇を押し付けた
もう少し長くしていたかったけれど、名残惜しい音を残しながら口を離した
「…僕もサニーのこと好きだったよ、ずっと」
目に雫を溜めながらポカンとしている彼に告げた
徐々に首から顔へとどんどん赤くなってきているサニーを見ながらえへっ☆と舌ペロをかましてやった
やっと両思いだって分かったもん、これくらい許されてもいいよね?