彦星アルバーンは頭を上げ、空に浮かぶ夏の大三角を眺めた。
「ねぇ、サニー。」
「うーん?どうした?」
「彦星について、どう思ってる?」
アルバーンはふいに思いついた質問をサニーに投げかけてきたので、サニーは立ち止まって夜空を見上げた。
「星座?」
それを聞いたアルバーンは笑って、軽く首を横に振った。
「ううん、織姫と彦星のこと。
七夕伝説のそれだよ」
一般的に知られている七夕の物語というと、天帝の娘ー織女と牛飼いの牽牛は、一生懸命働いていた。しかし、結婚してから二人は毎日遊んで暮らしていて、仕事を怠るようになった。怒った天帝は、織女を牽牛から引き離し、銀河の彼方に追放していまったのだ。
悲しみにくれた織女を見かねた天帝が7月7日にだけ逢う事を許した。
アルバーンの右手が夜空に向かって伸びて行く、親指と人差し指で輪っかを作り覗くと、
手は届かないベガが見えます。
満天星の下で、静寂が広がる。
「アルバーンは俺の付属品になったことなんで、一度もない。」サニーはアルバーンをまっすぐに見つめ、紫の瞳には相手の引きつった顔が映っていた。
「過去もなかった、これからも決してそうじゃない。」
とても眩しかった。
アルバーンの目に映るサニーが。
生まれつきの黄色の髪なのか、それとも星をばら撒いたような空のおかけでなのか。
心当たりがない。
「もちろん、俺もアルバーンの付属品じゃないよ!」
サニーはアルバーンに歩み寄り、隣に並んで立ち、アルバーンの真似をするように親指と人差し指で丸を作る。
円から見えたのは、ただ一つだけの彦星だり
「だろう?」そう話しながら、サニーはふざけてアルバーンにウインクを投げて行く。
気持ちがすべて吹っ切れたではないのに、体は先に動き始まる。
二人の影は通じ合って、一歩前へ、そして突然重なって。
証人の彦星とベカの下で。