太陽だった 金が無かった。あの頃、破格で譲り受けたビルのローンも自分で組めなかった一郎は、工面して貰った分の支払いだの、引っ越し費用だの、弟たちとの当面の生活費だのに追われていた。一日を終える頃には身体も頭もくたくたで、好きなコーラも空却と金を出し合って半分ずつ飲むことさえあった。でも、どんなに疲れて眠っても朝目覚めればその身はまた新品のように軽かったし、目はいつも生き生きと輝いていた。ここはもう泥の中じゃない。生まれて初めて自ら選んだ階段を、夢中で駆け上がっているところだ。登り切った先の景色を信じて。
チームの事務所に入るとまだメンバーは揃っていて、空却と簓はこちらを見るなりギョッとした顔をした。
「なんだ、誰か担いできたのかと思ったぜ」
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