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    tsumoriiiii

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    キミイサ2展示一左馬(R18です!)

    【一左馬】生まれてきてよかった 今まで数々の違法マイクと戦い時には特殊な効果を受けてきた。身体が子どもや女性、犬に変化したことも、記憶を喪失したことも本音しか話せなくなったこともある。今回対峙したマイクの効果は、実感が乏しくなかなか異変に気づくことが出来なかった。目の前にあるのが鏡ではなく自分自身だと気づくまで。
     一郎を二人に増やした違法マイクは粗悪品だったらしい。使用者本人が分身しようとして失敗してしまった結果、本来の倍のダメージを受け意識を失っている。各々身体に異常はないか病院での検査を受け、とりあえず問題は見当たらないという判断で一郎たちは帰宅の許可を得た。その帰りを、同棲中の彼氏であるところの左馬刻が迎えに来てくれたのだが。
    「ほお〜、マジで見分けが付かねえな」
    「てめえ、左馬刻と偶然会ったサウナの名前覚えてんのかよ」
    「てめえこそ、初めて奢ってもらった飯覚えてんのか?」
    「初デートの場所」
    「初チューのロケーション」
     そんな調子ですぐにファイトが始まってしまうのだった。犬猿だった頃の一郎と左馬刻より酷い。
    「俺が本物だ。分かってくれんだろ? 左馬刻」
    「いや俺だって。助手席は譲らねえからな」
    「助手席だ? 俺が運転してやるよ。本物だから住所知ってっし」
    「じゃあ俺様は後部座席でいいわ」


     白菜に絡まる汁の辛味を豚肉の脂がまろやかにする。芯から温まる鍋の美味しさは冬の訪れがもう間も無いことを予感させた。
     夕食は元々、自宅から歩いていける距離のちょっと良い割烹を予約していた。店主の軽快な包丁さばきの見れるカウンター席が左馬刻は気に入っていたが、今回はあえてテーブル席を。
     せっかくの予約がキャンセルとなり店にも申し訳ない状況だったが、横に並ぶ一郎たちを眺めながら左馬刻は楽しそうですらあった。いわくガワの造りが同じなのは当然としても、表情や仕草が全く同じなのは見ていて相当面白いらしい。
    「ククッ今お前ら全く同じ角度で口開けて豆腐食ってた」
    「左馬刻も食えよ」
    「さっきから見て笑ってばっかじゃねえか」
    「すげえ眉の角度一緒! 写真撮らせろや」
    「「おい!」」
     本当に撮られたし、たぶん同じ仏頂面が並んでいて左馬刻を喜ばせてしまった筈だ。

     一緒にチームを組んでいた頃、一度だけ左馬刻の誕生日を迎えたことがあった。偶然見かけた免許証の記載を覚えていて、乱数や寂雷に相談して事務所でお祝いした。その頃の一郎はあまり金銭的な余裕が無くそもそも誕生日の祝い方の経験も偏っていたのだが、彼らは折り紙の輪飾り作りにも付き合いながら「こういうのって良いね」と微笑んでくれた。
     肝心の左馬刻はというと、煙草を咥えながら事務所まで来て、クラッカーの音に多少目を見張ったもののやはりびっくりする程いつも通りだった。
    「誕生日だあ? いちいちンなことしなくていいわ」
    「そんなこと言わないでよサマトキサマ!」
    「左馬刻君、ケーキもあるんだよ」
     一郎の心はすっかり不安でいっぱいになっていた。左馬刻にご飯をご馳走になったり何かしてもらう度一郎は嬉しくて、特別な日にそのお返しをしたら相手は当然喜んでくれるものと思っていた。でも左馬刻は今日、まだ少しも笑ってくれない。
    「すんません、ケーキはやっぱり……ちょっと失敗しちゃったし」
    「ええ!? 綺麗に出来てたよお」
    「そうですよ。折角うちまで来てオーブンで焼いたんですから」
     でも考えてみれば甘いものを食べているところもそんなに見たことがない。ひとりよがりが恥ずかしくて仕方なかった。
     長い睫毛が一緒に動くからか、左馬刻の視線の一挙一動は印象的でいつも一郎をドキドキさせる。紅玉の目がかち合って、細められた。
    「ケーキ、あんのか?」

     小さな丸いケーキには左馬刻の名前でプレートが乗っている。
    「ケーキはギリギリ取りに行けて良かったな」
    「三つに分けるの難し過ぎる……」
     数年経っても相変わらず左馬刻は自分の誕生日への関心は薄そうだが、人に祝われることに対しては随分と受け入れてくれるようになったように見える。バースデーソングの間居心地が悪そうにしているのはむしろ可愛いので、無駄にアレンジを入れて引き延ばせるくらい一郎も図太くなったし。


     ジャンケンは拉致が開かなかったので、風呂の順番はてきとーに左馬刻から指定された。上がったばかりだというのに、頬にペンで何やら書かれる。なんとなく分かったが鏡で確かめると「B」だった。もう一人の一郎には「A」と書かれている。そのようにした方が、確かに便利は便利かもしれない。
    「俺様はどっちでもいいんだけどよ。一郎Aが分けてほしいって」
    「ペンで書く以外の方法がもう少しありそうだけど……」
     ふいに左馬刻の腕が首に絡みついてきて、頬に柔らかくキスされた。本日再度一郎よりも六つ歳上になった男が悪戯っぽく唇を吊り上げる。そうか、この後全部脱ぐんだものな。


     前から、後ろから、代わる代わるに左馬刻とキスした。歯は磨いたのにめちゃくちゃ甘い。一郎Aが唇を奪っている間は一郎Bがうなじや背中に舌を這わせた。既に左馬刻は息が上がってきている。
    「やっぱ変な感じだな……」
    「気持ちいい? 左馬刻」
    「ん……」
     二方向からの刺激に肌が桜色に染まり、全身に汗が滲んでいた。この状態の左馬刻はえもいわれぬ良い匂いがする。首筋から脇に鼻を擦り付けていると、もう一人の一郎は後ろに舌を這わせていた。
    「ずるいぞ」
    「何が」
     負けじと胸を舐め上げると左馬刻の身体が震える。
    「あっあっどっちも舐められんのやば」
     両手はこちらが繋ぐように拘束しているし、下半身もがっちり抑え込まれていた。そのまま胸の尖りを舌先でつつき、噛む。
    「あう、んあ、B……」
    「いやBって呼ぶな」

     左馬刻があっちの一郎にばかりキスしている気がして、向こうの方が丁寧な愛撫を施している気がする。競争心と、いつもより感じている様子の左馬刻に興奮して血がどくどくと勢いよく全身を駆け抜けた。舌を捻じ込んで、中心を貫いて、ゆさぶって、訳が分からないまま一郎同士もキスさせられて、夜が更けていく。この違法マイクの効果もそろそろ切れる頃合いだ。時間が経つにつれ、別の焦りが加わっていく。偽物は俺だからだ。
     今までの一郎の人生も、左馬刻とのことも、確かに記憶にあった。でも今回の違法マイクを食らった時の記憶だけが自分には無かったのだ。それまでの一郎はコピー出来ても、コピーする瞬間のことまでは再現できていないのではないか。
    「んんっん、いちろお」
     感じ入る左馬刻の美しいこと。ひとつひとつが脳裏に、胸に、刻みつけられる。知識としては知っていても体験は格別なのかもしれない。片方の一郎が果てても、もう片方の一郎がすぐに入ってまた中を突いた。奥の柔く特別気持ちいいところまで惜しみなく叩いて、抱き締め合いながら再度果てた。


     気づくと一郎Aは消えていた。
    「あれ?」
    「効果が切れたんだろ」
    「え、でも俺」
    「B……いや一郎」
     もうへろへろのくせに、左馬刻がのしかかりキスしてきた。深く、ゆっくり舌を絡ませて。勿論応える。
     カーテンの隙間からは白い光が薄く覗いて、新しい一日を知らせる。外には、未来には、無限の世界が広がっている。
    「誕生日おめでとう、左馬刻」
    「もう過ぎたわ」
     額をくっ付けてクスクスと囁くように笑い合う。
     ま、いいか。左馬刻が今笑っているということに比べれば、他の全てがあまりに瑣末なことだった。
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    B0NNoU

    DONEBy 左馬刻が長いこと贔屓にしているキャバ嬢

    一左馬/イチサマ推しのキャバ嬢にブロマイドを押し付けらる左馬刻を眺める銃兎の話。

    嬢はてでで時代から話しやすくて、ずっと贔屓にしてる子。互いに恋愛感情は無く、合歓ちゃんの扱いに困った時女心の解説をよく求めに左が通ってた。


    フォロワーさんお誕生日おめでとうイチサマの続き。前の話読まなくても大丈夫です。
    お節介「ハッ、馬鹿かよ」
    「ふふ、左馬刻くんに分かってもらえるとは思ってなかったけどはっきりそう言われちゃうと凹んじゃうわね」
    「微塵も凹んでねぇ癖によく言うぜ」

    タイトな紺のドレスを身にまとった女が口元に手を当てて笑うと、左馬刻は気分良さそうにシャンパンの入ったグラスを空にする。さすがキャバ嬢というところか。左馬刻の話を聞きながら程よく自身の話を織り交ぜて盛り上げていく手腕に銃兎はぼんやりと感心した。

    無理やり連れてこられたこの場は酷く退屈だ。二人に付いている嬢は二人とも左馬刻に夢中である。自分が構われないから暇という訳でなく、銃兎自身が構うなと隣に来た女から距離を取り逃げたからなのだが。左馬刻はそんな銃兎を愉快そうに笑ってやれやれと言わんばかりに突っぱねた女を自身の隣に座らせた。こんな事なら仕事がしたかった、と左馬刻へ冷ややかな視線を送る。そんな銃兎を無視して繰り広げられる楽しげな会話に耳を傾けながら左馬刻の反応を観察していたのだ。目の前の不機嫌な人間を空気のように扱えるのはある種の才能を感じてしまう。本人にそれを伝えるとしたら嫌味になるが。
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