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    ぎねまる

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    ぎねまる

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    続くかもしれない「🎏が🐱の地雷を踏み抜く」お話。

    #尾鯉
    koi

    貴方は貴族「300メートル?」
     鯉登は素っ頓狂な声をあげた。
    「300米先の人間の頭と胸の狙いなど、角度の差にして1度にも満たないぞ? 恐ろしい精度の射撃だな……機械よりも正確なのではないか」
     尾形はうっそりと、絡んできた新任の上官を見上げる。
    「角度とは?」
    「三角関数だ」
    「……申し訳ないですが、無学なもので、仰ることが今ひとつ」
    「距離と高さから斜辺の角度を出す。あるいはその逆だ。工兵はやるだろう? 三角関数を知らないということは、理屈でなく純粋に技術のみなのか。ほんとうに機械のようだ」
     尾形はがりがりと後頭部を掻いた。
    「理屈を知っていても実践できなけりゃ意味ないでしょう」
    「勿論だ。だが兵器の精度を上げることはできる。そうすれば練度の低い兵でも今の尾形のような射撃ができるだろう」
    「ははぁ、そうしたら私はお払い箱ですかな」
    「馬鹿な。もっと先へ行くんだ。技術の発展は、練度の無いものもそれなりに、鍛錬を積んだものはもっとひきあげてくれるものだ。そうして全体の能力が上がる。鶴見中尉殿も兵器開発には熱心でないか」
     キラキラと語る男──戦場も知らぬ若造──に向けられた瞳が、翳を帯びる。
    「さすが海軍は、身一つで戦えない分、機械にこだわるんですなぁ」
     ぴくり、と鯉登の眉が上がる。
     さんざんされてきた揶揄だ。海の子がなぜ陸になど来たのだ? と。
    「……海兵は、ひとりひとりが戦艦の手足だ。操艦技術に優れた者たちとそうでない者たちで、同じ艦でもまったく違う生き物のように動きが変わるのを知らんのか。日本海海戦の──」
    「はぁ。無学なもので・・・・・・
     尾形は繰り返す。ようやく鯉登は、この男が喜んではいないことに気づく。その射撃技術を褒められたとしても。
    「……邪魔をした」
     鯉登はくるりと背を向ける。
     尾形は猫のように目を眇めた。
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    ぎねまる

    MOURNING初登場前の、苛烈な時代の鯉登の話。わりと殺伐愛。
    過去話とはいえもういろいろ時期を逸した感がありますし、物語の肝心要の部分が思いつかず没にしてしまったのですが、色々調べて結構思い入れがあったし、書き始めてから一年近く熟成させてしまったので、供養です。「#####」で囲んであるところが、ネタが思いつかず飛ばした部分です。
    月下の獣「鯉登は人を殺したことがあるぞ」

     それは鯉登が任官してほどない頃であった。
     鶴見は金平糖を茶うけに煎茶をすすり、鯉登の様子はどうだ馴染んだか、と部下を気にするふつうの・・・・上官のような風情で月島に尋ねていたが、月島が二言三言返すと、そうそう、と思い出したように、不穏な言葉を口にした。
    「は、」
     月島は一瞬言葉を失い、記憶をめぐらせる。かれの十六歳のときにはそんな話は聞かなかった。陸士入学で鶴見を訪ねてきたときも。であれば、陸士入学からのちになるが。
    「……それは……いつのことでしょうか」
    「地元でな──」
     鶴見は語る。
     士官学校が夏の休みの折、母の言いつけで鯉登は一人で地元鹿児島に帰省した。函館に赴任している間、主の居ない鯉登の家は昵懇じっこんの者が管理を任されているが、手紙だけでは解決できない問題が起こり、かつ鯉登少将は任務を離れられなかった。ちょうど休みの時期とも合ったため、未来の当主たる鯉登が東京から赴いたのだ。
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    PROGRESSまだ書き終わってネ~~~けど丁度いいとこまで書けたので尾鯉の日だから出します。
    谷崎潤一郎『人魚の嘆き』パロのなんちゃって中華風尾鯉。尾形が貴公子でおとのちんが人魚です。鶴見中尉とヴァシリちゃんもちょこっと出てくる。全部かけたらピクシブにあげます。
    人魚の嘆き「一つ箱が多いようだが。」
    紳士の穏やかな問いに、金の玉座へ身を凭せかけた若者は物憂げに答えました。
    「一つ増えても二つ増えても、あって困るものではないでしょう。どうぞ持って行ってください。――――まったく、恐ろしい程に上手くいった。」
    若者はいくらか酔った様子でありましたが、両の目だけはまるで獣のように爛々として紳士を見据えておりました。ところが紳士は、若者の眼差しを受けて畏れるどころか、子でもあやすように微笑みます。
    「私はきっかけを与えただけに過ぎないよ。君が思っている以上に、君の御父上は恨まれていたし弟君よりも君こそが当主に相応しいと思う者が多かった。それだけのことだ。」
    白々しい言葉を嘲り若者は唇を歪めて笑いました。若者の父は、そのまた父から受け継いだ武功を更に重ね、時の皇帝の覚えもめでたく、最早他人は羨むのを諦めるほどの巨万の富を拵えました。また若者の弟は父に倣い武を磨き学にも秀で、正妻の息子として大変立派な人でありました。
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