明けの明星『おっ!禄剛崎じゃあねぇか!』
植物が照り返す薄黄緑色の日差しの中から声がした。目を向ければ、所々に土を纏ったでかい男がずんずんとこちらに向かって歩いて来る。俺は腰掛けに付いたまま応えるように手を上げて、添え木のされた艶々と輝く赤い実に目をやった。
『性が出るねぇ。いい出来じゃねぇか』
『そうだろう?ほれ、あんたも食ってみろ』
ばちんと鋏で切り落とされた重たい実が、奴の手を経由して俺の右手に収まる。ふーっと煙を吐ききり、赤い果実の表面を軽く腿で拭ってから、口をつけた。
ひとかじり。溢れ出す果汁は酸っぱく、その後を追うように甘みが増す。
うまい。俺がそう口にすると、室戸岬は高らかに笑った。
『そりゃあ良かった!もうすぐ盆時期だから収穫でもして食卓にも並ぶが……今年はあんたが一番乗りだ』
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