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    けがわ

    @kawaii_hkmr

    文字書いたり、あまりないと思いますが絵を描いたりします

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    けがわ

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    らぶれた~~~~~~甘酸っぱい

    書きかけた手紙をぐちゃぐちゃと丸めて、机の下の屑籠に放り込んだ。ああ、もうどうでも良い、こんな思いは届かなくても良いとすら思った。ルカは、己の記憶障害でこの尊い感情が消えていく前にと躍起になって筆を取ったが、書き始めてから恋文だと言うことに気付いて匙を投げてしまった。一時期の感情でこんな黒歴史を残すことは無いだろう。そう思い、痛む頭をガシガシと再度掻いたのだった。

    ◇◇◇

    発明へのやるせなさ、不可解なゲーム、孤独な荘園での生活・・・囚人だった際の死を恐怖し震えて余生を過ごすだけだったころに比べたら自由は勿論増したものの、満たされているとは到底言えない生活を過ごして来た。閉鎖された空間の中で時には疑心暗鬼に苛まれたりもし、痛む体に鞭うちハッチまで這う時は一種の芋虫のような惨めさを感じたものだった。私は何のために、誰のために生きているのだろうか。永久機関の完成の為に、とは思えど、日々の日常生活には満たされない欲ばかりが溜まっていた。
    そして今日もまた同じようなゲーム。ルカは正直飽き飽きしていたのだ。ラストチェイスまで走り抜け、今日もまたこの座り心地の悪い椅子に座っている。毎日毎日それの繰り返しだ。ただ、その日は暗号機守りの立ち回りから何度も何度も攻撃を受けて体が痛んでいた。なので、レオの思い出と言われるマップの椅子が、とても冷たかったのである。ルカの心までじんじんと冷え切っていくようで、ルカは痛みすら感じ始めた。(皆には悪いが、早く飛んで荘園送りになりたい。)とすら考えており、傍から見れば目は死んでいたし、無表情でぼーっとしていた為、恐ろしかったのだろう。瞬間移動した様子のハンターに、皆ももうそのまま逃げて欲しいとすら思った。ルカはもう目を瞑ってその時を待ち、地面を見つめた。

    だと言うのに、特徴的な土を掻き分ける音が地面から聞こえたかと思うとボコンと音を立てて、墓守の男が出てきたのである!これにはルカも驚き「え?」と顔を上げて、きょとんとした表情を零した。放心して立ち止まったルカに対して、きっとした顔でルカを睨んだかと思うと、アンドルー・クレスは手早くレバーを上げて椅子の拘束を解除した。

    「何ぼさっとしてる!ゲートまで走れ!」
    アンドルーは、ついてこないルカを二度振り返ると背中を強く叩いた。普段から土を掻き分けている彼の張り手にルカは「痛いっ!!」と声を上げると、ルカの大きな声に気付いたのかハンターの歩行の音と赤いステインが見えた。アンドルーは「ひぃ!」と驚くと、ルカの手をがしりと取ると全力で走り出した。
    ルカは、心から面白く思った。嬉しく思った。
    命のやり取りをしていると言うのに、ぷっと笑い出したのをきっかけに、いつのまにかけらけらと笑いだしてしまい、アンドルーを「お、お前!」と更に怒らせることになった。
    「だ、だって君可笑しいだろう。ひ、っひひ!普通助けに来るか、この盤面で!」
    「うるさい!お前が逃げ切れば僕の判断が正解だ!良いから走れ!」
    「これだから救助職は!脳筋と言うかなんというか・・・!ひ、ふふふ。」

    がやがやと騒がしい二人の背中をハンターが追う。ルカの強電流のおかげもあり、そのまま間一髪と言ったところで滑り込むようにゲートまで逃げ込むと、そこは荘園であった。アンドルーは「二度としない・・・!」と四つん這いになって息切れを抑え込んでいた。ルカはその低い背中を見つめながら、この感情を書き溜めなければ!と自室へ一目散へ駆けだしたのだった。

    ◇◇◇

    そして今に至る。アンドルー・クレスへの激情を綴った手紙は、どこからどう読んでも恋文であった。気付いていなかったのだ、ルカ自身も。これは恋文だと言うことに。感情が付いてこなかった。しかし文に認めてみるとどうだ。読み返してみると強烈なラブコールが綴られていてルカはティーンのように照れだした。
    これならばいっそのこと、救助に来た背中に抱き着いて愛を叫んでやれば良かった。その方が一時の迷いであっても「忘れた。」なんて知らばっくれることも出来たと言うのに。屑籠を一杯にするほどの重たい思いは部屋の中に転がり続けた。
    ぐちゃぐちゃ、ごろごろ、がらん。書いてから丸めて捨てる、「クレス君、心が動いたんだ。」「クレス君に救助されるのは心地よい。」「君のことをもっと知りたい。」そんな想いが溜まり続けていき、そしてそして・・・。

    そしてとうとう、背後に隣室だからと言って食事を届けに来た男。アンドルー・クレスのもとへ落ちたのであった。
    アンドルーは投げつけられた紙屑を一つ手に取った。「何で僕が掃除なんか・・・。大体こんなに何を書いて。」と、呆れたように紙を開いた。ルカは何も気づかず、真っ赤になって立ち竦むアンドルーの元へまた一つ零れだした思いを投げ捨てたのであった。
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