Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    けがわ

    @kawaii_hkmr

    文字書いたり、あまりないと思いますが絵を描いたりします

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 21

    けがわ

    ☆quiet follow

    愛し合ってて

    包帯をゆっくりまく話 くるり、くるり。
    過去に事故で焼かれいくらか血管の歪に浮いた体に、慣れた手つきで包帯を巻きつける。もう何度も繰り返した行為は手に馴染み、いくら視界が不良だとは言え、体で覚えたものは裏切らない。目の前の男は背中を見せて、こちらに視界を向けずしていると言うのに、警戒する様子も無く、八重歯を尖らせてぺらぺらと日常的な会話を続けている。

    「前に食堂に行った際に、私はひどく空腹だったんだ。目の前には最後の食事を抱えた占い師の彼が居て、自室に戻るところだったんだろうね。物乞いのような目をしてしまったのだろうか。余程に譲りたくないと顔に書いてあるが、「良かったら、どうぞ。」と、善意と空腹で戦いながら迷うように震える手で私に差し出す様は面白くてさぁ。」
    「ふっ、も、貰わなかったんだろうな。」
    「折角の申し出だったが、断ったさ!欲しかったがね。私とて悪魔ではないよ、ひひひ。」
    「どうだか。」

    くすくす。笑い声が、鎮まった部屋に響き、アンドルーの心が温かくなるのを感じる。右腕に指先で触れると、ルカは首を左に倒して右腕を上げた。こうするとアンドルーが包帯を巻きやすい体制になる為だった。視界を流すことも無くアンドルーの呼吸を感じ取り、鼻歌なんか歌いやがって白い包帯はこいつの体の一部となっていく。アンドルーはこの時間がどうしようもなく好きだった。

    「話は変わるが、新しいハンターの・・・何て言ったっけ。探鉱者の彼だよ。体が慣れていないんだろうね。この前、荘園の扉に、頭上を強く打ち付けていてさぁ。私でも気付くような大きな音であったと言うのに、心配するのは腹や腕の石が崩れていないかだったんだ。強気な彼が、体をきょろりとお洒落をした女性のように一巡する様は可愛らしくてね。それはもう可笑しいったら。」
    「お前、聞かれたら殺されるぞ。」
    「君が言わなければいいだけの話さ。」
    「お前の命を握っているってわけか。口止め料を夕食の肉一切れと交換してやってもいい。」
    「私の命、安いなぁ。」

    けらけら。ルカが笑う。つられてアンドルーもふっと綻ぶように笑った。

    わざとポットの中のダージリンティーは、熱湯のまま冷やさずに持って来た。包帯を巻き上げる頃には、きっと適温になっている時間だろうとアンドルーは踏んでいたからだ。しかしきっとそろそろ適温になり、飲む頃合いだろうと言うのに、アンドルーの手はまだくるりと包帯を巻き続けていた。この時間が続いてほしい、そんな気持ちから、わざとスピードを落とす仕草や、体を這う気持ちにルカは気付いているだろうか。自分のいたずらな感情に、無理だろうが気付かなければいいと思っている。

    緩くも無く、きつくも無いその締め付けは、嫌に心地が良い。わざと執拗に丁寧に丁寧に巻かれていくそれを、勿論ルカだって気付いていた。発明以外はどうでも良いと思っていたが、この男と過ごす時間は、本当に居心地が良い。無防備にさらす背中の信用に、気付いているだろうか。可愛くいじらしい恋人の、「もう少し一緒に居たい。」と言う小さなおねだりを、(特権だなぁ。)と思いながら、くるくると巻かれていく包帯の感触を確かめていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💒😭🙏👏👏👏💒😭👏💴💒💒💒💒💒💒🙏😭💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator